第十話 新たな出会い
私は香奈恵に事実をきくことはなかった。
恐かったから……
事実をきくのが。香奈恵の気持ちをきくのが……
そして私は人を信じることを忘れ、心を失い、
いつの間にか、笑顔は『作り笑顔』となっていた。
でも、みんなは気づかない。
だって、傷つき苦しんでいた時の私しか、
見たことがないんだから。
しかし、一つの出会いが私を変えた。
兄の手紙がきた時みたいに……
その日私は、いつも通り『作り笑顔』をして過ごしていた。
そして、みんなと一緒に廊下を歩いていた。
その時に目があった一人の少女。
通り過ぎようとしたとき、いきなり手をつかまれたんだ。
みんなは私に気づかず、通り過ぎていった。
私はみんなに声をかけようとした。
──が、少女の言葉によって遮られてしまった。
「あなた、悲しい目をしてる───……」
この言葉によって……
「え…?」
「あの時の私と同じ……
人を信じれなくなってしまった人の目。
悲しい…瞳…」
「何言って──」
「裏切られた?」
「…は?」
「信じてた人に、裏切られた?
信頼してた人に……」
「なん…で…」
なんで…わかるの…?
誰も気づかなかったのに……
唯一心から信じてた香奈恵に裏切られ、
それからずっと心を閉ざして、誰も信じなくなった。
家族さえも気づかなかった。
私の気持ちに……
「泣かないで……」
少女はそう言うと、私の目から溢れ出る『涙』を拭ってくれた。
「泣…く…?」
心を失ったはずなのに……
泣くことをさえ忘れ、『涙』は枯れてしまった。
そんな私が…泣いた…?
心を失った…私が…?
「もしかして…『心なんて失った』って思ってた?
泣くこと、忘れてた…?」
少女はほほえみ、そして優しく私を抱き寄せた。
「あなたの涙は、まだ枯れてなんかいないよ。
そして、まだあなたは持ってる。
『心』をね。
そして、私が取り戻してみせる。
あなたの、本当の笑顔───…」
枯れたはずの涙が再び溢れてきた。
そして思ったんだ。
この子なら、信じられるかもって……
「信じても…いい?」
「うん…!」
少女は優しくそう言った───…




