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利己の風【改訂版】  作者: メイシン
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第16話 国境の砦と今後の方針







 国境の砦にはそれぞれの国の砦と、間に緩衝地帯がある。砦ではギルド証を提示するとすんなり通れるとの話だったが、ユミンや玲子達がギルド証を見せた際に、ギルド証など碌に見ずに、その容姿を見て「もう少し詳しく検分する必要がある」と言って連れて行かれてしまった。

メルビーが不審に思って俺の傍にやってくる。


「どうかされましたか?」


「どうやらこちらの警備兵さんがうちのメンバーを詳しく調べたいってさ。」


「田口さま。ここは私に任せていただけませんか?」


とメルビーは、残った警備兵に静かに近づいた。権力を振りかざして難を取り除こうとするのだろう。


「この者達はミーバ共和国、ワークド子爵が娘、メルビー・ワークドの護衛としてこの旅路をともにしておりますが、いかなる理由で連れて行かれたのですか?」


「そ、それは…」と残された警備兵は言葉に詰まる。国境の警備とは娯楽も無く、たまにうら若き旅人が来た時には、検分と称し衣服を脱がせたりして「目の保養」をしたりしていたのだろう。しかし今回は相手が悪かった。

 もちろん俺がメルビーと一緒に旅をしていることを言っていればこんな事になってはいなかったのだが。


「護衛を疑うは、ワークド家を疑うかのごとき所業。国は違えど、問題になることお分かりですね。…貴殿の階位と名を述べよ!」


 口調をいきなり変え、声を荒げて警備兵に詰め寄るメルビー。警備兵はすぐに顔面が蒼白となり、名を告げる。


「立場が分かったら、検分している所へ連れて行って貰いましょうか?」






 検分と称して小部屋へ連れてこられた玲子たちとユミンは1列に立たされ、警備兵の兵長と思われる男を前に、苛立ちを隠せずにいた。


「どうしてこんな所に連れてこられなければいけないのですか?」


「ここは国境だ。不審者を検分するのは当り前であろう。」とニヤニヤしながら女性陣の肢体を粘っこい視線で眺めながら言う。


「どこが不審者なのよ!」


「不審者かどうかを調べるためにここに居るんだ。何も不思議ではあるまい。何か疾しいことでもあるからそのような態度を取っているのではあるまいな?」


「ますます怪しい」とジロジロと4人の肢体を嬲るように視線を這わせる。


「とりあえず身につけているものを外し、何か隠し持っていないか確認させてもらおう。もちろん疾しいことが無ければ素直に応じれるはずだ。」


 兵士長は女性の羞恥心を煽りながらのこの瞬間が大好きだった。国境の警備は確かに大事だが、王都から遠い勤務は左遷されたと同じ事と思い、せめてたまに来る女性の旅人や冒険者を検分と称して、裸にし眺めることがストレス発散の時間だった。しかしその時間はすぐに潰える。


 ドタバタと音をたててドアが開かれる「何事だ!」兵士長は入ってきた警備兵の男を恫喝するも、警備兵が兵士長に小声で事の次第を告げられると同時に、俺とメルビーたち一行が姿を現す。


「貴方がこちらの責任者で宜しかったでしょうか?」


メルビーが同じ女性としてこれ以上の狼藉は許さないとばかりに冷たい視線で問い詰める。この4人が隣のミーバ共和国の貴族の一行と知り、顔を青ざめるも疾しいことはしていないと開き直る。


「如何なされました?」


「この者達は私の護衛として行動を共にしている者です。何の問題があって取り調べているのですか?」


「ここで問題がないかを調べるために呼んでいるのです。この国ではこの国のしきたり(・・・・・・・・)があるのです。

 護衛であろうと怪しい者は取り調べるのは当たり前でありましょう。他国の貴族さまとは云え、口を挟まないでもらいたい。」


屁理屈ではあるが正論でもある。しかし田口達にはこの理屈は、逆に首を絞める形となる。


「その理屈は、バルド王国のしきたり(・・・・)という事で宜しいのでしょうかねぇ?」


「何だ貴様は!」


「玲子。バルド王国でもらった市民権の証(・・・・・)を見せてやれ。」


 兵士長の言葉を無視して玲子にバルド王国にて発行された貴族待遇(・・・・)の『市民権』を出すように言う。怪訝に思いながらもその証を見た途端、兵士長の顔が見る見る青ざめた。


