表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砂の星、響く声  作者: 理祭
 終章
13/107

エピローグ

 風が吹いている。


 黄土色の砂が舞い、全てがぼやけてしまっている一面の砂漠を旅人が歩いていた。防砂衣に身を包み、しょぼくれたコブつき馬を引いている。

 黙々と足を投げ出し続ける旅人がふと立ち止まり、布防具の下から手を入れて指笛を鳴らした。甲高い音が薄汚れた空を縫って響き渡り、遠くから一匹の獣が姿を現した。

 体長が半丈以上もある巨大な肉食獣は音も立てずに指笛の主の前までやってくると、その凶悪な本性を現して旅人を食い殺すのではなく、甘えるようにその頭を擦り寄らせた。


 旅人の細くしなやかな腕が猛獣の喉を撫であげ、やっかいな旅の連れにいつまでも慣れてくれないコブつき馬が頭を振って脅えるのを見て、笑うように目が細められた。布防具の隙間から僅かに覗く流麗な睫毛の下に、二重の円を描く銀色の瞳が輝いている。


 やがて旅人は一匹と一頭の供を連れ、まだ遥か遠く蜃気楼にさえその姿を現さない、自身の旅の目的地へと歩き出した。

 辺りにはいつ止むことのない砂が轟いている。

 天高く巻き上げられて渦孤を描く、それはまるで一個の巨大な生命体のようであり、空を奔るその姿は大きな顎を開き全てを飲み込もうとしているかの如くにも見えた。


 轟音が鳴り響く。その中で、旅人には声が聞こえていた。自身へ語りかけるその大いなる言葉を聞いていた。

 死の砂が舞う下、延々と止むことのない声を胸に、呪われた少女はただ真っ直ぐに足を前へと進める。


 強い風が吹いていた。



                                                      序編 完



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