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Data 05. 目指す職業



 宇佐美さんと別れ俺は自宅へ到着した。

 早めの食事を済ませて一風呂を終えた。


 ……最近、夢を見ることはない。

 あの夢の中で得られていた充実感は、いまCSOに入ることで得ている。


 そして……ネットでもだんだんと夢の噂は鳴りを潜めていた。

 なぜ、夢を見なくなったのか。

 あの噂や世界はなんだったのか。


 ……このゲームを続ければ答えは出るのだろうか?


「さて、ログインするか!」



――――――


Data 05. 目指す職業


――――――



<サポートシステムの音声ガイドをONにできます>


 新しい機能か。

 まぁ、今はいいか。


<サポートシステムの音声ガイドをONにできます>


 ……NO.


<サポートシステムの音声ガイドをONにできます。 非常に便利です>


 せ、せっかくだしONにするか。


<こんにちは、サポートガイドのリリスと申します。 貴方の旅路をサポートします>


 無機質でいて透き通った声が俺の脳内へと響く。

 聞いていると、心の底へとあずかり知らぬ安心感が湧いてくるような。

 そんな落ち着いた声だ。


「リリスさん、よろしくお願いします」


<そのような言葉遣いは不要です。 言葉を発さずにテレパシーでのやり取りも可能ですよ>


 そうなんだ、それは便利だなぁ。


<これくらいは当然です。 今日は何をなさいますか?>


 今日は……何をしようとしたんだっけ?

 確かこれまでのミッションや戦闘で、アチーブメントがそこそこ解放されていたはずだ。


<現在、可能なことを纏めます>

・日替わり特別ミッション

・冒険者協会への加入

・新たなスキルの開放、習得

・新たなジョブへの転職 が可能です


<こんな風に貴方をサポートします>


 そうだ。

 今日はレベルも上がって今までできなかったジョブへの転職→冒険者協会への加入という風に予定を立てていたんだ。

 すごいな、サポートシステム。

  

 サンキュー、リリス!


<何かご用命があれば、お気軽にお呼びください>


 ……Mariaさんはまだログインしていないか。

 先にジョブへの転職を済ませるか。

 転職ミッションを受けて……と。

 リリスが自動で表示してくれた目的地へ向かおう。


 CSOの転職システム。

 始めは皆、冒険者からのスタートだ。

 ミッションや戦闘を経てある程度アチーブメントを解放すれば、転職ができる。

 剣士 盗賊 魔法使い 弓使い 聖職者 召喚士。

 多くの職業が存在するが、人気どころはこのあたりか。


 そして、更なる活躍や条件達成を経て上級職にグレードアップしていく事が可能。

 無数の職業の中から自分に合うものだけを磨くのも良し。

 時間をかけて様々な職を一つずつ極めていくも良し。

 プレイヤー次第であらゆる可能性を見出せるのが面白いところだ。


 俺が目指すのは……夢の中でやっていた戦い方ができる職業。

 魔法のような遠近両用の攻撃方法を持ち、変幻自在の搦手に加え、近接戦をこなせる職業だ。


 こういった職業は大抵のゲームでは器用貧乏になりそうだが、それは画面越しに見るゲームだからだ。

 限られた行動、限られたボタン、限られたアクション。

 当然、選択肢も限られそれに対処する正解も限られる。


 だがこういった画面越しではなく自分がリアルに体験をするゲームは状況により選択肢が多いはずだ。

 その分、正解も多くなる。


 と、俺は考えている。


 俺がまず目指すのは、剣士。

 そして次に魔法使い。

 最終的な目標は、魔法剣士マジックナイト


 現在判明している職業では、魔法剣士マジックナイトが一番理想に近いと思う。


「さて、剣士になれたみたいだけど……」


 新たなスキルも獲得できた!

 剣を用いた万能なガードスキルに加え筋力強化。

 そして強力な単体攻撃スキルか。

 

