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利己の風【改訂版】  作者: メイシン
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第3話 嗜好品と異世界での食事

サブタイトルって難しい。




 部屋に案内された田口は食事までの間、自身のスキルに慣れるため、まずはステータスを再度確認する。




■名前 :田口 裕(22歳)

■レベル:10

■状態 :ヒト族 健康

■体力 :110/110

■疲労度:92/100

■力  :120/120

■敏捷性:150/150

■魔力 :――――――(数値化不能))


■スキル:

【身体強化】

【解析】

【索敵】

■固有(血統)スキル

【反射速度強化・高速思考】

【時空魔法】

【創造具現化】

【アカシックレコード・アクセス】




 まずは【アカシックレコード・アクセス】・【解析】を併用しながら、普段吸っているタバコを思い浮かべる。


「タバコの葉ってナス科の葉っぱだったんだ」と何気に感心しながら更に必要な情報を思い浮かべる。普通に乾燥させるんじゃなく火力乾燥ってことはある程度、高温。茎の部分や葉の箇所のブレンドによって味や香りも変わってくる、と。あとは葉と巻紙の燃焼速度を揃えるために、燃焼速度の遅いペーパーと、構造の難しいフィルター。


「ゼロから作り出すには、やっぱり面倒くさいな。」と出来上がったタバコを見てつぶやく。

次に行うのは、タバコをゼロから作成するのではなく、そのものをいっぺんに作成するよう試す。


「うん。見たことあるものなら問題なく具現化できるようだ。」


手にはタバコがひと箱、握られていた。


耐久性も考え、オイルタイプのライターと灰皿も作成し、窓際にてタバコを吸っていると、

扉をノックする音が。


「どうぞー」と気楽に答えるとガチャッと重い音をさせながら、メイドのリベラと、何故か剣菱 玲子が「失礼します」と入室してくる。


 しかしタバコを吸っている田口を見てリベラは「身体の中が火事に!」といきなり走り出し、傍に合った水差しで中身を浴びせかけた。






「申し訳ありません!!」


 玲子が、リベラに慌てながらも、火事ではなく「害のある煙を、体内へと吸引する愚かな行為。」と(悪意ある)説明をし、田口は「精神安定にもつながる、有意義な時間を過ごすための嗜好品だよ。」と言い返す。

リベラは、タバコを普段から摂取することによって、毒物系の耐性が出来、先ほどの思考誘導の薬が効かなかったと勘違いする。


「それで、何の用ですか?剣菱さんも一緒に来られたってことは食事の準備が出来たワケじゃないよね?」と髪をタオルで拭きながら耳にも水が入ったようで、しきりにトントンとジャンプしながら話を切り出す。


「ええ。実は剣菱様が田口様にお話があるとの事で、ご案内いたしました。」


「話って?」


「先ほどの王様方との話し合いの中で、私…いえ、剣菱家の立場を考えての発言があったと思いまして、改めてお礼を言わなければと。」


『賠償』云々の話かと「別に気にしないで構わないですよ。こちらも打算があって剣菱財閥の話をしただけですので。」と話すが


「そうはいきません。私が居なくなった事によって剣菱家がどう動くのか、流石に異世界に連れ去られた事までは分からないかも知れませんが大騒動になっていることは明白です。無事に帰れた後のことも含め、最初にあのように言っていただけたのは助かりました。」


無事に帰れたらねぇ(・・・・・・・・)」と意味ありげにつぶやいたあと、「薬の効果は切れたみたいだね」とリベラをちらりと見ながら、タバコに手を出す。


「薬の効果?何のことです??」と玲子の質問を「ニコチンですよ。」と冗談半分に言いながら、タバコを吸うため断りを入れながら火をつける。

一方リベラは「全てお見通しですよー」と笑みを浮かべながら紫煙をふかす田口に、どこまで分かっているのかが不明だが、冷汗をかきながら沈黙を貫く。


そこに、いきなり扉が開かれ、天野を先頭に召喚された3人が田口の部屋へ入ってきた。


「あ、本当に居たよ。玲子が見当たらなくて。

メイドさんに聞いてみたら田口さんの部屋へ行ったって聞いたもんだからさ。何の話してたの?」


断りもなく入室し、玲子の隣へいきなり座る天野を見て、流石に怒りを覚えた田口は

「礼儀のなってない坊っちゃんだねぇ。家や学校でちゃんと教わってなかったのかな?」と挑発してみる。


天野は何を指して言われているのか分からず、単に田口が2人でいた時間を取られたから挑発してきたと勘違いし、嘲笑の笑みを浮かべる。


「田口さんは、光牙がノックもせずに田口さんの部屋に入り、許可もなしに座ったことに対して言っているのですよ。仲が良いならまだしも、お互い会ったばかりの関係でしょ?『聖ファリス女学園』の生徒なら、節度を持って行動して下さい。」


と玲子もいささか憤慨している様子。天野も自分の勘違いに気付き顔を真っ赤にしているが、田口にバカにされたのを思い出し睨みつけている。


「まあまあ、ここは私に免じて」と何が免じてなのかワケの分らない事を口にしながら一緒にきた小山内 響子が代わりに謝ってくる。そういえば結局、国王も謝罪はしてなかったなぁと思いだしていると、メイドのリベラが


