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【うろ夏の陣】 8月5日 実地演習 ~鼠大繁殖?~

夏の陣、一話目です~

__今日は実地訓練に行くのじゃ!


「実地訓練?」


お風呂上がり、リビングでくつろいでいると遊びにきていたシルフィが唐突に口を開く。


__うむ、そなたもクレイやフレイとの訓練だけじゃと飽きるじゃろう?実際に邪霊を探す方法等も教えねばならぬし、そろそろ頃合いかと思うての。


「ええと…その実地訓練って、明日からやるの?」


今日はもう夜だし、この時間に出歩くと補導されると思う。中学生が出歩くにはちょっと問題がありそうな時間だし…。高校生(男だった頃の姿)ならセーフ・・・でもないか。ともかく、今の見た目じゃ小学生にみられることはあっても高校生には見えないよね。実際通ってるのは中学校だし…


__そんなわけ無かろう。邪霊が活動するのは基本的に夜だけじゃ


へぇ、この前の骸骨猫が夜にきたのも、夜にしか活動できないからってことだったのかな?


__ちょうど夜も更けてきたところじゃし、今から実地訓練に向かおうと思うが…


と、すると…昼間に町を歩いていて鉢合わせ~ってことにはならないってことかな。夜だけ気をつけていればいいなら少しは楽…ってこともないか。


__レイ、聞いておるのか?


「聞こえてるよ…。邪霊が夜にしか活動しないのはわかったけどさ、夜に出歩いてると補導されるかもしれないし…」


__なんじゃ、そんなことか。「それなら妾がついて行けば問題なかろう」


人型になって胸を張るシルフィ。でも人型のシルフィの見た目って、どう見ても子供だと思うんだけどな。がんばっても5、6歳くらいだし、保護者には見えないような…


「妾では問題なのかの?そなたより年上じゃし、力もあるのじゃが・・・」


「そういう問題じゃなくて…人間のルールでは夜に子供が出歩くと問題があってね…。シルフィも見た目は子供だし、せめて誰か大人に見える人がいないと。」


「そういうことであれば(わたくし)がお供いたしましょう。」


「うわぁっ!?」


いつの間にか背後にいたのは、黒のスーツを着た初老の男の人。


「おや、驚かせてしまいましたか。申し訳ありません」


「ええと…ジーヤ、だよね?」


「はい、その通りでございます。お嬢様の前でこの姿になるのははじめてでございましたね」


なんというか…すっごいイメージ通りって感じだな~。いかにも”じいや”って雰囲気。


「ジーヤがついてくる必要も無かろう。妾一人で十分じゃ!」


「シルフィ様、お嬢様のお話を聞いておりませんでしたか?お嬢様とシルフィ様だけでの外出では不都合があるので、私もついて行くと言ったのでございます」


「ええと…こんな時間に外に出るの、嫌なんだけど…」


「お嬢様、これは必要なことなのでございます。邪霊に対抗する力を身につけ、万が一私どもがお側にいられないときにはご自身の身を守れるよう…」


「わかった、わかったよ…あと、お嬢様って言うの止めて欲しいんだけど」


「それはできない相談でございます。奥様よりそう呼ぶように言われております故」


母さん…なんでそんな指示を出したんだろ?


「準備は良いのかの?いや、準備なんて必要ないじゃろ?早く行くぞよ!」


シルフィはなんで張り切ってんだろ…?


「場所は…う~む…海岸なんてどうかのう?」


夜の海岸って暗そうだし、できれば行きたくないな…怖いわけではないからね?


「シルフィ様、夜間の海岸は足下が暗く危険でございます。万が一お嬢様が海に落下するようなことがあれば大事ですので、森等にしたほうがよろしいかと思いますぞ」


おぉ…ジーヤ、説得力があるな~。


「ぐぬぬ、仕方ないのう…今回は森にしようかの。まあ、どこにするにしろ都合良く邪霊がいる可能性は薄いがの。」


「そうなの?」


しゃべりながら玄関に向かうシルフィについて行きながらあいづちを打つ。


「うむ。邪気に触れた精霊が邪霊になる、ということは以前話したじゃろ?」


覚えてなかったことは言わないことにして、おとなしく頷いておく。


「邪気は基本的に一定の場所にしか溜まらぬ。そのような場所に突っ込むような阿呆は・・・まぁ、少しは居るが普通は居ないじゃろ」


てことは、クレイって…うん、考えないでおこう


「故に、邪霊はそう多く存在せぬはずじゃ。それが都合良く現れるようなこともそうなかろう…」


と、言いつつシルフィが扉を開けると、家の前に並ぶ大量の骨鼠…って、え?