<フレンドが一人ログインしました>


 Mariaさんがログインしたので合流した。

 そして、冒険者協会への加入を済ませた。


 彼女は続けてクエストについて教えてくれる。


「ギルドにはミッションとは別にクエストもあるんだよ」


「何が違うの?」


「簡単に言えば、ミッションは人からの依頼、クエストはギルドを通した大きな依頼ってことかな」


 なるほど。

 ミッションは個人で依頼できる雑事や簡単な仕事が多く。

 クエストは大規模な討伐や探索、そして組織や国からの依頼。


 という感じで分けられているらしい。


「今日はクエストを受けてみようと思ってたんだけど、Irukaは平気?」


「もちろん、どんなものがあるんだろう」


 クエストやミッションは掲示板に張られた書類から選ぶこともできるし。

 受付で自分に合ったものを斡旋してもらうこともできるという。


 掲示板を見るが、多くのプレイヤーがクエストをおこなっているため丁度いいものがみつからなかった。


「みつからないねぇ」


「Mariaさえ良ければ今日はミッションにしようか」


「そだねー」


 少し落胆しながらも、俺たちは気の抜けた声でやり取りしていた。

 近場の村に依頼がある。

 森にある採取場を荒らす魔物を倒してくれというミッションだ。


 Mariaの合意を経て、受付で手続きを済ませ俺たちは村へと向かった。

 村に入ればNPCの村人が出迎えてくれた。


「ようこそ、おいでくださいました……冒険者様……」


 何か歓迎されていないような気がするが……。

 こちらを疎ましく思っているというよりは、どこか遠慮がちな申し訳なさを感じる。


「とりあえずこちらへ、村長の住まいへ案内しますね」


「はい、よろしくお願いします」


 村では子供たちは遊びまわり、大人たちは穏やかに働いている。

 のどかで良い村だ。


 始まりの街であるクリスタウンで、都市から離れている村はひもじい思いをしている事も多いと聞いていたけれどこの村はそんな心配はなさそうだ。

 ここは比較的都市に近いからだろうか。


 村長のご自宅へと歩いていると、武装した一団が向かいから歩いてきていた。

 一人……足裁きが違う。

 そいつは俺の表情に気づいて、すぐに普通の歩き方に変わった。


 その一団とすれ違うさいにMariaは自分から元気に挨拶を交わし始めた。


「どもー! 良い旅路を! お互い頑張りましょう!」


「こんにちは、良い旅路を」


 良い旅路を。

 誰でも使いそうな決まり文句だが、始まりの街でプレイヤー間の挨拶としてよく使われていた。


 それにしても今まで気にした事なかったが……Mariaは瞬時にプレイヤーだと見抜いていたな。


「プレイヤーだって、なんですぐ分かったんだ?」


「あの人たちはプロフィールを公開してるからだよ。 ほら試しに私のを見てみなよ」


 Mariaからの教えを受けて、他人のプロフィールを見ることができる事を知った。


【Maria】

自己紹介:しつこい勧誘お断り。 仲良くゲームしよう!

Female 人間

好きな食べ物:海鮮料理 趣味:ゲーム、ガーデニング!


職業:魔法使い 取得済み:聖職者


スキル

白魔法:ささやかな癒し(回復・小) ライトボール

黒魔法:種火 粉雪 静電気 マジックアロー

パッシブ:魔力上昇(小) 回復力上昇(小)


「私はこんな感じ! いつもは職業とスキルを隠してるんだけどね」


 生活に使える魔法に、威力は小さいが発動の早い基礎魔法のマジックアロー。

 それに一番の注目点は……。 


「聖職者もとっていたのか、気付かなかったよ。 それにしてもなんで隠してるの?」


「数が少ないからさぁ、勧誘がしつこいんだよね~。 だから回復魔法を取ったらすぐ魔法使いに転職したんだ」


 なるほどね。


「といっても、あんまり変わらなかったんだけどね。 なんでかなぁ」


「それは……」


 それはきっと、彼女が可愛らしい女性だからだろう。

 始まりの街でも女性プレイヤーへ声をかけてナンパ紛いの事をしている人間も多い。


 俺たちの会話を聞いて、村人のNPCが問いかけてくる。


「……あの、貴方がたはもしかして、もしかして、求道者ぐどうしゃさまなんですか?」


「そうだよ! 気付いてなかったんだね!」


 求道者ぐどうしゃ

 それはNPCから俺たちプレイヤーを呼ぶときの呼称。

 CSOの設定として、この世界へ平穏を導くために俺たちプレイヤーは降臨した。

 という事になっている。


 案内人の顔がみるみるうちに真っ青になっていく。

 まるで、一般信徒が落とし穴に落としたと思った標的がキリシタン大名だった。

 そんな鬼気迫る表情だ。

 NPCの細部にまでこだわったゲームなんだな。


「こ、ここが……村長の住まいです。 わ、私はこれで!失礼します!」


 行ってしまった……。

 勝手に入っていいんだろうか?


「ごめんくださーい!」


 俺は声をかけるが、返事はない。


「待ってもしょうがないし、はいろっか」


 ……妙な気配だ。


「外で待っていてくれるか?」


「どうして? 一緒に行くよ」


 ……。


「俺が前を行く」


「え? う、うん……」


 ……ゆっくりと慎重に屋敷の中へ入っていく。

 廊下の角を曲がる直前……くる。


「打ち取ったり!!! 愚か者め!!!」



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