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ノーリグレット!  作者: 田中一義
#31 春のエンセーラム
345/522

ロビンとリアンの展開






「ロビンのところにね、朝早くリアンが来てね?」

「おう、そんで?」

「ちょっと気になってお話聞いてたのね?」

「おう」

「そしたら、リアンがロビンに結婚して、って」

「はあっ――痛ってえっ!?」


 驚いた拍子に鉈が滑って、危うく指を切断しかけた。

 サトウキビを切りながらお喋りなんかするもんじゃねえ。痛い、痛ってえ。切っちゃった指を舐めておく。


「そ、それ、マジでか? マジなのか、メーシャ?」

「うん」

「……リアンが、ロビンに……? ひょぇぇ……。そ、そんで? どうなったんだ?」

「途中でロビンに気づかれてもヤダからこっち来ちゃった」



 メーシャは給食の支度中に現れた。何だか俺のとこに来るのも珍しいなと思いながら喋り相手になってたらこのザマだ。マジで痛え。


 でも、リアンが、ロビンに、結婚?

 何、リアンってロビンのこと好きだったの?

 全っ然、そんなん分かんなかったけどそうなのか?



「……メーシャ、お前発情の匂いって分かる?」

「分かるよ? 金狼族だもん」

「それ、リアンからロビンに漏れてた?」

「ううん」

「……そうか」


 てえことは、リアンのことだし、あのザックリした性格故の妥協的な考えで、ロビン……? でもそれってどうなんだ? そんなんなら結婚なんかすんなって言いたくなってくる。ロビンは結婚にちょっとした憧れを抱いてるロマンチストだ。それがリアリストなリアンと、って……ないだろう。ないはずだ。


 つーか、リアンがそんなんを考えないでロビンにそういうのを言うってのも、ちょっと冷静に考えりゃあおかしい気もする。ダメだ、さっぱり考えが読めねえ。



「指、大丈夫?」

「ダメって言ったら?」

「いたいのいたいの、とんでけーっ」

「……飛んでった。完璧だ。さすがだな、メーシャ」

「ほんとうっ?」


 きゃわゆいっ!!

 メーシャはやっぱり可愛いなあ……。


 本当に痛いのが飛んでっちゃいそう。まだ血が止まらねえけど。



 昨日、リアンにはセシリー宛てに届いた手紙の内容を伝えた。神妙な顔をしてから、どうにかすると言ってリアンは今日の授業の打合せだけ俺として帰っていった。午後から、本当に有言実行で特別授業をしてくれるということだ。


 まだ来ていないが。

 もしかしたらまだ、ロビンと話してる最中なんだろうか。


 ロビンには結婚してもらいたいと思ってたけど、リアンってどうなんだ? 2人の仲は絶対に悪くないはずだけど、それって男と女の仲じゃないはずだ。あくまで友達として、のはずだ。


 それにロビンの好みは耳が尖ってて、スマート系尻尾だろう。リアンには耳も尻尾もないはずだ。まあ俺も尻尾つきの美人と……とか考えたことがなかったわけじゃないが、エノラは最高の嫁さんになってくれてるし、理想と現実が違うってのは別に不思議じゃない。なんだけども、うーん……。



 給食を食って、昼休み。

 そろそろリアンが来るころかと待っていたら、ロビンと一緒にやって来た。何か、身構える。



「申し訳ありません、少々、遅れました」

「あれ、メーシャこっちに来てたの? 畑は?」

「これからまた行ってくるの。じゃあね」


 メーシャは尻尾を揺らしながら行ってしまう。うーむ、む、む……。


「レオン、どうかした?」

「……あ、ああ、うん、いや別に……。2人してくるなんて、な、何か……あったのか?」

「ええ、実はさっき、ロビンに結こ――もご」

「な、何でもないよっ!? ない、ないからっ!!」


 あ、うん、知ってる。

 ロビンがリアンの口を塞いで黙らせるなんて、超レアとしか言いようがない光景だな。しかも明らかにロビンがテンパったし。


 何だ?

 何か進展があったのか? 一体何なんだ?