「おや、邪霊でございますね」


いつもと変わらず落ち着いた様子で呟くジーヤ。


「ちょっ・・・邪霊はそうそう居ないんじゃなかったの!?」


ぱっと見えるだけでも数十匹。相当な数が家の前に居座っているように見える。骨でできてることもあって、すっごく気持ち悪い…


「うむ、演習には丁度良いのう」


「シルフィが集めたの!?」


「妾が知るわけが無かろう。邪霊は本来群れることがないはずなのじゃが…」


「じゃあ、何でこんなに群れてるのさ…て、わぁ!?」


一斉に飛びかかってきた骨鼠を、とっさに壁を創って弾き返す。びっくりした~…


「お嬢様、お見事でございます」


「うむ、修行の成果が出ておるのう」


「それはいいけど…この数、どうするの?壁にぶつかったくらいじゃ浄化しきれてないみたいなんだけど…」


壁の向こうの様子は見えないけど、骨鼠がぶつかっているのであろう激突音は弱まらない。


「あれだけの数が相手となると、ちと面倒じゃのう…仕方ない、妾も手伝うとするかの」


「お嬢様、魔力と聖気の複合についてはご存じでしょうか?」


「ええと…はじめて聞くけど…」


言いかけたところで、創った壁に亀裂が走る。うわっ、思ったより脆かった…?


「ええい、説明しておる暇はない!とにかく、実践してみればわかるじゃろ!!レイ、妾の手を取り、妾の言う通りに復唱するのじゃ!」


有無を言わさず手をつかまれる。


「駆ける疾風、輝く力、共に渦巻き、汚されしモノを浄化せよ!」


「ええと…?」


なんか、すごく…恥ずかしいというか、なんか嫌なんだけど…


「時間がないぞ、早くするのじゃ!」


壁の亀裂が広がる速度が増しているように見える。背に腹は代えられないってやつなのかな…


「ええと…駆ける疾風…輝く力、共に…渦巻き、汚されしモノを浄化せよ」


言い終えるのと同時に体から力が抜けるような感覚、一瞬遅れて壁が”内側から”砕ける。壁の向こうに見えるのは体の端から崩れながら、巻き上げられるように吹き飛んで行く骨鼠。浄化、はできたのかな?


「レイ、そなた何故棒読みだったのじゃ?」


「え?だって、ジーヤがカンペを持ってたから…」


一発で覚えられるわけもないし、助かったけど…


「「どこから持ってきたの」じゃ?」」


「役に立ちそうなモノを持ち歩く癖がありましてな」


ホッホッホッ、と笑いながら頭を掻くジーヤ。カンペって持ち歩くようなモノなのかな?


「さて、気になることもございますがお嬢様もお疲れでしょう。お嬢様はお休みになった方がよろしいかと思いますぞ」


「ええと、その前に、さっき浄化した邪霊の中の玉みたいなの、砕かなくていいの?」


この前は砕いたら中から精霊が出てきたけど…


「あの高さまで飛ばせば勝手に砕けるじゃろう。竜巻に聖気も含まれていたしの」


シルフィの説明に納得して、部屋に戻ることに。なんか、すっごく疲れた…。













「レイは寝たかの?」


「ええ、お休みになられましたぞ」


深夜、シルフィとジーヤはレイが眠ったことを確認してから話し合いに移る。


「先の邪霊、妙じゃと思わぬか?」


どこか楽しげに語るシルフィ。


「通常、邪霊は単体行動するはずでございます。何故あのように複数で行動していたのか…見当もつきません。どうしたものでございましょうか…」


それに対し、ジーヤは案じるような様子である。二人の性格は対局にあるようで、決して不仲になるようなことのない不思議な関係である(ジーヤの性格が大きいのであろうが)


「原因が分からぬ以上、手の打ちようもないからのう。ひとまず、ここの周りに張る結界の補強くらいかのう」


「そうですね。それと、お嬢様の周囲に精霊を2人以上はつけるべきかと思います。」


「やっかいごとの予感じゃ…当分は暇をしなさそうじゃの」


そう呟き、やっかいごと、と言う割に楽しそうに笑うシルフィ。暇を潰せるものであれば何でも良いと言った様子の彼女に、暴走するようであれば止めなければなりませんね、と密かにため息を吐くジーヤであった。

明日から3日ほどお出かけするので、更新はちょっと先になりそうです。待っていただいている方が居ましたら、申し訳ありません…。

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