7月27日 水着
「・・・くぁ・・・よく寝た~・・・」
爽やかな朝。今日は昨日よりは涼しいらしいし、ちょっと出かけるのもいいかもしれないな、とそこまで考えた所でベッドの隣にちょこんと座るルナに気付く。
「・・・ルナはそこで何してるの?」
__ねぇねぇ、レイに頼み・・・というか話があるんだけど・・・
尻尾を振り、小首を傾げながら声をかけてくるルナ。かわいい・・・けど、いやな予感しかしない・・・!
「・・・先に聞くけど、ボクに拒否権はあるの?」
__ないっ!
狼の状態で器用に笑みを浮かべるルナ。・・・ますますいやな予感・・・
__で、話って言うのはね、明日やるって言う水着美女コンテストのことなんだけど・・・レイの名前で勝手に応募しちゃった♪
「えぇっ!?ボク、水着なんて持ってない・・・って、それ以前に水着なんて着たくないし、ましてそれで人前にでるなんて絶対イヤだよ!?」
__もう応募しちゃったよ?
「えと、えと・・・じゃあルナがでればいいんだ!うん、見た目はそっくりだからそれでいいよね!」
うん、我ながら名案だね!目の色は違うけど、そこまで見る人はいないと思うし・・・
__え~・・・じゃあ、すっごく過激なので出場しちゃおうかな~?
「それはダメ!町で変な目で見られるの、ボクになるから!」
ルナなら本当にやりかねないよ・・・!
「はぁ・・・仕方ない、水着買いに行こうかな」
「では、私もついていきましょうか」
「うん、頼んでいいかな」
ミゾレが一番まともなセンスをもってる気がするし・・・
「ボクも行くっ!」
いつの間にか人型になっているルナ。いつも思うけど、行動が早いな・・・
「じゃあ、行こうか」
「その前に、着替えてください」
「ぅん?」
ミゾレに止められるけど、今の服装はジャージ。この格好で出ても問題はないと思うけど・・・
「レイも今は立派な女性です。外出時には多少おしゃれというものを気にするべきです」
「ジャージでいいじゃん・・・」
「いけません。服は用意してあるので、着替えてからでかけましょう」
そういって渡された服は白いシャツとピンクのスカート。
「せめてズボンに・・・」
「だめです」
ミゾレの気迫に押されてしぶしぶ渡された服を着ることに。ちっちゃい時はそんなに怖くないのに・・・・・はぁ・・・なんでボクがスカートなんかを・・・スカートは制服だけで十分だよ・・・
「わぁ、ショッピングモールって広いんだね~♪」
結局、スカートにシャツといった格好でショッピングモールまで来たけど、ルナがはじめてのショッピングモールに興奮して走り回ってる・・・
「ルナ、あんまりはしゃがないでよ。ほら、衣料品売場はこっちだよ」
子供じゃないんだから、走り回らないでよ・・・
「ふふっ、姉妹のようですね。ルナが妹でレイが姉と言ったところでしょうか」
「ミゾレも笑ってないでルナを止めてよ・・・」
見た目はほとんど同じなんだし、中身も同じくらい落ち着いて欲しいものだと思う。ルナにはもう少し落ち着きを持ってほしいよ・・・
そうこうしているうちに、衣料品売り場に着き、早速水着を選ぶことに。
「レイ、これどうかな?」
「それ、競泳用だよね・・・しかも高いし」
ルナが持ってきたものは競泳タイプの水着。こんなのだとボディラインがしっかりでちゃうじゃん!・・・じゃなくて、そんなもの着てコンテストってのはちょっと・・・できれば露出が少ないのが良いな。
「じゃあこっちは?」
「それは普通のスクール水着じゃん・・・さっきのとあんまり変わらないし、小学生みたいだからイヤだよ」
さすがに小学生みたく見られるのはちょっと嫌だよ・・・
「こういうのがいいと思うんだ」
ボクが選んだのはパーカーのようなデザインのもの。値段はそこそこするけど、これならほとんど肌はでないしボディラインもちゃんと隠れる。完璧だね!・・・決して発育の悪いこの身体を気にしてるわけではない。うん、肌がでるのが嫌なだけだ!
「え~、そんなのじゃ水着っぽくないじゃん・・・。これなんてどう?」
「絶対ヤダっ!」
ルナが代わりに、と持ってきたものは・・・なんというか、すごく過激なもの。そもそも、ボクにはサイズが合わない気がする・・・大人用だし。誰があんなもの買うんだろ?
「では、これならどうでしょう。レイに似合うと思いますが」
ミゾレが持ってきたのはセパレートタイプの水着。おなかとかは出るけど、比較的露出の少ないタイプに見える。まぁ、ルナが持ってきたものに比べたらましかな・・・。でも、さっきのパーカーの方が・・・
「実は、すでに会計を済ませてありますが」
「えぇっ、いつの間に!?」
「レイがルナと言い争っている間に、です。安心してください、サイズはしっかり確認済みですので」
ミゾレの目が光ったのは気のせいってことにするとして・・・むぅ・・・。買っちゃったのを着ないのももったいないし・・・仕方ない、この水着を着ようかな・・・。
「ミゾレ、作戦成功だね♪」
「えぇ、ルナの陽動、見事でしたよ」
ミゾレとルナがそんな会話をしながらガッツポーズを取ってることに、葛藤中のボクは気付かないのであった
レイ、計略にひっかかる、のまき。
水着大会の前に、こんなエピソードはどうかな~、と・・・。問題などありましたらお知らせください