―Ⅳ―
その時、亜奴田は砂漠にさ迷っていた。今までも錯乱して記憶がよく分からなかったが、いつのまにか、遠くに行ってしまったらしい。どこなのか皆目見当がつかないが、光だけは見える。黄色い光。
その光は謎めいた建物から発せられていた。楕円形で、細い四脚で支えられている。まるでそれは、今設置されたかのような安易で弱々しい作りだ。その建物から出てくる者を見て、亜奴田は息を飲んだ。こいつは人間じゃない…
「うちゅうじんだ…」
すると彼らは、「ようこそ」と手招きした。恐る恐る近づくとうちゅうじんは話をした。
「君はここに来ることは分かっていた。私は他の世界より派遣された者。この世界は光に包まれて死ぬ。」
亜奴田は理解ができなかった。
「なぜだ!まさか光はお前らが出したのか!」
「それは無い。ただ、大いなる意思による、避けられない予定事項だ。」
「じゃあ、この世界は終わりなのですか!」
「いや、それを奪回する救い主が存在する。君は救い主を見つけるために過去と未来を同時に生きる者となり、全てを見る。君の人格は異なる二つの時間に分裂する。しかし、君は救い主を見つける。その時には名刺を渡せ。過去の自分を用いて、救い主に自分の名刺を渡すのだ。」
「どうやって…」
「すべては我々が成す。君はやり方を知るであろう。とにかく確定的な、目覚めのキッカケとなる出来事と影響を救い主と周辺に与えなければいけない。ここにスイッチがあるだろう?」
うちゅうじんは紐に繋がれた青白い丸い物を取り出して言う。
「これは二つの作用がある。一つはさっきも言ったように、君が“預言者”となって過去と現在と未来を生きる者になる。もう一つは君が確実に事を成した時、救世主が自分自身を目覚めさせる。いずれも君の選択に委ねられる。」
「拒否すれば?」
「世界は滅びるが、君はこれらの出来事を忘れ、しばらくは生きていける。大義に生きるか、我が身可愛さを優先するか、選択しろ。」
亜奴田は悩んだ。もしスイッチがその通りに作用すれば、その大いなる責務によって今までの社会を生きるどころでは無くなる。だが、自分の行動が世界の命運を担うのだ。特に、自分以外の仲間や家族が関わることを思うと…