「…で、この国のしきたり(・・・・・・・・)で話をしようか。兵士長?」


 たっぷりと間を作り、外堀を埋めてから、いたぶる様に田口がニヤリと笑みを浮かべながら言葉を紡ぐ。近くで響子が「悪魔や。悪魔がおるで。」と下手な関西弁でつぶやいているが気にしない。


「その…これは、その…」


もはや言い逃れも出来ない状況。玲子たちも頭に来ていたのか、俺に口出しもしてこない。


「兵士長の職務としては、例え「貴族クラスの者であろうと」検分と称して取り調べを行うと言う事なんだよな?何をどうやって(・・・・・)行うのか勉強のために見させてもらっても良いだろうか?もちろん王都でもこの話はすぐにでも行くだろうし、今後の身の振り方(・・・・・・・・)も踏まえてやってもらおうか?」


いたぶる気満々の田口だったが、芽衣がなぜか兵士長の助け舟を出した。


「田口さん。証をすぐに提出しなかったから兵士長も何かを隠しているのでは?と思ったのでしょう。

 結果はこうなってしまいましたが。こちらとしても身分を公にしたくなかった事も原因の1つですし、どうでしょう兵士長さん。職務を遂行しようと言う兵士長の志を掲げるのも大事ですが、そもそも取り調べももう終わっているのでしょう?」


「そ、そうですな。実は貴殿達が入るちょうど前に検分は終わっていたのです。これ以上調べることも特にございませんので、どうぞ国境を越えて下さい。ご足労をお掛けしました。」






「芽衣っち、さっきは何で助け舟出したの?芽衣っちも頭に来てたでしょ?」


緩衝地帯を歩き、ミーバ共和国の砦に近づく中響子が芽衣に問いかけていた。俺も気になる。


「お灸を据えるには、あれで十分だったでしょ?それに私達はこれからミーバ共和国へ行くのよ?ミルド王国には何れ足取りは知られてしまうでしょうけど、事を大きくしても今の私達にはメリットはないわ。引きとめられて王国に連れ戻されてもイヤだし。」


 確かに、そうだな。思慮が足らなかった。特に追手が来ているワケではないが、あの王様と天野のことだ。何があるか分からない。

勇者のお披露目もあるようだし、ここで下手に躓かない方が良い。と言う事だろう。




ミーバ共和国側の砦での検問は特に問題なく、通ることができた。


「それで玲子達の通おうとしている冒険者学校ってのはどこら辺にあるんだ?」


「ミーバの首都に程近いところですよ。迷宮も近くあるらしいんです。」


「迷宮?」


「地下迷宮があるらしいですよ。もっとも首都の近くだけあってすでに踏破済みらしいですけど。」




 ミーバ共和国の建国の影にはこの迷宮の恩恵にあった。迷宮から産み出される魔石は、そこに町を作り、都市に至るまで成長し、共和国を建国するまでに至った。

 地下100層からなる迷宮は、その階層によって産出する魔石・鉱石が街を活性化させ、ヒト属のみならず、他の種族にまで分け隔てなくその恩恵を分け与え、他種族混合の繁栄を手に入れた。




「それじゃ、もう少し一緒か?それともメルビーと一緒に行くのか?」


「田口さん達の予定は?」


「俺とユミンは、もう少しレベル上げをしたいけど、首都にも行ってみたいなぁ。」


「しばらく首都を拠点に迷宮で活動いたしますか?」


俺が悩んでいると、ユミンが案を出してくれる。


「…そうだな、そうするか。ちなみに冒険者学校というのは寮か何かあるのか?」


「遠くから入学する学徒のために寮もあるそうですよ。」


「そっか。じゃあミーバの首都まで一緒に行こう。」


 もうしばらく一緒に旅をすることになるかと思いながら、馬車を進める。どんな内容を教えるのか少しは気になるが卒業した冒険者が活躍しているのならば聞く機会もあるだろうし、玲子たちの休みの時に時間が合えば聞くことも出来るだろう。ユミンにも足しになるような内容ならユミンも学校に通う事も視野に入れようか?でも規格外だからなぁと自分の事を棚に上げて考える田口であった。







