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Date 08. ドリームワールド



「ふぅ……」


 学校が夏休みに入り、初日の夜8時。

 軽いジョギングを終えて、俺は自分の住む部屋へと帰った。

 足の調子は悪くない。

 久々に体力作りとして日課だった走り込みをしたけど、かなり体はなまっている。

 奈瑠美さんから速度を出さなければ走っても良いと許可も出たし、これから少しづつ走る感覚を養おう。

 きっと……Christalクリスタル Salvatorサルバトール Onlineオンラインでの体の動きにも繋がると思う。


 そして夏休み初日である今夜、CSOの正式サービスが開始される……!



――――――


Date 08. ドリームワールド


――――――



 シャワーを浴び終えて、テレビを付ければそのCSOのCMがやっている。

 俺はそれを聞き流しながら、宅食サービスのレトルト飯を用意していた。


 ――――――魔物たちと戦う人類は、破滅へと追い込まれていた。』


 もうすぐ正式サービス開始の時間だ。

 準備は万端。

 あとはゆっくりしてその時を待つだけだ。


『やがて失われた古代の遺産であるロストテクノロジーをもった英雄達が現れる』

『その技術は異能を発現させるシステム、クリスシステムと呼ばれた』

『新たな文明で、自分だけのクリスシステムを発現させよう!!』


 正式サービス開始時には、このクリスシステムが正式実装される。

 どんなシステムかは、まだ明かされていない。


 CMが明ければCSOの特集がはじまった。

 開発者、武蔵たけうち 弓照ゆみてるによるインタビューか……。


『現実的に不可能であると言われたフルダイブシステムですが、どういった経緯で開発に臨んだのですか?』


『経緯、ですか……』


 信念や想いが空間を支配したかのように、僅かな間が緊張感を引き立てる。

 画面越しにでも伝わってくるほどに、空気が変わった。

 このゲームを、そしてフルダイブシステムを確立させたエンジニア界の異端児は口を開き語り始める。


『人は、夢を見ます。 誰にもあるでしょう? 幼いころに見た夢、大人になって叶えたい夢。 そんな世界があったら素敵じゃありませんか?』


『これは夢を叶える機械ではありませんが、夢を繋ぐシステムです』


『ある日、我々は発見をしました。』


 ……。


『それは、集合的無意識に置かれた人々の夢でした』


『苦悩の日々でしたよ。 既存の技術は意味を成しません。 今まで培ってきたものが、無に帰したような気分でした』


『その場所とこの世界を繋ぐにはどうすればいいか……試行錯誤を続けました』


『そこで、我々はこの産業に目を付け。 フルダイブ機能を確立させました』


 ……まさか。


『巷で噂になっていた。 夢の世界ですよ。 今夜は存分に夢をお楽しみください』


 ……俺が見ていた夢。

 それは集合的無意識下におかれた……人類を繋ぐ深層心理に敷かれた夢だったっていうのか。


 今までの既視感や違和感を、心の底に生まれた得心が塗り替えていく。

 やっぱり俺は、あの夢の世界に行っていたんだ……。


 俺はまたもや、夢の世界への期待に鼓動を高ぶらせながらも、晩餐を終えた。

 ……ごちそうさまでした。


 ログインの準備をして……良し! 抜かりはない。

 きた!  正式サービス開始の9時だ!


 スイッチを入れて、登録した合言葉を唱えよう。


「開け、護摩」


 ……。


<お待ちしておりました! 入鹿イリシカ飛鳥馬アスマさま。 ようこそChristalクリスタル Salvatorサルバトール Onlineオンラインへ!>


 初期設定画面に入ると、聞き慣れた声が脳裏へと響いた。


「その声は……リリス!」


<再びお仕えできて光栄です、これからも貴方のお手伝いをさせていただきます>


「よろしく、リリス」


 アバターを制作……。

 前回と同じナチュラルアバターでいいか。

 不気味な男……あれはゲーム内ミッションだったんだ。


<それでは、新たな旅路へ共に参りましょう>


「あぁ、行こう!」


 まばゆい光が眼前の景色を包み込む。

 一瞬閉じた目を開けば、そこは見慣れない景色だった。


「すげー……」


 段差のあるホールケーキのような土台に、白を基調とした巨大な建物が街の中央であろう場所へ佇んでいた。

 天から注ぐ陽の光によって用水路が煌めき、都市の明るさを引き立てる。

 そして、港町のような爽やかな潮風が歓迎の合図の様に吹き渡り。

 振り返えれば、果てしない地平線の向こう側に澄み渡った蒼が空と重なっている。


 ここが……Mariaが言っていたプレイヤー達専用の拠点。

 電脳都市【サルバトーレ】か……!


 周囲にも感嘆の声が上がり、続々とプレイヤーがログインしている。

 子供みたく圧倒されていたのは俺だけじゃないみたいだ。

 少しの安心感と新たな冒険の予感に胸を躍らせつつもMariaへチャットを飛ばす。


<メッセージを飛ばせません>


 この表記はログインしていない時に出るものだ。

 新鮮な街並みを味わいつつ、一度約束の集合場所に向かうか。


 あらかじめ決めていた集合場所へと、マップを見て向かう途中、おかしな噂が耳に入ってきた。

 その事を思い返しているうちにMariaとも合流できた。


「Iruka! これからも、よろしくね~!」


「心強いよ、よろしく」


 正式サービス開始後、改めて挨拶してMariaと拠点を巡ることにした。

 このプレイヤーの拠点サルバトーレは、テスト期間中に再接続ができず全プレイヤーが一度行ったきりになっているみたいだ。


 それと……集合場所につく途中に思わぬ再開をしたんだよな。

 テスト時にパーティーを組んだプレイヤーと、顔を合わせることができたんだ。

 互いにフレンド登録もしたし、タイミングを伺いMariaにも後で改めて紹介しよう。


 二人で新拠点を散歩、もとい観光していると街中に設置された大型ビジョンに人だかりができていた。

 多くの人間がそのモニターを眺め、話し込んでいる。


「これ、やっぱ何度見てもすげぇな」


「あれくらいできるんじゃないの?」


「ばっか、あれはテスト期間だけじゃそうそうできないぜ」


 ……あれは。

 おいおい、なんであの時の映像が流れているんだ?


「あれってさ……Irukaだよね?」


 街のモニターには……。

 俺が村の兄妹を守るために、集団のゴブリンを相手している動画が流されていた。



<新たなアチーブメントを獲得しました>

調和の御心



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