第四話 裏切り
次の日、机の上にあったはずの手紙はなくなり、
手紙の置いてあったところには、
光輝く羽があった。
「やっぱり、お兄ちゃんだったんだ───…」
私はその羽を持つ。
次の瞬間。
羽は解き放たれ、その光は窓を通り抜け、
天へとのぼっていった───…
「晴香ー!早くしないと学校遅れるわよー!」
あ、ママ帰ってたんだ。
「はーいっ!」
私は学校へ行く支度をし、家を出た。
「いってきまぁーすっ!!」
玄関のドアを開けると、そこには……
「おはよ。」
香奈恵がいた───……
「おは…よ。どう…したの…?」
「一緒に学校行こ?」
「うん…。」
いつもと変わらないはずの会話。
それなのに今では、『辛く』なってしまった。
───沈黙が続く…
……その沈黙を破ったのは、香奈恵だった。
「ねぇ晴香」
「ん…?」
「あんなヤツら、気にしなくていいよ。」
「『あんなヤツら』って?
「あんたをいじめてるヤツらだよ。」
「…どういう…こと…?」
香奈恵だって、そうじゃない…。
「私はあいつらに逆らえない…。
だから晴香を助けてあげられないけど、
心の中では『ゴメンネ』って思ってるからっ!」
私は一瞬、何も考えることができなかった。
だって…香奈恵が…
裏切った───…
「嘘つきっ!香奈恵の嘘つきっ!
あの時…あの時私たち、約束したじゃない!
『───なにがあっても、私はあなたを守る───』って!
私も約束した。
だから、香奈恵がつらい思いをしたら
、香奈恵につらい思いをさせた相手を、絶対に許さなかった。
なのに…なのに香奈恵は、裏切ったっ!」
涙が止まらなかった……
───信じてたのに……
「晴香っ!?待って!晴香っ!!」
私は走った。
何も考えずに。
ただ走り続けた。
何も…何も考えずに……
ただ、ひたすら走った───…
学校につくと、みんな私を見た。
すごく…冷たい目で。
いつも通り、ランドセルをロッカーにしまおうとすると、
「晴ちゃん!」
と呼ぶ声が聞こえた。
恐る恐る声のしたほうを振り返ると、そこには女子の大軍が連なっていた。
「やってくれるよね?」
「…うん。」
そう言うしかなかったんだ……
さか…らえない。
だって…イヤだった……
【偽りの友】であっても、そばにいてほしかった。
離れて…ほしくなかった。
私はみんなのランドセルを片づけ、急いでトイレへと向かった。
個室に入ると、一気にある感情がこみあげてきた。
助けて───…
私の瞳から溢れ出る涙は、止まることを知らない……
まるで涙腺が壊れてしまったかのように、涙が次々と溢れてくる。
私は自分の腕で包み込むかのように、自らの身を守った。
…これはいつの間にか、癖になっていた行動だった。
だって───
私を守ってくれる人は……
いなくなってしまったのだから。




