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Data 02. 開かれた運命



「だから、そのゲームをやってみるかい?」


奈瑠美さんの言葉に俺は息を飲んだ。


「気付いたかい? 実は私もその抽選に応募していたのさ」



――――――


Data 02. 開かれた運命


――――――



 俺も、行けるのか。

 公式サイトで見た、あの壮大な世界に。


 あれ? でもたしか……。


「アカウントは一人ひとつ。 本人の生体認証が必要じゃありませんでした?」


「それもそうだね」


 今回は、他の人間がテストに参加しないように処置が行われている。

 その仕組みが厳格な本人確認の生体認証。

 安定したデータを取るため、一定の人数でテストを行う事になっているはずだ。


 やっぱりだめだ。

 彼女からデバイスを借りればあの世界を体験できると思ったが、正式サービスの開始をまつしかない。


「そんな顔をする必要はないさ。 参加権は君に上げよう」


「え?」


 彼女の話によれば【当選者が諸事情で参加できない場合は他の人間に参加権を譲渡する事ができる】。

 とメールに記載されていたそうだ。


「けど、奈瑠美さんも楽しみにしていたんじゃ」


「実はね、元々は君にプレイしてもらおうと思っていたんだ」


「俺にですか……?」


 VRMMOとは、元々は社会の発展のために作られた産物らしい。

 訓練や演習をその身で体験すれば、人命救助や災害対策の成功率もあがる。

 心的障害を負った人間の心の回復。

 教育では離れた場所からの学習塾に用いることもできる。


 この他にも様々な用途や可能性があるという。


「もちろん、君の足の怪我にも有効なのさ」


「奈瑠美さん……俺……」


「それじゃあ、昔みたいになるみおねえちゃんて呼んでくれるかな?」


「いや、結構です」


「これでもダメなのか、全く厳しいなぁ」


 俺の足の怪我にも……。


「リハビリを頑張る良い目標もできたね」


「遠足前の園児のような気分ですよ」


 そして、共に夕飯を食し気付けば夜も深くなっていた。

 俺のために色々考えてくれていたんだな。

 昔から彼女には頭が上がらない想いだ。


「それじゃ帰ります」


「デバイスが届いたらまた教えよう」


「ありがとう……な、なるみねえちゃ……」


 振り返れば、彼女はいたずらが成功した子供の様にとんでもなくニヤついていた。


「……帰ろ、じゃあね奈瑠美さん」


 しばらくは、嫌なことばかりで鬱蒼な日々が続いていたけど……。

 そんな暗い気持ちが吹き飛ぶくらいに、俺の胸の中は今まで感じたことのない愉快なざわめきで溢れていた。



――――――



「全く、思春期だねぇ……」


(君の運命はこの星の光の様に、散ってしまうのか。 それとも……)


(新たな扉を開いたとき、君の心はどんな風に動くのかな)



――――――



 ついにきたか、この日が。

 さきほど奈瑠美さんから、ログイン用のヘッドギアを譲り受けた。

 そして、彼女から渡されたメモリーカード。


『ゲーム内で異常があった時に、体に電子機器の負担をかけないための補助デバイスさ』


 と、彼女は言っていた。

 これもしっかりヘッドギアのスロットへ、装着……と。

 

 長かった。

 ヘッドギアが届くまでの約2か月。

 ラーメンの3分間が長く感じるように、俺にはこの2か月が目覚めを待つ永久凍土に封じられたマンモスのような心地だった。


 ゲームサーバーやゲームシステムの安定性を保つために、ヘッドギアはフェーズを分けて当選者に発送されていた。

 そして、奇しくも奈瑠美さんの順番は最期になってしまったわけだ。


 今回のテストが終わるまでの期間は短いが。

 楽しもう。


「よし」


 ヘッドギアを付けて、準備完了。

 事前に設定した合図を唱えスイッチを入れる二重認証により、ヘッドギアが起動して睡眠を促し眠りへとつく。

 そして睡眠を通して、ゲームへとログインする事ができる。

 いくぞ……。 


「開け、護摩」


 ……思ったより。

 すぐに……眠りへ付けるんだな……。


<生体認証確認中……>


<生体認証同期中……>


<生体遺伝子を登録します>


<失敗しました>


<生体遺伝子を登録します>


<失敗しました>


<生体遺伝子を登録します>


<An error occurred……! An error occurred……!>


 な、なんだ!? 突然けたたましいサイレン音が脳内へと鳴り響きはじめた。

 視界にはエラーを表示するウインドウが展開されては消えていく……。


 なんだ、これ。

 壊れたのか……?


