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利己の風【改訂版】  作者: メイシン
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第11話 テンプレの決闘?と趣味の時間

ようやく戦い…とうまく行かないのがデフォ


ギルドに戻った田口と芽衣は、争っている2人ではなくギルド職員に声を掛けた。


「この状況って説明して貰えますか?」


「悪質な勧誘と嫌がらせですかね。」


職員の話だと俺たちと別れた後、魔物の分布を記した資料がギルド2階にあると聞いて、しばらく資料を見ていた2人は、あらかた調べ終わったのか、掲示板の依頼を見ながら過ごしていたそうだ。そこに依頼を達成したと思われる男たち3人が達成報告をして買い取りカウンターにきた所、2人が目に止まり声を掛けてきた。

 聞けば2人は登録したばかりの初心者で、端から見ても見た目麗しい美少女。男所帯のパーティには是非とも手に入れたい物件に映ったのだろう。執拗に勧誘し、見向きもしない2人に逆上し難癖をつけてきたそうだ。


「ギルドってそういうことには手助けしてくれないんですか?」


「一応、パーティ勧誘・申請は自由ですから。あまりにも悪質であれば別ですが…」


「この程度では悪質に当たらないということか。」


「すみません。」


「ちなみにギルド内は口論を超える戦闘行為の争い事は禁止らしいけど、相手が暴力に訴えてきたら…正当防衛は罪に問われる?」


「それは大丈夫ですが…相手はDランクですよ?」


「ま、問題ないレベルでしょ。」


「田口さん。助けに入らないんですか?」


「とりあえず芽衣はパーティのこと聞いて、問題ないようなら4人のパーティ申請の準備をしてくれ。」


「分かりました。」


俺は面倒だと思いながらも2人に声を掛けようと渦中の中に(嫌々)入った。


「だからしつこいわね!私達はあんた達のパーティには入らないって言ってるでしょ!」


「私達は連れを待っているだけですので勧誘なら他の方にどうぞ。」


「人が下手に誘ってやってんのに随分な言い草だなぁ!」


「こちとらDランクの先輩が手ほどきしてやるって言ってんだよ!」


「寝言は寝てから言って貰える?ってか煩いから寝言も迷惑。」


「「なんだと!」」


「手前らみてぇな初心者なんかオークやゴブリンに捕まって苗床になる前に、俺らが有効に使ってやるって言ってんだよ!」


「結局、本音はそんなとこか。」


「誰だ?てめぇ!?」


「「田口さん!」」


2人の後ろ側から声を掛けると2人は振り返り俺の後ろへ隠れるように移動した。


「2人の連れなんで、無意味な勧誘は止めて貰えますか?」


男達が田口を見て…ニヤリと笑う。大方、強そうに見えなかったからだろう。


「兄ちゃんからも言ってやってくれよ。俺らのパーティに入った方がイイってよ。昼も夜もな。」


「ぎゃはは」と笑いながら自分で言って受けているが…


「職員さん。こいつらヒトの言葉を理解できないみたい。ギルド内での争いは禁止みたいだけど…」


一瞬、ギルド内が静寂に包まれる。


「オークとかゴブリンならヤッちゃっても問題ないよね?(笑)」


男達は何を言われてるのか理解出来てなかったようだ。もっとツッコミ力を鍛えて欲しい。職員は苦笑しながら「それはちょっと…」と心情的には賛成したいがやっぱりダメらしい。

 周囲にいた冒険者たち、俺の言葉にクスクスを笑い、その笑いでやっと馬鹿にされてるのが理解できたようだ。


「誰がゴブリンだ!」と男達は口々に怒り出す。

ふむ、もう少し煽るか。


「あれ?言葉は理解できないと思っていたら、単語ぐらいは分かるのかな?ゴブリンってスゴいんだねー(棒)」


男達は沸点が低いようだ。一斉に剣を抜いて俺たちを囲もうとする。しかし、


「そこまでだ!」


腹に響くような声で、男達を静止する声が。


「ギルド長?!」


カウンターの奥から現れたクマのような大男は、どうやらこの町のギルド長らしい。

ギルド長は争いの面々を睨む。ヤクザ顔負けの凄味があるなと他人事のようにおもっていると。


「ギルド内の口論を超える戦闘行為の禁止、知ってるよな?これ以上、事を大仰にするならギルドとしても介入せざるを得ん。とっとと決闘でもして決着付けやがれ。」


うん。味方じゃないな。普通、登録したばかりのFランクとDランクで決闘させるか?

