7月21日 新天地
雨の降る昼下がり、うろな町の北、人気のない、静かな森に"降り立つ"一人の少女がいた。年の頃は12ほどに見え、腰の下まである輝くような白銀の髪、右は金、左は青と左右色の違う瞳。その容姿は美しく、どこか世界から浮いているような……ファンタジーの世界から飛び出してきたような雰囲気を持っていた。
「ふぅ……ウェズ、雨遮ってもらっていいかな?」
唐突に、一人呟く少女。もしこの場に目撃者がいたとして、それはおかしな独り言に聞こえるだろう。しかし、少女には言葉に応じる"声"が聞こえていた。
_____はいはい……だから傘をもってくるようにいったのに。
霊感などと呼ばれるようなものをもつ人には聞こえるであろう声無き声の後、雨が少女を避けているかのように、少女の周囲の雨足が不自然に弱まる。声の主は天精霊、ウェズ。天候操作のできる高位の精霊だ。
「どうせなら周りの雨、完全に止めてほしいんだけど……」
_____それだと不自然でしょうが。大体、天気を変えると疲れますの。貴方の頼みひとつでやるなんて嫌ヨ。
「むぅ……仕方ないな……」
少女は膨れっ面で町の方に歩きだす。新たに住むことになる町に期待と不安を抱きつつ……
「ここがうろな町かぁ……」
_____やっとついたわね……レイ、貴方は方向音痴なんだからちゃんと地図とコンパスを見なさいな
「むぅ……ボクは方向音痴じゃないってば」
_____はいはい……あ、そうそう。ここからは人が多くなりそうだし、ワタシはその辺を散策してることにするヮ。この町に"見える"人がいないとも限らないからネ
「ん、了解。またあとでね~」
同行してくれた精霊、ウェズ、と別れて町に入る。ボクの名前は如月 澪。ワケあってこんな時期に引っ越すことになったんだ。そのワケを誰かに話しても信じてもらえない気がするけど…。ワケと言うのは、"性別が変わった"ということ。原因はさっき話してた精霊が関係していて……と、ややこしいことがいっぱいあって……とにかく、ボクはこれから女の子として生きなきゃならないらしい。元の町には知り合いもいて大変だろう、ということで引っ越すことになったんだ。精霊は普通、見ることができない。でも、ちょっと感覚の鋭い人なら気配を感じることができるし、たまにボクみたいに見えたり話したりできる人もいるらしい。触ったり、はっきりと姿を確認できる人はそういないらしいけど……。あ、ボクは触ったりできる方の人らしい。ちなみに、さっき話してたウェズはふわふわの雲でできた猫みたいな姿。っと、まずは家に向かわないと……。荷物は先に届けてあるはずだから…あれ?
「……家ってどっちだっけ?」
「うわ、おっきな家……」
町中をさ迷い家を見つけたとき(途中、何人かの町の人に道を尋ねたりした)には日がくれていた。新しい家はとても大きく、ウェズと二人で住むには広すぎる気がした。まぁ、大きくて困ることはないし、いっか……。結局、この日は夕食と荷物の整理、入浴を済ませて寝ることにした……
短くてごめんなさい……これから少しずつ長いものを投稿……できるように頑張りたいと思いますっ