【うろ夏の陣】8月8日 百鬼夜行、精霊バージョン? ~禍々しくはないよ!~
「はぁ…」
最近、ため息をつくことが増えてるような…
__レイ、具合が悪いんですの?
__調子が悪いなら、無理はしないでください
隣を歩いているミゾレと、上を飛んでいた蒼龍が顔をのぞき込んでくる。
「そういうわけじゃないけど…」
__腹がヘってんのか?
__テメェじゃあるまいし、そりゃねぇだろ、オイ
後ろでケンカ(?)する茶色の猫と朱雀
__そういえば、お腹空いたな~
__さっき食べたばかりじゃろ…
__ルナ様、ビスケットでよろしいですか?
__わーい♪
__何故持ち歩いてるのじゃ!?
前を賑やかに歩く銀狼、玄武、白虎
「…はぁ…」
__レイ、貴方の言いたいことはわかるワ。ホント、なんで勢ぞろいしてるのかしらねぇ…。ま、諦めてがんばりなさいな
人事のように言って楽しそうに笑う雲猫。事の発端は夕食の時だった。
「むっ、邪気を感じるっ!!」
「ルナ様、食事中は立ち上がらないようにしてくださいませ」
勢いよく立ち上がり、ジーヤに窘められるルナ。
「たしかに、邪気を感じるのぅ…ここからは遠いようじゃが、少し高位のものじゃな。」
パンを頬張りながら冷静につぶやくシルフィ。…あ、ジーヤに怒られてる
「最近、邪霊が多いですわね…」
「そーだなー…手応えのない奴ばっかだけど」
「久しぶりに暴れられそうだな、オイ!」
「…貴方、邪霊に取り込まれてたわよね?」
「私は他人のことを言えませんが、突っ込んで行くのは得策ではないと思います」
いつもより賑やかな食卓。どういうわけだか、みんな来てるんだよね…。
「お嬢様、食事が終わりましたら邪霊の浄化に向かいましょう」
「…はぁ…やっぱり、そうなるよね…」
ここ最近、家のまわりに邪霊が出ることが多い気がする。こっちから向かうのははじめてだけど、どうせ放っておいたら家まで来ちゃう気がするし…
「しかし、場所がわからぬではないか。向こうから向かってくるのを待った方が良いのではないかの?」
ボクもそう思う…まぁ、遅いか早いかだし、この時間なら外に出ても大丈夫な気がするけど。
「場所は特定してありますぞ」
「何故特定できるのじゃ…」
「老人の知恵と言うものですな」
髭を触りながら、いつものようにほっほっほ、と笑うジーヤはボクの知ってる精霊(ジーヤは聖霊だけど)の中で、一番謎が多いと思う。
「…妾もそれなりの齢なのじゃがのう」
「ジーヤって、ただ者じゃないって感じだよね…」
「でかけるなら、ボクもついてく!」
「では、私たちも準備しましょうか」
「結局、みんなついてくるんだ?」
と、言うわけで精霊をぞろぞろと引き連れながら夜の町を歩くことになって、今に至る。1人か2人ついてくれば十分だと思うんだけどな~。
__お嬢様、邪霊はこの辺りに潜んでいると思われます。ニンゲンが刺激してしまったようで、殺気立っているようでございますね」
いつも通りの表情(亀だから表情はわかりにくいけど)でさらりと言うジーヤ。すっごく嫌な予感がするんだけど…
「殺気立てるって…大丈夫なの?」
__ええ、お嬢様は私どもがお守りしますし、邪霊は聖気に弱いということは変わりありません。ただ、多少急いだほうがよろしいかもしれません
__レイ、学校にいた人のニオイがするよ!邪霊と鉢合わせしてるかも…
「ええと、ジーヤ、邪霊の位置はわかる!?」
__ここより南西、次の角を曲がってすぐでございます
ジーヤが言い切る前に走り出す。今までは、家まできた邪霊を退治していたくらいで、こんな事態は初めてだ。
__オイ、丸腰じゃ話にならねぇ。これに聖気を纏わせりゃ武器になんだろ。
「っと…ありがと!」
クレイから投げ渡された石(猫の姿で器用にくわえて投げてくれた)に聖気をまとわせつつ、この体になってから上がった瞬発力を活かして全力疾走。角を曲がると、少し離れたところにに邪霊・・・と、それにお札のようなものを投げつける人の姿。