確かに冒険者って荒くれ者が多いと思うけど、被害者を救済するどころか加害者の有利になる手助けとは…。


「よし!ギルド長も言ったように決闘だ!」


周りも娯楽が少ないのか、決闘で賭けを始める始末。


「お前さんらもそれでいいな?」


男達も各々が得意の武器を携えこっちを見てる。ギルド長の決めつける言い方にもカチンとくる。

なんかこっちの思いと関係なく話が進んでいくのが面白くない。当然、俺の答えも決まってる。


「はい。お断りします。」


だって面倒だもん。男達&ギルド長はあっけに取られ、何も言えないようだ。

俺はくるっと後ろを向き、「芽衣!パーティ申請はどうなってる?」

カウンターの傍にいる芽衣に向って歩く。


「え?えーと、申請書類にメンバーの名前を書けばOKみたいです。」


「そっか。代筆で良いなら4人の名前を書いて申請してくれ。カードに更新手続きが必要なら渡しといてくれ」


とカードを芽衣に放り投げる。玲子と響子も俺の華麗なスルーに固まっていたが、芽衣の方へ駈け出した。その姿を見届け、改めてギルド長と男達を見つめる。


「坊主。この状況で断るってのはどうかと思うぞ?遺恨を残す形になるのは後々、事件に発展しやすい。」


このままではギルドを出た瞬間に争いになることを言っているのだろうか?


「あのさ、登録したばかりのFランクとDランクが決闘っておかしくないか?それもギルド長が煽るようにして。仮にもギルドを統括する責任ある立場だろ?法と秩序を守る立場の人間が、どういった理由で争っているかも確認しないで決闘させるなんて資質を疑われるぞ?それに…」


一瞬男達を見て、


「こいつらと決闘してもメリットが無さ過ぎる。賭けに見合うもの持ってなさそうだし。」


決闘をするなら男達は玲子たちを賭けの対象とするだろう。しかしそれに見合うものを持っているようには見えない。「己の尊厳を賭ける」ってのは格好いいけど意味が無い。


「なんか勝つこと前提に言っているが、こいつらは一応Dランクだぞ?登録したばかりのFランクが勝てると思ってるのか?」


「それこそ、分かっていて決闘を示唆するギルド長の方が問題だろ。どうしても決闘をしたい・させたいならそれなり物を用意しろ。なんならギルド長も一緒に教育してやろうか?」


「大層な自信じゃねえか。是非ご教授願おうか!」


職員が慌てて止めに入る。


「ちょっと待って下さい。ギルド長も何、ケンカ腰にいなってるんですか?

 それにあなたもです!ただでさえ登録したばかりのFランクなのにDランクにケンカ売るどころか元B+のギルド長にまでケンカ売るなんて。」


「元々ケンカ売ってきたのはこいつらとギルド長だろ。それにケンカじゃない。決闘だろ?もっとも、まともな決闘になるかも分からないが。」


とさらに煽りながらニヤリを嘲笑を浮かべる。







結局、決闘をすることになり、場所はギルド内の訓練場。周囲にはかなりの人数が集まっている。どっちが勝つか賭けをしているので俺は金貨5枚を自分に賭けておいた。倍率は1対10。勝てば金貨50枚と、これだけでも元は取れるか。


今回の決闘では、極力(・・)殺さないようにとのこと。ギルド長も相当頭にきているのだろう。決闘での賭けは、予想通り、男達は玲子たち女性陣の身柄。何でも奴隷にしたいらしい。

