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利己の風【改訂版】  作者: メイシン
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第4話 プリンと異世界情報



 半ば強制的にお菓子(デザート?)を作ることになった田口。

調理場へ連れて行かれ、料理長に食材を見せて貰いながら何を作るか途方に暮れていた。


「見た目と味が想像を超えている・・・」食材を見せて貰い、果物など少し味見をさせて貰ったがあまりにも地球との果物との違いに戸惑う。


「何だよ毒々しい色しながら爽やかな果実って」


 さすがは異世界、想像の斜め上を行く食材に、地球と見た目が近い食材では中身の味がかけ離れていると思い、素直に【解析】と【索敵】を使いながら(スキルの無駄遣いとも言う)食材を選んでいく。その様子を女性陣と料理長は興味津々といった様子。


「ちなみに王女はともかく、3人は料理とかはどうなの?」とふと疑問に思って聞いてみると


「食べる専門!」     ←  響子

「審査員的な感じ?」   ←  玲子

「刃物は危ないと母が…」 ←  芽衣


「つまり誰も作れないワケね・・・」


「「「申し訳ない」」」


「使えねぇ――!」と心の中で叫びながら、何とか地球の食材に(外見ではなく中身が)似たものを選ぶ。


・クックバードの卵6個

・ビックビーの蜜 大さじ8

・フライングバイソンの乳600cc

・お塩(岩塩)(適量)

・砂糖80g


 まずはボウルに、卵と蜂蜜を入れてよーく混ぜ、牛乳・お塩(甘さを引き立てる隠し味)を子鍋で沸騰しないくらいに温め、混ぜた卵の中に投入。加えて混ぜる。「ほんとはバニラビーンズがあればもっと良かったんだけど」とつぶやきながら、網目の細かい茶こしのようなもので2回ほど漉してカップに入れる。そしたらカップが6つ入るくらいの鍋に1,5cmほど水を入れ、沸騰しない程度の(だいたい90℃くらい)まで温めたら、蓋をしたカップを入れ、鍋の蓋をして極弱火で10分待つ。10分経ったら火を止めて5分ほど蒸らす。粗熱が取れたら、氷を浮かべたバットに入れ冷やして出来上がり。

次はカラメル作り。

小鍋に砂糖と水を入れ、中火で熱し砂糖が溶けて水分が蒸発してきたら、鍋を傾けて全体を混ぜ、焦げ茶色になったら火を止め、お湯をほんの少し加えて鍋を揺する。お湯を入ることで、これ以上焦げるのを防ぐためだ。


カラメルが固まる前に、カップの上辺に下地が見えないくらい乗せしばらく冷えてきたらお手軽プリンの完成だ。


「この調理法は何というのだ?」料理長が出来上がったのを見計らって聞いてくる。

「これは「蒸す」という技法だよ。本来この食べ物はオーブンで焼く方法もあるんだけどね」と言いながら、日本での料理に使われる「五味」「五感」「五色」「五法」の考え方を伝える。



「五色」白・黒(紫)・黄・赤・青(緑)… 料理や器に盆、添える葉や花の五つの色合い

「五味」甘い・塩辛い・酸っぱい・苦い・辛い … 献立全体のバランスを考えた五つの味覚

「五感」色合い・音・香り・温度・味 … 視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚の五感のバランス

「五法」焼く・煮る・揚げる・蒸す・生(切る)… 会席料理の献立に含まれる五つの調理法


実際には五法には、プラスして「漬ける」があると思うのだが。



「なるほど、田口殿の居た世界での料理の考え方は非常に興味深い。」


「それよりも出来ましたの?」


王女がスプーンを握りしめながら、急かした様子で問いかけてくる。

完全にキャラ崩壊だなと思いながら


「お待たせしました。」と女性陣4人と料理長へ渡す。


「この黒い物体は…」


 恐ろしげに王女がスプーンをカップに差し込むと抵抗感なしにカップの中に沈み込むスプーンの感触に驚きながらも恐る恐る口へと運ぶ。


「っ!」


王女も料理長も、そのなめらかな触感に驚く。


「噛まずに溶ける、なんとも不思議な…」


「こ、この食べ物の名は?!」


「プリンだねぇ」と横で響子が「久しぶりに食べたぁー♪」と喜びながら名前を言う。

こら!俺のセリフを盗るな、食いしん坊!


