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Data 12. それぞれの現実



Data 12. それぞれの現実



 俺は仮眠をとった後、健康のためにジョギングで体を少し動かし。

 それから、再度CSOへとログインした。


 今はゲームに慣れていない新たな仲間の二人に戦い方や基本的な連携を教えている。

 Mariaはまだログインしておらず、3人パーティーでの冒険だ。


「そうそう、Akiさんは前衛だからスライムを引き付けて攻撃を防ぐんだ」


「は、はい」


 今は連携を学んでいる最中。

 スライムは核を守るゼリーが厄介だけど、動きは単調で連携を学ぶにはもってこいだ。


「後衛のヒーくんは、敵の弱点を観察したりバックアップをしていこう」


「なるほど、明確な役割をもって戦闘に臨めば効率的なんですね」


 ヒーくんがAkiさんへとバフをかける。

 そして、スライムが再び突進するそぶりを見せた。


「今だ!」


 俺の合図で二人は入れ替わって、ヒーくんがスライムの攻撃を防ぐ。

 ヒーくんがスライムの攻撃を引き受け、その隙に攻撃力の高いAkiさんが達人のような鋭い一撃でスライムの核を貫いた。


「やりました!」


「これが連携……こんなスムーズにスライムを倒せるなんて!」


 そして、VRMMOではこれも……


「それじゃ、二人でハイタッチだ」


 少し気恥しそうに、二人はハイタッチした。

 微笑ましい光景だ。

 こういったゲームでは見知らぬ人とも連携が上手くいき、その爽快感や一体感を味わう事も多い。

 ハイタッチやグータッチを通して、その喜びを分かち合うのもこういったゲームの醍醐味だ。


 そしてなぜこんな連携になったかというと。

 ヒーくんは吟遊詩人であり仲間へのバフや補助が担当。

 現状ではどうしても攻め手にかける。

 

 だから剣士のAkiさんが入れ替わって攻撃の主格も担う。


「Akiさんとヒーくんだと、こんな感じかな」


 俺の言葉にAkiさんは少し不安そうに剣を納めた。


「人数が増えたらどうしたらいいのでしょうか?」


「基本的には同じさ。 前衛が攻撃を引き付け後衛が補助や援護をする」


 仲間によって連携方法は異なったりするが、基本はこのくらいだろう。

 後は徐々にお互いの動きを知っていく中で、新たなコンビネーションを見つけたり一体感が生まれたり……。


「後は慣れさ。 俺が教えなくても二人ならすぐに上手く動けるよ」


 ヒーくんは観察力もあり戦闘状況の把握もうまい、バッファーの素質がある。

 Akiさんは……あれはリアルでも何かやっている人の動きだ。

 ゲームに慣れさえすればとんでもない傑物となりそうだ。


「ワタクシは、Irukaさまさえよろしければ、これからもご教授をお願いしたいです……!」


「ぼ、僕からもお願いします!」


 ……。


「二人はギルドには、入らないのかい?」


「ぼ、僕は……」


 少し口を噤んだヒーくんを見かね、Akiさんが話し始めた。


「ワタクシたちは、騙されたりしましたから……Irukaさまみたいなお方とご一緒なら安心です!」


 そうか。

 この二人はβテスト中にパーティーメンバーに騙されてゲーム内で死亡してしまっているんだ。

 ゲーム初心者からしたら、嫌な思い出だろうによくまたログインしてくれたものだ。


「そ、それに……か、カッコイイですもの……!」


 頬を染めて、Akiさんが突飛なことを言いだした。


「へ……?」


「あ! 決してお付き合いしたいとかいうワケではなく……! 尊敬しているんです!」


「それは……嬉しいよ。 俺にはもったいないくらいだ」


 Akiさんは、外の世界をあまり知らないように思える。

 大事に大事にご両親から育てられてきたような……。


 だからきっと、俺をカッコイイと錯覚してしまったのも、物珍しさとか免疫があまりないからとか。

 そんな理由だろう。


 それに……。


「僕……やっぱり言います! Irukaくんとは、これから一緒に行動したいし。 隠すのは卑怯だから……!」


 俺が目を向けた少年のアバターは、意を決したように口を開いた。

 そして自分がなぜここにいるのかを、話し始めていく。


「実は……僕は、ある理由でこのゲームを始めたんです」


「学校であまりうまくいかなくて……家に籠ってしまって……」


「人との付き合い方も分からなくなったんです。 だけど、VRMMOはそういった精神的回復に役立つ可能性が高いという話を聞いて……」


 なるほど……。

 皆、色々な理由があって、このゲームにログインしているんだろうか。

 俺も……自分の足が、ちゃんと動くようになったらいいなという想いでこのゲームをしている。


「ワタクシも人と付き合うのがあまり得意ではなく、ヒーくんの付き添いで……そしたら、思いのほか面白くて、ものすごくハマってしまいました……!」


「Irukaくん。 これからも僕らと共に遊んでくれませんか?」


 皆が何かをつかみ取ろうとする中で、助け合えたらそれはきっと素敵なことだ。


「あぁ。 俺で良ければ、これからも一緒にパーティーを組もう」


「やった!」「やったね! ヒーくん!」


 だが、俺も話しておかなければならない事がある。

 あの時の不気味な男との対峙。

 拠点サルバトーレでの動画の掲載。


「それが、俺がプレイヤーギルドに入らない理由だ」


「あの時にあんなことが起こっていたんですね……」


 二人は、それでもいいだろうか?

 きっとそれのせいで、これからゲーム内で嫌な思いをすることもあると思う。


 それを伝えたら、二人は勢いよく立ち上がった。


「もちろんです! 僕は、あの時の勇気を誰かに……今度は僕の番ですから!」


「もちろんワタクシも、IrukaさまとMariaさんとプレイしたいですから……!」


 俺は二人の手を取って立ち上がった。


「ありがとう、二人とも」



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