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喰人竜  作者: バグ
2/5

英雄の街ヘイサム、襲撃

空から見下す人間の街は最高だ。

今日はどの街で暴れてやろうか。


「ギリー、どんな人間を喰らいたい?」

大空を飛行する、俺の唯一のパートナーに聞いてみる。


「ギャオ」

短い返事が帰ってきた。

だが、俺にはそれで十分伝わる。


「強い人間‥か。分かった。今日の目的地は英雄の街ヘイサムだ。そこには、日々地上のモンスターと戦っているハンターと呼ばれる輩が集う。」


「ギャオス」


俺の言葉もギリーは理解できる。


こいつと俺は血が繋がっている。

根拠はないが俺の脳味噌がそう告げる。


「あそこを見ろ。でかい塔が建っているだろう。あそこがヘイサムだ。でかい街だから人間はたくさんいる。おまけに強い奴らもな。」


「ギャオオオン」


「‥‥いつも以上に張り切ってるじゃねえか、ギリー。今日は良い悲鳴が聞けそうだ。」


俺は、いつも以上の期待と共にギリーを急降下させる。俺の重心の移動でギリーは移動する。言葉は無くても、俺たちは一心同体のように動きをリンクさせることができる。


さぁ、狩りの始まりだーー。



ーー英雄の街、ヘイサムーー


「あー今日も疲れたぜー。だが今回の討伐報酬はなかなか高い。いい依頼だったぜ。」


「そうだな。だが、報酬が目当てじゃないんだぞ?俺たちはこの世界の人々を守るハンターだ!それは忘れるなよ?」


「あぁーあ、またこりゃ熱心だね。わーかってるよ!俺たちはハンターだ、ハンター。」


ドコオオオオオン

大きな音と共に地響きが起こる。


「うぉ、なんだ!?」


「喰人竜だ!ギリアスが襲ってきたぞおおお!建物の中へ隠れろ!はやく、はやく!」


「喰人竜!?あの噂に聞く竜のことか!?」


ドゴオオオオオン

また大きな音が聞こえてきた。


「ギャオオオオオオオオ」


先ほど2人で喋っていたハンターは急いで外に出る。

すると、頭上には一匹の漆黒の身体を持った竜がこちらを見下ろしていた。


ーーギリアスーー


「見つけた。ギリー、あれがハンターだ。」

ギリーは、俺の言葉を聞き、ハンターに目を向ける。


「喰らえ!」

楽しいショーの始まりだ。


ギリーの背中をしっかりと掴む。人を狙う時のギリーは制御不能、俺は振り落とされないように、背中に乗るだけだ。


「こっちへ来たぞ!」


ギリーは、武器を構えたハンターのもとへ急降下し、大きな牙の生えた口を大きく開ける。


「ギャオ、グルゥ、ガアァア」

ギリーは興奮を抑えきれず、何という意味かも分からない声をあげ、ハンターに噛み付いた。


「うがあああ!」

噛みつかれたハンターが大きな悲鳴をあげる。


いい悲鳴だーー。

俺は思わずにやけてしまう。

もっとだギリー、喰いちぎれ!


ギリーは俺の心の中を理解したかのようにハンターの右足を勢い良く噛みちぎる。


「うあああああああ!」


「レオーーーンッ!!」


ギリーはそのまま右足を呑み込み、近くにいたハンターに目を向ける。


ギリーは一気にハンターとの距離を詰め、右前脚の爪で斬り刻んだ。


「うぐああああ!」

ハンターの力のない悲鳴が、響き渡る。


「もっとだ、もっとだ!もっと悲鳴を上げろ、人間共がぁ!」

俺は感情を抑えきれず、言葉でギリーの勢いを倍増させる。


ギリーは、息絶えたハンターをゆっくりと味わいながら食べ干した。


そして次の標的を探し出す。

俺も周りを見渡したが、人の気配が無かった。


遠くに逃げたかー。


ドン、ドン、ドン、ドン。

だが、そう思った瞬間、周りから大きな音が鳴り響いた。


そして、俺たちの周りに爆発を起こす。

これは、砲弾。

この街のハンターが反撃を仕掛けてきたようだ。


「ギャオオ」

ギリーが砲弾の一発を受け、態勢を崩す。


「飛べ、ギリー!」

俺の掛け声とともにギリーは両翼を広げ、上空に飛ぶ。


空にいれば、砲弾など怖くない。

まだ、俺は満足していない。

悲鳴を聞かせろ、人間ども。


俺は、建物の上で砲弾を撃つハンターを見つけた。ハンターと目が合う。ハンターの目は絶望に犯されているのがよく確認できた。


「あの建物の上だ!」


ギリーは、その建物に目を向け急加速した。

そして、両前脚で建物の上にいた兵士を掴んだ。


「うわぁ!た、た、すけてくれえええ!」

ギリーに掴まれたハンターは、絶望の悲鳴を上げる。

ギリーはそのまま飛び続ける。


「お、おい!竜の上に乗っているのは人間だろ!?なぜ同じ人間を、う、うわぁぁぁあ!」


ギリーはハンターを頭上に放り投げ、落ちてきたハンターをそのまま大きな口で呑み込んだ。


「ギャアアアアアアア」

ギリーの喜びの雄叫びがヘイサムの街に突き刺さる。


空にいるため、砲弾は無意味となり、音も止んだ。俺たちの独壇場だ。


ギリーは大きく旋回すると、建物の上を探し出した。


そして、建物の上に隠れている3人のハンターを捉えたーー。


「ギャオオオオオ」


「見つかった!建物の中へ入れ、はやくしろ!」


もう遅いーー。


「うわぁぁぁああ!」

「たすけてえええ」

「ばけものめえええ」


ギリーは建物の上に強引に着陸し、3人を食いちぎり、細かく刻んだ後、口に運んだ。

建物はギリーの着陸の衝撃に耐えきれず崩れ去っていった。


「ギャオオオオオオオン」

ギリーの満足そうな様子がうかがえる。


「俺も大満足だ。ハンターの無力さってやつを教えることができただろう。悲鳴も十分聞こえた。いい夢を見れそうだな、ギリー!」


「ギャオオオオ、ギャオオオオオ」


そして、俺たちは英雄の街ヘイサムを後にした。


ーーグルーン荒野ーー


ギリーは地上にゆっくりと舞い降りた。

俺はギリーの背中から飛び降り、地面に着地する。


ここは、グルーン荒野。

俺たちの寝床である。ここには一軒家があり、俺はここで、ギリーはこの一軒家の周りで夜を過ごす。


「ギリー、撃たれた所は大丈夫か?」

俺はギリーの横腹を確認する。


「ギャオスッ」


「ギリーが傷を負うはずかない、か。」

余計な心配をした。ギリーの体躯には傷ひとつ無かった。


「明日、俺は街に出掛ける。ギリーのために良い情報を持ってこよう。」


「ギャオッ」

ギリーはその言葉を聞き、嬉しそうに返事をした。


そして俺は家に入った。

ここの家には誰も来ない。だから好都合。

俺が喰人竜の背中に乗っているなんて、誰も知らないし、思わない。


だから、俺は安心して街に出掛けられる。


明日は、色々と調べたい事を調べに行く予定だ。ギリーも今日の一件で飢えの心配は無いだろう。


今日も極上の悲鳴が聞けた。

俺の人生はギリーと悲鳴で成り立っている。

幸せな人生だ。


次は、どこをーー。





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