<修復プログラムを起動しています>


<修復完了>


<プログラム変更中……>


<プログラム実行中……>


〇 ようこそ! 入鹿イリシカ飛鳥馬アスマさま。 Christalクリスタル Salvatorサルバトール Onlineオンラインへ! 〇


〇 まずはアバターを生成しましょう。 貴方の選択を教えてください 〇


・カスタムアバター:生態や種族、髪型等あらゆる要素を自分好みにカスタムします。

・ナチュラルアバター:自分自身を元に、アバターを構成します。 プライバシー保護のため風貌がアレンジされます。

・ランダムアバター:ランダム生成します。

【アバターはゲームプレイ後でも変更できます】


 とりあえず今はゲームを始めたいな。

 すぐにできそうなナチュラルでいいか。

 名前は……ネット上でよく使う名前にしよう。


〇 NAME:Iruka このアバターを使用します。 よろしいですか? 〇


 yes.


〇 貴方の選択が、運命を変えます。 準備は良いですか? 〇


 ……yes.


〇 修復プログラムによるチュートリアルを開始します。 良い旅路を! 〇


 まばゆい光が拡散して、思わず目をつぶる。

 光が、止んだ……?


「……ここは」


 消えた光を感じて目を開けば、そこは薄暗くも温かな森が広がっていた。

 ここが……Christalクリスタル Salvatorサルバトール Onlineオンライン

 CSOの世界か。

 ……何か、懐かしい感じがする。

 これからの期待感がそう感じさせているのだろうか。


 先へ進もうとすると視界の端で小さくウインドウが開いていた。

 当面の目標であるチュートリアルがTipsとして表示されている。


<森を歩き最初の敵を倒しましょう!>


 そんなワケで森を歩き半刻程。

 本来ならばすぐに遭遇するはずだが、サポートシステムによると多くの人間がチュートリアルを行った後だからか。

 敵のリスポーン待ちのような状況になっている。


 敵を探しながら、基本的なチュートリアルは終えた。


 最初の職業は強制的に冒険者となる。

 冒険者はあらゆる可能性に満ちた職業で様々なクラスへとアップグレートできる。

 そして、現実世界での自分の行動、肉体面や精神面。

 この世界での振る舞いや戦い方、様々なものが起因し転職先やスキルが解放されていく。

 現実世界をゲーム性に絡めているみたいだ。


 今は戦闘面のチュートリアルだが、これまでのウインドウから得た情報を整理すると……。

 戦闘以外にも生産職やスローライフ、様々な生き方を楽しむことができるだろう。 


 そして、やはり魔物が存在する。

 いつしかこの世界に誕生した、人を脅かす魔物。

 魔物と戦い訓練する事もこの世界の立派な職業となっている。

 あらかたこの世界の仕組みを理解して……。


「おでましか」


 装備していた片手剣を構えた。


 目の前にはスライム。

 最初の戦闘だ。


<落ち着いてスライムの核を狙いましょう>


 なるほど、透けたボディの中心に存在する核を狙えばいいのか。

 まずは敵の出方を見るか。

 山の姿勢・守りの陣。


 数秒見つめ合うとスライムはこちらへ飛び掛かってきた。

 それに合わせてガード兼カウンターの斬撃を浴びせた。

 固い……?

 斬撃は核に届かず、スライムは無傷。

 

 柔らかそうな見た目とは裏腹に弾力もあり、まるでゴムのようだ。

 それでいてこの柔軟性。


 俺は構えを変えた。

 姿勢を低くし、敵へと刃の切っ先を向ける。

 火の姿勢・攻めの陣。


 そしてスライムが再び突進する瞬間。

 俺もそれに合わせて地を思い切り蹴り敵へと突進した。


「よし……!」


 剣の切っ先が勢いよく核へと突き刺さり、スライムは溶けて消えていった。

 切れ味の悪いナイフでも果物に突き刺すことはできる。

 斬撃ではなく刺突で正解だったみたいだ。


 初戦闘の達成感と共に、俺は不思議な既視感を感じていた。


 ……似ている。

 地を踏みしめて歩いた感覚。

 剣を握りしめて敵と対峙する緊迫感。

 まるで自然の中にいるかのような森の香り。


 ここは似ているんだ……あの夢に……。



――――――


<新たなアチーブメントを獲得しました>

カウンターパンチャー

戦闘の心得

しずかなること林の如く

動かざること山の如し


――――――



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