「そろそろお食事の用意ができたようです。特に問題がなければ皆さんご一緒に移動されては?」と切り出した。







食事の用意された部屋へ行くまでに、天野が玲子に対して執拗に何を話していたのか聞いていたが、玲子も面倒臭いのか、適当にはぐらかしていた。


10人程が座れるテーブルに着き、しばらくすると、第1皇子・第3王女が同じように席に着く。

すると食事が大皿に盛られてくる。内容としては中世の食事が一番近い感じか。各人の前にはフィンガーボールが置かれ、手元にはスプーンしかない。


第1皇子が「国王は所用で席を外しておるので申し訳ない。」と陳謝したあと、

「皆も疲れているであろう。今日のところは、ささやかではあるが食事を楽しんでいただき、今後のことについては、また明日にでも話をしよう。尚、王族と一緒だからと言って畏まる必要は無い。食事のマナーについても気にせず食して欲しい。」

と挨拶をし、シェフ?のような格好をした料理長が献立を発表する。


「本日のメニューは


・近郊で採れた彩りサラダ

・アーメッド(地球で言うアーモンド)のポタージュ

・フレッシュシープ(子羊?)のハーブ煮

・ドットバードのアーボ(アボガド?)詰め

・メイゴ(果物)の蜜漬け


となっております。」


メイド達が1人につき1名付き、テーブルの中央で料理長が肉料理を器用に2本のナイフで切り分け、皿に盛り1人1人に配る。


「まあ今日は特に美味しそうですわ」とカーラ王女が言い、第1皇子が「今日は肉無しの日ではなかったか?」と献立に不思議そうな表情で料理長に質問する。


「本日は勇者様方がいらっしゃったとのことで国王より貯蔵してある肉を提供せよとのお達しがありまして。」


と料理長が国王からの指示だと答える。話の内容からすると、まさに中世の中頃といった感じの食事事情のようだ。

そもそも(魔法が存在している世界なのでどこまでかは分からないが)冬は穀物はともかく、野菜が採れない。よって比較的冬場は肉料理が多いのだそうだ。

そして今の季節は夏?のため、新鮮な野菜や果物を中心とした料理を提供する日が多いらしい。


4人はスプーンしか食事するものがないため、とりあえずポタージュから口にして、周りを見ながら様子を伺っている。

田口は料理を【解析】したあと、問題ないことを確認すると周りに気付かれないように【創造具現化】をポケットの中で行い、ナプキンを作成する。

すると王子たちがそのナプキンを不思議に覗いてる中、おもむろに手づかみで(親指・人差し指・中指の3本だが)料理を食べ始めた。


「田口さん流石に行儀が悪いんじゃないの?」と先ほどの意趣返しとばかりに天野が口にすると、フィンガーボールとナプキンを使って指を奇麗にした後、逆にバカにしたように無言で天野を睨む。


「まあ!田口様も貴族の出なんですの?」とゴブレットでワインを飲んでいたカーラが、驚いたように口にする。


「そうではありませんが…」天野を睨むのを止め、王女達の方へ向くと説明をする。


「この世界の食事形態を察するに、私達の世界で中世の中頃だと思い、その当時の食べ方を真似しただけですよ。

 些か自信が無かったものですからナプキンを用意しましたが。」


「ご謙遜を。その仕草はとても庶民の‘それ’には見えませんわ。ちなみにその指拭きに使った布はナプキンとおっしゃるのね。」


「確かにそのナプキンとやらは上手く考えられておるな。早速、明日から用意させる事としよう。」


 実際、中世の時代では食べて指が汚れるとテーブルクロスで指を拭いたり指を舐めて綺麗にしたりと、現代の人間からしてみると、かなり耐えがたい。

 ちなみにカップを持つとき、小指や薬指を立てて飲むのはその名残りでは?との話もある。



そして、またもや恥をかかされた天野は(もっとも自業自得だが)顔を真っ赤にしながら田口を睨み続けている。


そんな天野を見て「あらあら」と微笑んでいた皐月野 芽衣は「田口さんは博識なんですね。」と言いながら田口の真似をして3本の指を使って食べ始める。

隣の小山内 響子も「僕としてはこっちの方が食べやすいや」とガツガツと食べていた。


「それにしても、料理の味付けには、主に塩・ハーブなんですね。王宮での料理と、とても緊張していたのですが、なんか素朴な感じがします。」


「そうだね。地球でも中世の終わり頃には色々な香辛料も入って食文化が発達したみたいだけど、それまでは砂糖も貴重だったみたいだし甘味系のお菓子とかも種類が少なかったみたいだよ。」


「「「「っ!」」」」



お菓子の言葉に女性陣が一斉に反応する。


「田口さんは、お菓子についても詳しいんですか?」


「全然。簡単なやつは作れるかも知れないけど、同じ食材があるかも分らないし。

そもそも【料理】スキルも持ってないから美味しい物なんて作れないよ。」


「料理長!この後、田口様を調理場へお連れしなさい!レシピを知れば【料理】スキルを持つ料理長ならば異世界の味を再現できるでしょう?」


王女よ、キャラ変わってるぞと心の中でツッコミを入れてると、天野が小声で「【料理】スキルを選んでいれば」と本音が駄々漏れしていた。






そして食事が終ると田口は、早々に調理場へ連れて行かれるのであった。






煙草を害悪と一言で済まされると、愛煙家には辛いものがあります。。。

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