―Ⅶ―
世界は黄色い光に包まれていた。光に当てられた人々の異様に長い影。その光景だけでも亜奴田は恐怖を感じるのだが、人々は光に気付かない。
「ねえねえこの光何かおかしいと思わないのか!」
と話しかけても、人々は変な人に絡まれたと思いながら冷たく振り払うのみである。
どうすればいいのだ。と思いながら空を見つめる。空も黄色い光に照らされている。その空から何かが迫ってくるのが見えた。鳥、白い鳥、鳩だ。
鳩は亜奴田の手の平に上手く納まった。そして突如命を失い横たわる。亜奴田は手から何かが伝わるのを感じ、悲鳴を上げそうになった。いったい何故なのだ。
亜奴田は鳩を埋葬するために公園を探し回った。この都会には公園は一つしかない。その小さな公園で、彼はスーツが汚れるのを疎まず土を掘り続けた。そして鳩を埋めた。
気が付いたら黄色い光は無かった。鳩の犠牲によって報われた・・・世界の滅びを免れたのかもしれない。彼はそう思った。きっとうちゅうじんの言う救世主のおかげだったのだ。
そしてぼろりぼろりと涙を流す。
*
泥だらけの姿のまま、亜奴田は歩き回る。正常な都会だが、時々またあの黄色い光が脳内にフラッシュバックする。それは過去の光景か未来の光景か、彼にはもうよくわからない。少なくとも人々は黄色い光に気付いていない。その人々の中のこじゃれた鞄を持ったごく普通の女性と目が合う。その女性を見て、彼はある一つの光景が浮かび、ハッとする。思わず叫ぶ。
「あなたが、救世主なのですか!」