 一方、ギルド長は俺を奴隷にしてギルドで一生こき使うって。俺は面倒くさいから男達&ギルド長と同じで奴隷と財産の全て。双方合意の上で決闘の始まりとなる。


「本当に1人で大丈夫なの?」


「元は私達が原因だから、力を貸すよ!」


と玲子と響子が心配して助太刀すると言ってきた。


「そもそも、田口さんって戦闘は苦手じゃなかった?」


と芽衣が今更のように言って来る。


「そうですよ!近接戦闘なら私達がいた方が!」


「まぁ今回は俺も腹が立ってるから1人でやらせて。って言っても、時間は掛けるつもりも無いけど。」


「何か秘策があるのですね?」


「まぁ、ある意味、“力”でゴリ押しするつもりだけど…見てればわかるよ。」


と、玲子たちから離れ、訓練場の中ほどまで歩き、ギルド長達を静かに見つめる。


「準備はいいんだな。それで誰から始める?流石に全員といっぺんにやるわけにも行かねえだろ。」


「それより勝負の結果はどうやって決めるんです?今回は『極力(・・)殺さないように』ってことですから。」


「今さら「降参」って言っても止めやしないけどな」


「じゃあ半殺し(・・・)くらいで」とギャハギャハ笑ってる男達。


「…分かりました。あんまり時間掛けたくないんで、4人いっぺんで構わないですよ。」


「てめぇ!」


「分かってんのか?今さら止まんねえぞ。」


「せっかく全員で良いって言ってんだから全員でやっちまいましょうよ!」


剣呑な雰囲気の中、決闘の開始の合図を待つ5人。職員の合図で決闘が始まる。

俺以外の4人の内、ギルド長を真ん中にして男達が周りを囲もうと動きだした瞬間、動きが止まる。

 そして全身から冷汗が飛び出し、4人はその場にへたり込んだ。


「どうした?最初の威勢はどこに行った?」


俺がやったのは、単に魔力を解放しただけ。

 しかし無限とも言うべき魔力を解放。

言うなればドラゴンの前に放り出されたかのような、圧倒的な死の宣告。


「どうやらしゃべることも出来ないようだな。どうやって決着をつけるか?

そう言えば「降参」って言っても止めないんでしたよね?順番に嬲り殺せば良いのかな?」


周囲にはなっていた絶望的な魔力を4人だけに向け、ゆっくりと近付く。気絶も許さない。


「とりあえずギルド長、お前からだ。本来、初心者を守るべき立場じゃないのか?傲慢な態度で初心者を陥れるような行動はどうなんだ?」


ゆっくりと剣を抜き、眉間に切っ先を当てる。

徐々に皮膚を貫き頭蓋骨に達したとき、魔力の呪縛から解放された職員が、やっと我に返ったのか「それまで!」と終了の合図をした。


「まだ半殺しにしてませんが?始まる前に確認しましたよね?この4人は既に戦意もないかも知れません。が、「降参」とも言ってませんし、自分から半殺し(・・・)が勝負の終了と言ったんですよ?ギルド長も何も言わなかったってことは了承したんでしょ?」


「そ、それはそうですが…これ以上の続行は無意味です!」


「無意味って言うなら、この決闘自体がだろ!」


職員も何も言い返せなくなり、黙ってしまう。


「まぁ良いっか。立ち合いが止めた以上決闘は終了だ。…命拾いしたね。」


と魔力の解放を止め剣を鞘に収めると、重苦しい空気が霧散される。男達はやっと気絶出来たようだ。

ギルド長も一応元B+ランクだけあって気絶はしなかったが荒い息でしゃべることもまだ無理のようだ。俺は立会いの下に行き、決闘の賭けを確認する。


「こいつらの財産すべてって事で良かったよな?」


「…確かに。双方合意のうえで決定されています。」


俺は改めて4人の傍まで寄り、小声でつぶやくとギルド長は「何でそんな事を!」とわめいてきた。


「つべこべうるせぇ!財産全てって言ってんだから、今来てる物すべて脱いで裸になれって言ってんだよ!」


後ろで響子たちが「うわぁ鬼畜…」って言っているが無視する。それだけ俺が本気でムカついてるってことなんだよ。







ギルド室で俺達4人はソファーに座り、裸で正座してるギルド長と男達を眺め、財産の清算をしていた。


「ギルド長の資産が金貨129枚と魔道具各種11点。(家族名義のものもあるため意外と少ない)

男達3人は金貨6枚と装備一式。

ギルド長は元B+だから奴隷で売却した場合金貨120枚程度。

男達は金貨6枚と銀貨80枚か。」



「意外と少ないですね。」


「少し可愛そうな気もしますが」


「自業自得なんだけどね。」


 職員(副ギルド長)が、前代未聞の事とはいえ、ギルド長が奴隷落ちとは外聞が悪く、またいきなりギルド長の席が空白になるのも問題らしく、譲歩を俺に頼んでくる。

 俺としても奴隷の所有権も含め(野郎の奴隷なんていらないし)今回は特別に金で解決してやろうかと思っている。結局(男達の処遇も含め)奴隷落ちにせずに金貨300枚で手を打った。


