表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/15

Data 06-A. 解かれ行く楔 Part1



「打ち取ったり!!! 愚か者め!!!」


 なんだ、普通のおじいさんか。

 頭上から突き立てられたナイフをサイドステップで即座に躱し、チョップでそれを弾き落とす。

 という動作を行ったが、俺の手刀は見えない壁のようなものによって阻まれた。


 そうか、俺たちプレイヤーはNPCには触れることはできないんだ。

 勢い余ったじーさんは床へと倒れ伏し、片膝をついた。


「貴方は?」


「おのれきさま! 山賊団に名乗る名前などないわい!」


「俺たちは、ただの冒険者ですが」


「そんなはずはない! 儂は冒険者協会に属する聖騎士に聞いたのじゃ! きさまの死んだ魚のような目が何よりの証拠じゃ!」


 し、失敬なじーさんだな。

 俺を元にアレンジされたアバター……リアルでの俺も人から見たらそんな目なのか?


「私たちは、依頼を受けてきたんだよ!」


「それみたことか! 依頼を利用し村を乗っ取ろうという策謀じゃな!?」


 Mariaの言葉にも耳を貸さないか。

 このミッション、めんどくさ。

 運営が用意した特殊クエストだろうか。



――――――


Data 06-A. 解かれ行く楔 Part1


――――――



 どうしたものかと悩んでいると、先ほどの案内人の声が響く。


「村長~ 無事ですかい……?」


「おぉ!! 生きておったか!! こやつらにむごたらしく殺されたと思ったぞ!!」


 案内人は意を決したかのように、真剣な表情となった。


「この度は……」


 ……。


「この度は!!! 申し訳ありませんでしたぁ!!!」


「たわけ!! 山賊に頭など下げるな!!」


「村長、この人達は求道者ぐどうしゃさまですよ……」


「……え?」


 ……。


「この度は!!! 申し訳ありませんでしたぁ!!!」


 俺たちは客室へと案内され、誠心誠意の土下座を受けた。

 

「もういいよ! おじいちゃんも村を守るためだもんね!」


「め、女神さまですじゃ……! 生まれて初めて本物をお目にかかりましたのじゃ……!」


「もう、おおげさだよ~」


 それにしても、この村長は誰かに唆されたというが。

 さっきすれ違っていた一団がいたな……。


「一体、誰に唆されたというんですか?」


「正式に派遣されてきた求道者ぐどうしゃ様ですぞ。 怪しき存在が【冒険者を装いこの村を狙ってる】と言っておりましたな」


 冒険者協会。

 つまり冒険者ギルドや組合のことだが、そこからきたプレイヤーにそう言われて信じ込んでしまったらしい。


 彼らからすれば求道者ぐどうしゃは神の使徒のような存在。

 嘘を吹き込むわけがないと思っているのだろう。


「本物の山賊が狙っているのでしょうが、勘違いをしてしまったこちらの責任でございます。 もしかして、貴方たちは依頼の件でこちらへ?」 


「そうですが……」


「それは重ねてお詫びいたします。 実はですな……」


 さきほどのプレイヤーの一団は街が出したクエストを受けてこの村にきたという。

 近場に知性がある魔物の拠点ができてしまい、それの討伐という話だ。


 そして、この村の採取場を荒らす魔物。

 俺たちが受けたのはその魔物討伐だが、そいつらは魔物の拠点からの別動隊だろうという推測らしい。


 依頼がブッキングになってしまったんだ。


「その一団が魔物達の討伐に成功すれば、俺たちはやることがなくなってしまうってことか」


「そんなぁ! せっかくきたのに!」


 まぁ、それならそれでいい。

 村人たちが安心して暮らせるなら、それが一番だ。

 この人達の生活を見ていると、ゲームとはいえそんな風に考えてしまうな。

 

「代わりと言っては何ですがな、一先ず今回はこの村で最大のもてなしをさせてください」


「まぁ、こんな事もあるか」


「そうだね! 食べ物も美味しそうだし!」


 そうして、Mariaと共に村の歓待を受けることに。

 このゲーム、実は食べ物を楽しむのも醍醐味の一つだ。

 見たことのない果実や野菜、料理を楽しむこともできる。

 もちろん自分で作ることも、生産者となり極上の野菜を育てることも、絶品料理を制作することも可能だ。


「にーちゃん、つえぇのか? そんちょーがてもあしもでないってきいたぜ!」


「あぁ、彼も昔は強かったんだろうね」


「にーちゃんカッコイイ! さいしゅじょーにはいついくんだ?」


 幼い少年へ、型を見せたり。


「すごーい! さいしゅじょーもとりかえしてくれる?」


「討伐隊がいるから、俺の出番はないだろうね」


「これ、きょうのおいわいのおはな、おにーちゃんにあげるね」


「嬉しいよ、ありがとう」


 幼い少女から花の冠をもらった。

 こうして、求道者ぐどうしゃを珍しがる幼き兄妹とも戯れ時間は過ぎていった。

 

 討伐隊はまだ帰ってこないな。

 Mariaも不安そうな表情だ。


「Maria、何かあった?」


「いや……大したことじゃないんだけど。 聖騎士なんていたかなー? って」


 聖騎士……すれ違っていた求道者ぐどうしゃの一団には聖騎士の風貌のような男がいた。

 村長は聖騎士からの情報で盗賊団が村を狙っていると言っていた……。

 しかしMariaがプロフィールを見た際、その人物の職業は聖騎士ではなかったという。 


「最近ずっとプレイしてたし私はそろそろ落ちようかな。 たまにはちゃんとした本睡眠も取らないとね! また明日!」


 ゲーム中に体は睡眠しているとはいえ、やはり適度な休憩と本睡眠をおすすめされている。


「あぁ、また明日」


 明日の約束をし、宿屋でMariaはログアウトしていった。


 心なしか、顔が赤かった気がするが……。

 宿屋で二人きりだからなんて、考えすぎか。


 俺も落ちようかな……。


求道者ぐどうしゃさま!」


「はい、どうぞ」


「まだ、いらっしゃいましたか!」


 声の主が扉を開き、俺の姿を見た瞬間。

 強張っていった彼の顔が柔らかいものに変わった。


「村長、どうかしたんですか?」


「村の子供が……採取場に向かったのかもしれませんのじゃ!!」


 こんな夜中に……?


 村の中と周囲を探しても子供は全く見当たらなかったらしい。

 そして、今日は両親の誕生日。

 討伐隊の帰りを待っていたら、日付が変わってしまう。

 お祝いのために両親が好きなハーブを持って帰りたいと、しつこく言っていたらしい。


 あの兄妹か……。


 それにまだ討伐隊は帰っていない。

 討伐が失敗した場合、若しくは残党がいた場合。

 荒らされていた採取場もまだ安全とは言えない状況だ。


「俺が様子を見てきましょう」


「この馬へお乗りください」


 ……馬。

 転落してから、俺は馬に乗れなくなってしまったんだ。

 いや、いけるのか?

 このゲームなら……。


 馬に乗ろうした体が、動く……!


「よろしく頼む……!」



――――――



 父と母の誕生日を迎えた幼き兄妹が、両親のお気に入りのハーブを摘みに暗闇をかき分けて採取場へと向かっていた。

 周りに魔物もおらず二人は安心しきっていたが、彼らは狩人として息を潜めているに過ぎない。


 そしてモニターの向こう側にある薄暗い部屋で一人の人間がその様子を見ていた。


(やれやれ……とうとう動き出したか)


「リリス、彼にガイドを」


 画面越しに走る兄妹を見て、その存在はたのしそうにわらった。


(これから、どうなるかな)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