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Data 06-B. 解かれ行く楔 Part2



Data 06-B. 解かれ行く楔 Part2



 馬に激しく揺られながら暗闇を突き進む。


<採取場はこの先、約300メートルです>


 リリス、助かる。


 辿り着いた!!!

 ここが、採取場。


<周囲へ二つの生命反応があります>


「おーい! 誰かいないか?」


「冒険者のにーちゃん!」


「おにーちゃん、このことはだれにもいわないで!」


 良かった、二人の兄妹は無事だ。


「下がれ!!」


 こちらへ駆け寄ってくる二人を狙い矢が放たれる。

 俺は瞬時に一歩踏み出し、その矢を薙いだ。


 剣士に転職して習得したガードスキルが活きている。


「俺から離れるな」


 ……は、恥ずかしい。

 ゲームとはいえこんなセリフを吐く日が来るとは。


 小鬼の魔物の集団、ゴブリンか。

 まずいな。

 馬はそれを見てビビッて逃げてしまった。


 守る様に二人の前に立ちゆっくりと後ずさり、俺は二人を小屋の中へ入れた。


「指示があるまで絶対に戸を開けるなよ」


「にーちゃんは!?」


「俺は問題ない。 戸を閉めて妹を守るんだ、できるか?」


「お、おう!!!」


 目の前に8体。

 後衛には伏兵がいるはずだ。

 おそらく2~3体。


<感知可能な範囲の伏兵は2体です>


 計10体か。

 ここまでの集団戦は、初めてだが……いける。


 この一週間、ゲーム内での動きやスキルの使い方や敵の基本的な動作。

 それらは大方学べた。


 なまじ知性があるだけに、自分たちの数が多ければやつらは油断する。

 一対一では弱いが、ゴブリンはグループを組むゆえに狩の成功率が高い。

 その成功率の高さが油断を生み出す。


 牽制として棍棒を振り回して飛び掛かってくる一体を防ぎ、俺はそいつに苦戦するようにふるまう。

 良いぞ、二体、三体と続いてきた。


「うりゃぁ!!!」


 回転切りだ……!

 4体を一掃できたか。

 俺に放たれた矢を防いで、矢が飛んできた方向へ剣を投げる。


「ぎゃぁ!!」


 5体目。

 今のを見た敵は矢を放つのを躊躇するだろう。

 その隙に前衛を片付ける……!


 すぐに筋力強化を施し唖然とする敵へと縮地を用いて踏み込み殴り飛ばす。

 そして、敵の落とした棍棒を拾いすぐに周囲を警戒し小屋へ向かう敵を殴り飛ばした。


 7体目。


 苦し紛れに突進してくる敵の刺突へ、リーチを活かしカウンターを打ち込む。

 新スキル【中級・刺突】。

 棍棒での刺突、顔面に直撃すればただではすまないだろう。


 8体目。


 9体目の前衛は逃げていった。

 足音や鳴き声からして、最後の10体目の後衛も逃げているだろう。


 ……ここで倒しきることも考えたが、深追いは厳禁だ。

 俺は兄妹を帰さないといけない。


<感知をすり抜けた存在が小屋へ近づいています!>


「にーちゃん! たすけてくれ!」


 !?


 暗くてよく見えない正体不明の存在が、小屋の少女を攫っていた。


「待て!!!」


 速度はない。

 俺の方が上だ……。

 だが、それは俺が全力を出せればの話……!!!


 体が、動かない……。

 馬から転落した時の激痛。

 取っ組み合いになりながら、その激痛を耐えた記憶。

 自分の足が思うように動かない生活……。


 これまでの全てが俺の左足の動きを鈍らせる。

 どうせ……俺には……。


 諦めるのか?


 いじめに苦しんだ男子生徒……俺はあの時、怪我をして一度でも後悔をしたか?

 あのままだったら、彼は自ら命を絶ち死んでいたかもしれない。

 一人で誰にも相談することなく、苦しみの中でもがいていたかもしれない。


 あの時、俺は、止めなきゃよかったなんて一度でも思っていない!!!


「おにーちゃん!」


 諦める。

 幼子の怯えた表情を見て、そんな選択ができるわけがないんだ!!!


<冒険者の基礎スキル:速度強化がグレードアップされました>


 動く……!

 今まで、物怖じしていた左足が……!


「放せ!!」


 衣服の上着で謎の存在を捕まえて縛り上げようとしたが、そいつはするりとそれから逃れた。

 職業スペックで追いついたが……こいつ、動きからしてただものじゃない。


 だが、妹を解放させた。

 あとは逃げるだけだ。


 俺が妹を背にすると、フードで頭を覆い顔を隠したそいつはこちらへ振り返った。

 なんだ、こいつ……人型ではある。

 しかし……喋らない……喋れないのか?


「きさま……」


 喋った! やはり、プレイヤーか?


「わかってるだろ? 今のは逃がしてやったんだ。 この子を解放させるためにな」


 流石に厳しいか……?

 だが、相手は未知。

 しかしそれはこちらも同じ。

 相手からすれば俺が未知だ。

 これで、引いてくれ……!


「貴様の顔、覚えたぞ」


「だったら、これからアバターを変えてやるよ」


「……」


 沈黙の中の睨み合いの末……やつは去った。

 泣きじゃくる幼子を宥め背負い、俺は村へと帰還した。


「うわああぁぁっぁああああん!」


 後から採取場に来たという父と共に先に村へと帰っていた幼い兄と、そして両親と生きて再開したことに再び強い安堵を感じたのか。

 幼き少女はまた泣き出した。


 兄妹が消えて、焦っていた両親の表情。

 敵を殴り飛ばす感触。

 未知の敵から生き残った際の安心感。

 心の底から安堵する村人たち。


 再開を泣いて喜ぶ、家族……。


 俺は、この世界に強い違和感と既視感を感じていた。



――――――



第一ノ求道。


苦諦・色即ノ幻想マーヤー



――――――





<新たなアチーブメントを獲得しました>

新たな一歩

動くこと雷霆のごとし


<新たなスキルを獲得しました>

ヘイスト 敏捷性強化(小)


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