Data 77-epilogue. ~Je pense, donc je suis~
Data 77-epilogue. ~Je pense, donc je suis~
少年は……使者である異界の神と共に消えて、逢魔の災厄は収束した……。
これがCSOの物語……。
私たちは知らない間にこんなゲームをしていたんだ。
世間を揺るがした新時代のゲーム、Christal Salvator Online。
通称CSOにログインしていた多くの人たちは、気付いた時には意識を失っていた。
目覚めた時には、ログインしていたその記憶はなく。
CSOの世界で逢魔の災厄と戦った記録のみが残されていたんだよね。
私もその事件の渦中にいた一人だった。
あの世界は本物で、私たちの世界とは別の異世界。
運営が残した記録にはそう記されていて、世界を渡った影響で私たちの記憶は無くなっているのかもしれない……。
なんて今では言われている。
そんなおかしな事件からCSOはもう禁止されてサービスは停止。
ログインするためのデバイスも、もう全部回収されちゃった。
「おはよ! 咲月!」
「真理愛、おはよ」
咲月と挨拶を交わしていつもの席へと着いた。
……。
私の前の席。
そこは今は空席で、前にその場所に座っていた子は転校しちゃったらしいけど……。
その子がどんな子だったか、全然思い出せない。
クラスの子に聞いても、皆覚えてなくて……今では、学校の七不思議のひとつになっている。
ぽっかりと空いたその座席を眺めていると……なんだか、大切なものを忘れているような気がして……。
時々、涙が出てくる。
咲月には少し感付かれているけれど、他の子にはバレてないからセーフだよね!
「ねぇ、カルデアの噂知ってる?」
「CSOのヤツでしょ! 難しくてさ、簡単に説明してよ~」
「うん、結構闇が深そうでさ」
友達が犯罪者シンジゲートのカルデアの話を持ち出して、私たちは興味深くその話に耳を傾けていた。
CSOの裏で暗躍していた組織カルデア。
その組織は、CSOの中に在る本物の世界を掌握する事を目指していた。
逢魔の災厄っていう魔物の大量発生を利用して、その世界の秩序を保とうとしていたらしい。
なんでもそれをしてバランスを取る事で、私たちの世界を破滅から防ぐ? なんて目的があったみたい。
よくわからないけど、逢魔の災厄がコントロールされてなかったら、向こうの人類や文明も滅んで。
なぜか私たちの文明も滅ぶ……。
そんな話らしい。
「つまりはさ、逢魔の災厄によってこっちの世界に影響がある装置が壊されちゃうってことだと思うよ」
「ふ~ん」
でも、この話が本当だとしても、運営によると逢魔の災厄はもう祓われたという事になってるみたいだから、心配ないけどね!
「そういえばさ、ブラックホールってどうなったの?」
「あぁ、あれさ。 もう小さくなってるみたい」
また情報通な友人の一人が、CSOに続けてブラックホールの説明をしてくれた。
世間を騒がせたブラックホールも、今では小さくなり……
何かの見間違いだったかもしれない。
なんて言われている。
ブラックホールが大きくなり続ければ、この世界は滅びるなんて言われていた。
だけど、もうその心配はなくて。
そのブラックホールも徐々に小さくなって今日には消えちゃうんだ。
この事件も、もしかしてCSOと関連が在ったりするのかなぁ。
そんな都市伝説みたいなニュースを思い返していると、いつの間にか授業も終わっていた。
そして、放課後に友達皆で遊んで……。
「今日も、楽しかったな……」
部屋で一人、私は今日の話や遊んだことを振り返っていた。
皆と過ごす日常は心から楽しいと思える。
けれど、何か大切な事を忘れている気がして……皆と遊んでいる時も、学校で授業を受けている時も……悲しい気持ちが胸の中に付きまとっている。
今日は……あの夢、見れるかな。
ときどき、見知らぬ夢を見るんだ。
私の好きなファンタジーゲームの世界に降り立って、仲間たちと楽しく過ごす夢。
そこには、知らないはずの男の子が一人いて……。
夢から覚めると、必ずその子の顔は思い出せない。
もしかして、これがCSOの夢だったりするのかな?
今日もまた、夢の中で会えるかな……?
――――――
……。
「君か……」
「貴方は、まるで奈瑠美さんのようですね……」
「もちろんさ、彼女は私。 私は、彼女なんだからね」
……。
「逢魔の災厄を退けた英雄への褒美さ、何でも話してごらん。 君は今、何を望む?」
「答えは決まっています。 俺達の、世界の事……俺達の存在について……」
……。
「俺たちは……」
――――――
色即是空の仮想世界 ~我思う、故に我在り~ :終幕