「ではわたしは準備をしてきますので。どちらの教室で?」

「手前側」

「分かりました」


 リアンが職員室を出ていった。


「師匠、どしたの? 変な顔して。ロビンも、何かおかしくない?」

「うるせえ、小娘。ひっこんでろ。シオン、茶はいらねえから。ロビン、ちょいちょい」

「え? あ、うん……」


 校長室に引っ張ってドアを閉める。



「…………さっき、リアンが、口走ったのって? 何?」

「えっ……い、いや、けっこ……けっこう、何とか……みたいな……?」

「結婚、みたいに聞こえたんだけど?」

「あっ、う、うううんっ、うんうん、あのっ、ほ、ほらっ、この前の、コンカツパーティーの、こととか? 話題になったっていうか、それだけで?」

「じゃあ何か話したんだよな? どんな話したんだ?」

「えええっ、あ、いやっ……え、あの……れ、レオンのいびきって、うるさい日はうるさい、よね……って」

「んなはずあるか!」

「本当だよっ!」


 バレバレなのに隠そうとするなんてロビンめ。

 一体どうなったんだよ、リアンのプロポーズにロビンはどう答えたんだよ? 気になって仕方がねえよ。



「あとは! えと、ま、マティアスくんと旅してた時、神経質なのがちょっとイライラしちゃったよねとか、そういう……話!」

「他はっ!?」

「ええっ……えっと、ええっと……うぅぅ……何だかんだ、13年のつきあいなんだね、とか」


 13年のつきあい!?

 え、何それ、13年って……リアンが学院にきたころ? からの、つきあい?



「そん時からお前らデキてたのっ!?」

「何を勘違いしてるのっ!?」

「だってそう言っただろ!? ええっ、嘘、マジでかっ!? か、隠してたのか、俺に!?」

「だ、だからっ、違うってば……!」

「じゃあ何だよ!?」

「そんだけ友達だったんだねって話ってだけだよ!」

「ほんとかよっ!? ほんとに、そんだけかよっ!?」

「本当だよ!」

「尻尾が嘘ついてんだよ!」

「あうっ……」


 俺に隠しごとなんてロビンができるはずないんだ。

 リアンが13年なら、俺は15年だ。6年間も寮で一緒に寝起きしてたんだ。お見通しだ。



「本当のこと言えよ、何かあったんだろ? 俺にも言えないのかよ、ロビン」

「レオン……」


 よし、ロビンが迷っている。それが尻尾に出た。

 だが泣き落としという手段は使い倒してきてしまっているから、今回はそれを使わずにおこう。泣き落としに入ったとバレては絶対に何も教えてくれなくなる。


「リアンはさ、今、ちょっと面倒臭いことになってるんだ。そんな大変な状態だからこそ、気になるんだよ。だってリアンは友達だろ? 俺達の。だからお前にも何か相談したんじゃないかって思ってさ。リアンのためを思えばこそ、正直に教えてくれよ。何を隠す必要があるんだ?」



 必殺!! 友情をダシにする攻撃!!!


 さあロビン、これならお前は口を割るだろう、そうだろう!?

 俺のこの気になっちゃってしょうがない気持ちをどうにかできる答えを寄越してくれ!!



「っ……」

「ロビン……」


 尻尾が揺れ惑っている。

 さあ、ロビン。吐け、吐くんだ。



「……今朝、リアンが僕のところに来て……」

「ああ」

「その……け、結婚してほしい……って……」



 キタァァァァァァァッ!!

 とうとう聞き出せたぜ、それでどうなったんだ!?



「色々、それで話したんだけど……」

「うんうん、それで? それでっ?」

「僕はマティアスくんが、家を継いだらそこの魔法士になるって約束があるし……そっちに行かなきゃって、言ったんだよ」

「そうか、うん」

「でもリアンは、ここに残るって……」

「そうだよな、うん」

「だから……夫婦は一緒にいるべきものだし、できないって……」

「それで?」

「そう……言ったら……」

「おう」

「…………僕以外考えられなくなったとか、言って……」

「おおっ、急展開?」

「マティアスくんのところに行くな、って……」

「マジでかっ」


 つーかリアン、男前じゃねえ?

 マティアスのとこに行かないで、俺と一緒になれよ――みたいな?


 あれ、リアンって女だよな? あれ?



「何か……」

「あ、うん」

「……ちょっと、ドキッとしちゃった……」



 えんだああああああああああ――じゃねえや、ふざけてる場合じゃない。

 ロビンの尻尾がめちゃくちゃ照れてるじゃねえかよ。もじもじもじもじしちゃって、おいおい。これマジなのか、マジでか。まさかの展開なのか?



「でも、マティアスくんとは約束しちゃったし……それ反故になんて、できないし……」

「うんうん」

「だから……」

「だから?」

「…………レオン」

「ん?」

「リアン……ちょうだい?」



 そうくるのっ!?



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