1月29日 「光玉」
平日ど真ん中、午前最後のの授業中。基本的に、授業の内容はもう理解できているものだけど、しっかりと受けている。自分で言うのもなんだけど、ノートも綺麗にとっているし、授業態度も基本的には真面目な方だと思う。多分。
いつも通りの授業だけど、違和感…というより、明らかにおかしい。ボクが困惑している原因、それは…先生が黒板を書いている近くで、カラフルに色を変えるバレーボールくらいの光の玉がふよふよと浮いていること。
「…何、アレ…」
朝からそこにあるそれが気になって、授業に身が入らない気がする。…元々集中力はそんなにないけど。アレ、精霊か何かだよね。なんでこんなところにいるんだろ?もしかして、ルナが連れてきたとか…?
無いとは思うけど、芦屋さんがアレを滅するとか言い出さない内にどうにかしないと、かな。江ノ島さんも困惑してる…かどうかは知らないけど、迷惑してるかもだし。
「あのさ、アレを連れてきたのってルナ?」
授業が終わって、お昼休み。芦屋さんにアレは妖じゃない(多分だけど)ことを説明してから、さっそくルナを問いつめてみる。
「アレって、さっきからレイの後ろにいるやつのこと?」
「え・・・わっ!?」
言われて振り向いてみると、すぐ目の前に光玉が浮いていた。…特に害はなさそうだけど、心臓に悪い…。
「ええ、と…で、コレはなに?」
「さぁ…?ボクが連れてきたわけじゃないし、なんだろーね」
ルナが持ってきたわけじゃないのか…。じゃあ、なんでこんなものが入ってきたんだろ?
「うーん…コレ、どうしよう?」
「さぁ…?浮いてるのが気になるなら、鞄にでも押し込んじゃえば?」
得体の知れないものを鞄に押し込むのはちょっと…でも、放って置いても邪魔だし、他の人の迷惑か…とは言っても、そもそも見える人は少なそうだけど。
「あっ」
「ん?どうかしたの?」
ルナが指さす先に視線を向けると、鞄にきれいに収まっている玉が。…ええと、どうなってるの…?
「勝手に入っちゃったみたいだねー。レイ、気に入られてるのかな?」
「得体の知れないものに好かれても嬉しくない…」
まあ、これで午後からの授業に集中でき…そうにないな。アレがなんなのか、とか気になるし…。
「…はぁ…」
「いいじゃん、好かれるのは良いことだよ!多分!あ、この唐揚げもらっていい?」
「ルナの方にも入れたはずだけど…って、勝手に持ってかないでよっ」
結局半分くらい持ってかれた…ボクはそんなに量食べなくても平気だからいいんだけど。ルナの分は多めに作ってるはずなんだけど、いつも誰かからおかずを貰ってる気がするな。量、もう少し増やした方がいいのかな?入れたら入れただけ食べちゃうような気もするけど…
「とりあえず、コレはここに入れておくしかないかな…」
「レイのことが好きみたいだし、危害はないんじゃないかなー」
ルナはいつも暢気だな…厄介事にならなきゃ良いけど。
午後の授業は何事もなく終わり(集中はできなかったけど)、光玉のことが気になるらしい芦屋さん(と、芦屋さんに引っ張り回されてるみたいな稲荷山くん)をはぐらかして、後ろに玉を連れて帰宅。早足になってみたり、ゆっくり歩いてみてもしっかりついてきてたけど、実は妖怪とかでボクが呪われてる…とかじゃないよね?やっぱり芦屋さんに祓ってもらったりした方が良かったかな…でも、短気な精霊とかだったら芦屋さんに迷惑がかかりそうだし…
「はぁ…ジーヤに聞けば何かわかるかな?」
「お呼びですか?」
「…もういちいち驚かないよ?」
いつの間にか背後にたっていたジーヤに声をかけられる。なんか、もう…慣れた気がする。ルナが舌打ちしたのは気のせいかな…?
「ええ、と…コレのことなんだけど…」
「あぁ、こちらですか。コレは光玉と呼ばれる、精霊の卵ですね。どうやらお嬢様を親と決めたようです」
「…へ?」
「わ、親だって!レイ、よかったね~♪」
ええと、つまり…どういうこと?親?ボクが?刷り込みみたいなものなのかな…?
「本来精霊の卵は同じ性質の精霊を親とするものでございますが…お嬢様はよほど気に入られているようですね。人でありながら精霊の親となるのは非常に希なことですよ」
「親って言われても…どうするの、コレ?」
育てられる自信もないし、そもそも精霊の生態って…?
「親とは申しましても、実際にすることは安全の確保…卵を保護するだけですよ。私どももいますので、お嬢様は卵をつれ歩くだけで問題ございません」
「そうなんだ…?まぁ、捨ててくるわけにもいかないし、仕方ないか…」
「卵か~。何が生まれるんだろうねっ?」
ルナははしゃいでるけど、大丈夫なのかな……厄介事にならなければいいけど…
パッセロ様の「曖昧MEなうろな町生活」より名前だけですが江ノ島 樹さん、寺町 朱穂様の「人間どもに不幸を!」より芦屋 梨桜さんをお借りしました!問題点などありましたら連絡お願いします!
当分の間、レイ君は光玉を連れ歩くことになりそうです。