「ま、これに懲りて、真っ当な道を歩めよ。「裸のギルド長」さま(笑)」


忌々しいと言わんばかりにこちらを睨みつけてくるが魔力をギルド長へ当てると途端にガタガタ震えだし下を向いた。







ギルドを出て宿に向かう4人。


「予想外の出来事で時間が掛かってしまいましたね。」


「でもたぐっちの魔力には驚いた!傍にいなくても倒れそうだったもん。」


「ほんと出鱈目でした。でもあの魔力量ならマイ・ルームも自然に可能なんだと思えます。」


「でも予想外のお金が手に入ったから、少し買い足しておきたいものがある。先に宿へ帰っててくれ。買いたいものが見つかればすぐに戻るから。」


「何を買われるんです?」


「旅に必要な資材だよ。」と伝えると俺は別行動を始める。

欲しいのは鉄と木材と魔石。金は十分にあるし大量に買えるだろう。木材と鉄鉱石は手で持てるくらいの物。現物が1つあれば問題ない。魔石は色々と使い道があるから大小様々なものを購入した。







夕食を食べ終えた後、部屋に戻った4人はマイ・ルームの入り口を展開し、中へ入るとリビングで昼間に買った髪飾りを芽衣が渡していた。


「田口さんが玩具を買った時に一緒に買ってくれたんです。」


「「「ありかどう田口さん」」」


「でも何の玩具を買ったんです?」


「馬車を引く、動く馬?」


そう言って俺はアイテムストレージから馬を出す。


「ゴーレムの一種みたいなんだけど、これを改造すれば明日から移動が楽になるかと思ってね。」


「その材料をさっき買いに行ってたんですね。」


と3人は納得したようだ。


「という事で、今から作業に入るから。適当に風呂入って寝ててくれ。」


 寝室の壁に扉を作り作業部屋を構築する。そこに作業用のテーブルを具現化。

おもちゃの馬を取り出す。動力回路など動く仕組みを【解析】してみる。刻印の魔術回路や色々な技術がつまっている。これを作った人物は相当の凝り性のようだ。さっき買った大きめの魔石に魔方陣の刻印を1文字づつではなくそのものを転移させ刻みつける。

 最初からこのやり方を覚えていれば、【隷属魔法】を防御する腕輪も簡単に作成できたのだが、思いついたのは先ほどだから仕方がない。

 馬の関節部分など精密な作りも再現していく。やっぱり手本があると楽でいいな。縮尺を変えるだけで出来上がる。材料は鉄鉱石を基に【創造具現化】を使い鉄の部分をイメージして作成する。出来上がった馬は鉄の鈍色をしているが錆には弱そうなので、魔力を練り込みながら再度素材から変えていく。


 出来上がった馬は黒光りした姿で悠然と立っている。なかなかの出来栄えだ。二頭立ての馬車にするつもりなのでもう一頭作っておく。


 次は馬車だ。この世界の馬車はサスペンションも無いかなり震動が直接響くものなので、バネ板とショックも取り入れよう。油圧式は構造が分からないので素直に【アカシックレコード・アクセス】を使い、4WDの自動車を参考に車体を構築。馬車内は【空間魔法】で拡張して20畳くらいの広さに簡単なキッチンとトイレを構築。

 ついでにマイ・ルームに入る扉も作成して3人がいつでも入れるようにしておく。

テーブルとソファを設置して…、マイ・ルーム必要無くなった感があるが、まぁいいか。壁には窓を設置して外部の様子も見れるように。窓ガラスも魔力でコーティングして強度を増して、襲撃にも備えておこう。最後に馬をつないで完成。


馬車を格納できる空間をマイ・ルームに作って、大きめの入り口を構築すれば、明日を待つばかり。

お隣のミーバ共和国へは馬車でも2週間以上は掛かるから、これで快適な移動手段を手に入れたのは大きいな。

【索敵】を使えば御者も必要ないが、女性3人が居ると居場所がね…。御者が俺の定位置になりそうだ。


思ったより熱中してたようで、もう真夜中だ。明日から長距離移動になるから、今日は風呂に入ってすぐ寝よう。


こうして中身の濃い1日が終わった。







お読みいただきありがとうございました。

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