「ぷ、ぷりんと申しますのね・・・」と王女は何故だか唸るように、でも一口づつ確かめるように食べている。しかし三口目には目元が緩んできていた。


「でも普通のプリンはカラメルを下に敷いてるのに何で上からかけたの?」


「外見が黒いからどんなお菓子か想像つかないかなってね。3人は作ってるの見てたからすぐにプリンってわかるだろうけど、料理長や王女には…インパクトあるんじゃないかと。」


軽い悪戯のようなもんだ。ふと王女と料理長を見ると、カップの底にわずかに残ったプリントカラメルを舐めるようにきれいに食べていた。卑し過ぎだろ王女!


「料理長!明日から毎日この「ぷりん」なるものを2つ…いえ3つ、私に持ってきなさい!!」


「「「「太るぞ?」」」」


「っ!」


料理長を除く全員が王女に向かって言い放ち、王女は膝を落とし崩れ落ちた。






「ちなみに僕のは・・・(泣)」天野が1人呟いていた。







 調理場でのプリン騒動(?)の後、部屋に戻った田口は、ベッドに横になりながら地球での生活を思い出していた


 両親の介護をずっとしていた田口は、両親の死後、心にぽっかりと穴が空いていた。決して両親とは仲が良かった訳ではない。しかし父が脳梗塞で倒れ高次機能障害と右半身麻痺になり、介護度5の認定を受けてから、母一人では父を介護出来る訳もなく、田口は地元に戻り、母と二人三脚で介護を続けた。

 昼間は田口も仕事をしていたため、日中、父をデイケアやデイサービスを併用しながら限度額いっぱいまで通って貰い、休みの日や夜は親子3人で過ごしていた。

 親の介護のためにプライベートもほとんどなく、介護疲れで母が他界した後、仕事以外の時間を、父のためだけに全てを費やしていた田口は、父の死後いきなり出来た時間に戸惑い、生きる気力というものが失っていた。そんな中、この召喚が行われた。

〔光〕に願った22歳の年齢にしたのも、親の介護をし始めた歳であり、異世界での“新しい生き方”をしていくために、あえてリセットしようと思ったからだ。


 もう帰っても自分の居場所がない地球。しかし両親供に他界している田口にとっては、戻るよりも条件の良い≪バーハフェルト≫での生活の方が、このぽっかりと空いた心の穴を埋めるにはちょうど良かったのかも知れないと思った。


「明日は、どうなるんだろ・・・」



 ちょうどその頃、玲子も異世界召喚といういきなりの事に驚きながらも現実として受け入れ始めていた。

 最初はただ怖さしかなかった。幸いなのは田口と違い、幼馴染が傍にいたことは心強かった。今でも理不尽に見ず知らずの世界へ放り込まれた事に対しては怒りを覚える。

しかし『剣菱財閥令嬢』としての枷から、解き放れたことは嬉しい。

玲子は学生と云う青春を、ただ謳歌するには立場が許されなかった。

学業の上位成績は勿論、部活動の剣道も何をするにしても『剣菱財閥令嬢』の肩書きが邪魔をしていた。

 ただの「剣菱 玲子」として扱ってほしい。現実として無理であるのは分かっている。実際、この誘拐じみた異世界召喚のために、剣菱家では必死の捜索をしているのだろうと思うし、財閥家の令嬢を誘拐するなんて世間やマスコミがどう捉えるかも分らない。

マスコミはともかく世間や財閥での中では、いくら16歳とはいえ、女性が長期間誘拐されていれば、どんな想像をするかは容易い。きっとまともな縁談も来ず、政略的にも使えないとなれば、どんな未来が待っているかと思うと不安で仕方がない。

そうであれば、あとの3人には悪いが、いっその事この世界で生きる方が良いのではと思う。


「1人で居ると色々と考えてしまいますね」とつぶやいていると、コンコンと扉を叩く音が聞こえた。


扉を開けると響子と芽衣が立っていた。やはり一人で過ごすにはネガティブになり、眠れないのであろう。一緒に寝かして欲しいとの願いだった。







 翌朝、簡単な朝食を食べた5人は会議室のような殺風景な部屋に招かれた。


「昨日は大変失礼いたしました。」と王女が陳謝をし?話を始める。「プリンのこと」とは誰も言わない。


「昨日、補償の件も含め王国幹部とイフェルナ教とも話を進めましたが、何分難航しておりまして、具体的な草案が出来次第、お知らせいたします。

その間に、皆様にはこちらの世界での常識、貨幣価値やスキルについての講義と申しましょうか、この世界での魔物や魔石といった情報を含めて、お教えしようかとの話になりました。