__邪霊にあの類のものは効かないだろ…やべぇんじゃないのか?
「とにかく、助けないと!」
__仕方ない、妾が手伝ってやるぞ
石を握りなおし、走る。邪霊と戦っている人はお札が効かないと見てか混紡のようなものを取り出して邪霊にむかう。
__レイ、投げるのじゃ!
シルフィの合図に、ほぼ反射的に体が動く。背中を反らして大きくふりかぶり…
「いっけぇええええええっ!!」
全力投球。邪霊から少しそれた石は途中で不自然に角度を変えて命中、ガラスの砕けるような音とともに邪霊の体が消える。
「命中!」
__そなた、外してたじゃろ…世話が焼けるのう
シルフィが何か言ってるけど、気にしない。
__レイ、尋常じゃないスピードでしたわね…
__投げるとき、いつも叫んでるよね~
__お嬢様、お見事でございました
追いついてきた精霊たちが口々に声をかけてくる。思ったより早く走れてたのかな。さすがにちょっと疲れたな~…
「如月さん?」
声をかけられて振り向くと、見覚えのある顔。たしか、授業中に妖気がどうこうって言ってた…
__お嬢様、この方は芦屋様でございます。
名前を思い出そうと思考を巡らせたところに、ジーヤがそっと耳打ちしてくれる。…なんでジーヤが知ってるんだろう?
情報交換(?)をした後芦屋さんと別れ、夜道を精霊達と一緒に歩く。芦屋さんは陰陽師で、この町に潜んでいる妖狐を対峙するために来たスパイだと言っていた。自分でスパイって言っちゃったら意味が無い気がするんだけど・・・それはいいとして、最近妖怪が増えているらしい。その時期が邪霊が増えてきた時期と重なっていて、誰かの思惑なんじゃないかって話みたいだけど・・・。人為的に精霊を邪霊にすることができて、それを持った”なにか”がこの町に来ているんだとしたらルナ達も危ないのかもしれない…
__妖怪か~…言われてみれば、この町って少し変な気配がするよな!
__今更ですの?とっくに気づいているものと思っていましたわ。
__妖怪だろうがなんだろうがぶっ倒すだけだぜ、コラ!
チラリと様子を見ると、いつも通り(?)、元気に話してるみんな。いつも助けられてばっかりだけど、もしみんなに危険が迫っているのだとしたら、守りたい。ボク自身には特別な力なんて無いけど、少しでも力になれたら、と思う。
__レイ、どうしたの?難しい顔して。せっかくかわいいんだから、そんな顔してるともったいないよっ
いつの間にか隣にいたルナが、ひょいっと器用にボクを背中に乗せる。
「わっ……かわいいって言ったって、ルナも人型の時はほとんど同じ見た目じゃん…」
大きな銀色の狼は、近くで見ると一層頼もしく見えて…それに比べてボクは、元々逞しいとは言えなかった体格から、今は見るからにひ弱な女の子の体になって、体力も落ちている。ボクがどんなに頑張ってもルナのような力は出せないけど、こうして精霊達と一緒にいられることを無くさないためならできる限り頑張って、みんなを守りたいな…。そんな決意をしつつ、ルナの背中で睡魔に身を任せることにした
__お嬢様はお休みになられたようですね。
__うん、やっぱり無理してたのかな…
__当たり前じゃろ。普通、ニンゲンがあのような速度で走れるわけが無かろう
帰り道、背中の上でいつの間にか眠ってしまったレイを落とさないようにゆっくりと歩く。
__普段は無意識のうちに無理のない程度に押さえているみたいだけど、レイも人間離れした身体能力だよな
__でも、身体はニンゲンのもの。無理を重ねたら身体が耐えきれないかもしれませんわ。
__レイが無理しなくてもいいように、私たちが気を配らなければいけませんね
__コイツ、頼りねぇからな。しょうがねぇからオレ様も見ていてやるぜ
レイを起こさないよう、小声で会話しながら歩く。規則的な寝息をたてる背中の温もりは、とても小さくて、この温もりをなくさないにボク達がしっかりと守っていなきゃ。と決意を新たにしてゆっくりと家まで歩いた
寺町 朱穂さまより芦屋さんをお借りしました~。問題等ありましたら修正しますので、連絡お願いします!
更新が遅れてしまい、申し訳ありません!