真夜中。田口とユミンが馬車を抜け出す。


「ユミン、今から本当(・・)のレベル上げだ。今から俺のスキルを見せる。眠くないか?」


「はい。大丈夫です。この身体にして頂いてから、ほとんど寝なくても大丈夫になりましたので。」


 ユミンは奴隷にされていた時の後遺症のある身体を治す際、副作用で細胞が変異し『魔力身体』という魔力で構成された身体となってしまった。

 その影響であろうか?半分ヒトを卒業してしまった感がある。申し訳ない。

しかし、身体能力自体は敏捷性以外は一般人と変わらないので、レベルアップは必要だ。


 俺は、ユミンの手を取り【時空魔法】の転移を行う。行き先は名も無い迷宮。まだ発見されていないのだろうか、それとも迷宮が出来たばかりなのか?まだ人が踏み入れたことのない迷宮だ。【索敵】全開にして人気のない階層の浅そうな所を探していたら、たまたま見つけた場所だ。


「ここは階層も浅く、魔物も手頃だから、今のユミンには良い訓練場所になると思う。」


「分かりました。」


改めてユミンのステータスを確認する。



■名前 :ユミン(19歳)

■レベル:5

■状態 :ヒト族?(魔力身体) 健康

■体力 :60/60

■疲労度:98/100

■力  :70/70

■敏捷性:201/212

■魔力 :401000/401000


■スキル:

計算

料理

熱魔法

主従の誓い


■固有(血統)スキル

反射速度・高速思考強化

身体魔力融合

本質への理



…何やら増えている。もう【熱魔法】を取得している。有り得ない。それに【本質への理】って。

レベルが上がっているのは道中で大量虐…ゲフンゲフン、魔物を倒してきたおかげだろう。しかし、遠方からの攻撃は良いとして、近接戦闘を出来るようにしておきたい。


 ちなみに俺のステータスは



■名前 :田口 裕(22歳)

■レベル:21

■状態 :ヒト族 健康

■体力 :290/290

■疲労度:98/100

■力  :250/250

■敏捷性:321/321

■魔力 :――――――


■スキル:

身体強化

解析

索敵

■固有(血統)スキル

反射速度強化・高速思考

時空魔法

創造具現化

アカシックレコード・アクセス



俺も道中、魔物を狩ってたから大幅にレベルアップしている。


しかし、おれも近接戦闘は盗賊達以外は行っていない。ユミンとの連携を含めて行っていきたいと思う。


「ここは迷宮だから素材を気にしなくても良いからある意味、時間をかけなくて済む。魔石だけ拾いながら、連携を重視して行こう。途中で鉱石系があるようだったら話は別だけど、階層が浅いことから、新しい迷宮の可能性が高いから鉱石は期待しなくても良い。」


鉱石などは長い年月を掛け魔素が鉱石に浸透し『魔鉱石』になる。新しい迷宮にはほとんど無いと思って良いだろう。



「それにしても、いきなり知らない場所に!やっぱりユウ様は特別ですね。このようなスキルは見たことも聞いたこともありません。」


ユミンも驚いているが、「でもユウ様だし」と小声で言っていた。それって褒め言葉じゃないよね?少し傷つくぞ(涙)

 迷宮に入ると序盤は定番のゴブリンだ。


「ユウ様、スキルを使っても良いですか?」


「とりあえず好きにやってみろ。」


ユミンは許可を貰うと、早速スキルを使う。


「【身体魔力融合】!」


ユミンの身体が淡い青白い色に包まれる。そしてユミンがいきなり消えたようにいなくなり、それと同時にゴブリンが爆散(・・)した。




 辺りを探してみると少し離れた壁に上半身をめり込ませ、足をバタつかせているユミンのお尻が見えた。


ユミンのお尻を眺めながらスキルをもう一度見てみると




■名前 :ユミン(19歳)

■レベル:5

■状態 :ヒト族?(魔力身体) 健康[魔力融合状態:残り180秒]

■体力 :100010/60

■疲労度:98/100

■力  :100070/70

■敏捷性:100201/212

■魔力 :101000/401000


■スキル:

計算

料理

熱魔法

主従の誓い


■固有(血統)スキル

反射速度・高速思考強化

身体魔力融合

本質への理




・・・ユミンさん。完全に人間を辞めてますな。なんだよ、その数値!時間制限があるようだが、それを差し引いても無敵状態じゃないですか!



ユミンの尻を眺めながら、溜息をつく田口だった。







胸も良いけど、お尻も偉大だと思うんだ。。。


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