また、もし望まれるのであれば魔法のスキルや戦う上でのスキルを使った訓練も行いたいと思います。」


特に異論もなく、5人は午前中講義を受けることになった。



バルド王国だけでなくこの世界では「紙幣」の制度はなく硬貨での金銭のやり取りをしているようだ。それだけ国の信用度や安全ではないのかも知れない。


硬貨の種類としては


銅貨・銅板・銀貨・銀板・金貨・金板・白金貨となっており貨幣価値は


銅貨 10000000枚 = 白金貨 1枚

銅板 1000000

銀貨 100000

銀板 10000

金貨 1000

金板 10

白金貨1


金貨以上は大きな商会や国でしか、滅多に見ないという。

ちなみに地球での価値観で考えると銅貨1枚で10円くらいのようだ。



スキルについて


スキルは常時発動しているものやその場、その時に任意・または自動で発動するものがあり、魔法もスキルに含まれる。


その種類は戦うことを前提としたもの【剣術】や、生活に携わるもの【料理】など様々な種類がある。

しかしスキルが無いといっても剣を振れないわけでもないし、料理が出来ないわけでもない。そのスキルを発現するということは、そのスキルに対しての造詣が深くなった証であり、自然に身体を補助してくれるといった感じだ。

技術・経験の証という一面と、新たな可能性が発現したとも言える。


スキルの中でも特殊なものの中で『魔法』がある。

魔法には属性系魔法と特殊系魔法があり、簡単にまとめると


・属性系魔法

  火属性・風属性・水属性・土属性・光属性・闇属性

・上位属性

  炎属性・嵐属性・岩属性・聖属性

・上位混合属性

  氷属性・雷属性・暗黒属性・空間属性・時属性

・特殊上位混合属性

  時空属性など


などがある。


特殊系魔法は上記に属さない魔法で

魔力放出などの操作、放出系や麻痺、硬化といった身体に関する魔法。

そして毒、錬金といった作成系の魔法も含まれる。

要は属性だけでは説明が出来ず、無理に細分化させるよりも一纏めにしたものといったことらしい。その辺は(理解を超えたもの)研究はされているようだが、進展はしていないのでこういった形になっている。



魔物・魔石について


・世界に蔓延している魔力(魔素)より生み出されたもの

・物や動物が魔力(魔素)を受け変化したもの

の2種類に分かれるそうだ。

前者については、心臓などの臓器はなく、純粋に魔力だけで構成されており、簡単に言うと魔力が物質化したとも言える。稀に知性をもったモノもいあるが、動物のように本能で動くモノも多い。


後者については、魔力に侵され物質変化を起こしたモノらしく、その体は魔力を帯びていることから、武器や防具に活用されたり、食用にもなるらしい。


どちらも体内に魔力の塊「魔石」を持ち、その魔力を用いて明かりの魔道具として使われたり、様々な用途の燃料の役割として、人々の生活になくてはならないものとなっている。

ちなみに、魔石の中には属性を持った物も稀にあるそうだ。



種族について


≪バーハフェルト≫では様々な種族が暮らしている。

大まかに分けると

・ヒト種

・妖精種

  原種族(フェアリー?)

  森林族いわゆるエルフ

  地底族ドワーフなど

  竜神族

・獣人種

  犬族・猫族・熊族・虎族・狐族など(種別が多いため抜粋)


イフェルナ教では、すべての種族は「ヒト族」と妖精種の「原種族」から始まり、様々な生態系を起こしたとされているため、ヒト族のなかでは差別的な偏見を持っている者も多い。いわゆる「ヒト族至上主義」だ。

その偏見のために、今でも争いが絶えず国同士の関係も良くない。



「まずは概要を簡単に説明しましたが、一旦休憩をしてから、次は王城の設備を見て回りましょう」


必要とはいえ、座学は退屈であり、眠くなってきたため助かる。

5人は休憩のあと、王城の中を見学することとした。






お読みいただきありがとうございます。

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