表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/12

第三話 手紙

家に帰ってきても、


誰もいない。


そっか……みんな、忙しいもんね。


両親は夜にならないと帰らない。

一日中いない日だってある。

兄弟もいないから、家には私一人だった。


……私は自分の部屋へと向かった。


すると、「カサッ…」という音が聞こえた。

そして次の瞬間、「バサッ!!」という音が家に

響いた。


(私の部屋からだっ!!)


直感的にそう思った。急いでドアを開けると、

そこには何一つ変わっていない、自分の部屋があった。


(……物が落ちたのかと思ったのに……)


少し不思議に思いつつ、重たいバッグを下ろし、

何気に机のほうを見る。


すると机の上には……




 手紙と、白い羽が置いてあった───……







机の上にあった手紙には、

『小林晴香様』と書いてあるだけだった。


「誰からだろう……?」


私は手紙の封を開け、便せんにしきつめられた文字を読む。


『晴香と会うのは初めてだね。

僕のこと知ってるかな?僕は───』



私は次の言葉に疑いをもってしまった。




『君の兄だよ。』




その言葉に────……




どうしてお兄ちゃんから手紙がくるの……?


お兄ちゃんはもういないんじゃないの?

お兄ちゃんは…お兄ちゃんは────



『きっと信じられないだろう。


だって、もう死んでいるんだから。


でもね、兄ちゃんは死んでから天国に行くことができたんだ。


しばらく天国で暮らしているとある一人の人にだけ、

手紙をだすことができる。


その一人を晴香、お前にしたんだ。


晴香に会いたい、そう思っていたからね…。


晴香、お前と話すことができてうれしいよ。』



最後には、兄の名前である

『小林隼人』

の文字が書いてあった。


私は手紙と一緒に置いてあった羽を見た。

真っ白で光り輝いていた。


まるで…天使の羽のように……


私は兄が書いた字を、必死に探した。

そうすれば本当に兄が書いたのか、それとも家族が書いたのか、

わかるから……


「あった……」


それは、兄が書いたノートだった。

まだ一年生のときの字で少し幼いが、

便せんに書いてあった文字と、くせが同じだった。


文字と文字の間が等間隔であくこと。

筆圧が強いところもあれば、弱いところもあって……

そして、何よりも兄らしかったのが、

やさしい雰囲気を放つ、綺麗な文字。


「お兄ちゃん…だぁ……」


私の目に、涙が溢れてきた。

私は兄のノートと、私宛てにきた手紙を胸に抱きしめた。



すごく…うれしかった……



私はすぐに返事を書いた。


『私もお兄ちゃんに会いたかった…。

会ってたくさん話したかったよ。


まるで夢みたい!

すっごくうれしい!!


お手紙、本当にありがとう!


お兄ちゃんのことは、パパやママから聞いてたよ。


だから会いたかったんだ。

ずっと、ずっと────……


本当に会えてうれしい!


…これからも手紙…できるよね?』



私は手紙を通して、兄と会っている気分になっていた。

空の遥か上にいるはずの兄と、

会っている気分に……


この手紙がこれからもできるなら、毎日が楽しみなる。


どんなに寂しくても、辛くても、この手紙一つで、幸せな気持ちになる。



だから…だからこれからも、続けたい……



私はそんな思いを手紙にたくし、机の上に置いた───……






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