Data 10. Chris system.
Data 10. Chris system.
「ここが、クリスタルの洞窟か」
俺はMariaと共にクリスタルの洞窟へと赴いていた。
辺りには様々な色のクリスタルが、煌びやかな瞬きを放っている。
そして俺たち冒険者は、ここでクリスシステムを発現する事ができる。
ここは冒険者協会へと加入した者が入ることができ、その冒険者協会が所有する洞窟だ。
プレイヤーは少ないな。
結局、Mariaと共にクリスシステムを発現させるため日を跨いだ後も徹夜してしまった。
周りにいるのは恐らく、俺たちと同じテスター……もとい徹夜組だろう。
なんだか妙な連帯感が生まれ、周りの人達とも挨拶を交わしてしまう。
洞窟を歩き続け、Mariaは自分好みのクリスタルを見つけたようだ。
何を選ぶかによってシステムの中身が変わるなんてことはないと思うが、願掛けやお祈りみたいなものだ。
「それじゃ、私からやってみるね!」
【Chris systemを起動します】
【個体適応率:測定中……】
Chris system。
その技術は、特殊な力を有した人間の遺伝子を自分の体内へと組み込み、異能を発現させるシステム。
クリスタルには古の魔力を貯蔵、記憶していく作用がある。
そのクリスタルを用いて、プレイヤーは過去の遺伝子を呼び覚まし異能を発現させることが可能になるという。
プレイヤーのもつ特性によって一人ひとつ所有できるユニークスキル。
それがクリスシステムだ。
【新たな遺伝子をインストール中……】
【遺伝子のインストールに成功】
成功したみたいだ。
無事にMariaのクリスシステムが発現した。
彼女は画面を見て小さくうなっている。
「え~と……Chris:無原罪の乙女。 どんな効果なんだろう」
「取得した後も効果が分からないのか。 自分で見つけ出す仕様ってことかな」
「いつか分かるかなぁ。 じゃ、次はIrukaの番だね」
「あぁ」
クリスタルは、どれにするか。
俺は……紫にしよう。
紫苑色のクリスタルを手に取り、プログラムを発動させる。
<Chris systemを起動します>
<個体適応率:測定中です……>
リリスにより、システムの行程が進められていく。
<隔世遺伝が確認されました>
<隔世遺伝を同期中です……>
<遺伝子の活性化に成功しました>
俺のChris systemは……。
「なんだこれ」
「どうしたの?」
「おかしなことになってるんだ」
俺はウインドウを開き、Mariaへと見せた。
【Chris:死η蘇ι0空・##??:SYS_WARNING!】
このように文字化けして、意味深な言葉が羅列されている。
「なんかのエラーかな?」
「問い合わせしてみるか」
リリス。
問い合わせのページが開けない。
なんとかならないか?
<現在、回線の混雑により問い合わせが遮断されております>
わかった、ありがとう。
「今は混雑してだめみたいだ」
さ、思ったより時間を食ったが本日の目標はクリアした。
Mariaはシステム画面を見ながら、俺へと問う。
「これからどうしよっか?」
「やってみたいことがあるんだ」
それは上級職への転職。
俺が目指す魔法剣士には、戦士職を磨くほかに魔法職を磨く必要がある。
戦士のスキル構成は必要な分は、取り戻せた。
あとは魔法職を磨いてテスターの特典を使えば、空白のスキルやアチーブメントが埋まり魔法剣士への転職が可能になる。
という皮算用だ。
「そういえば上級職があるんだね。 私も一先ずそれを目指そうかな」
「Mariaは疲れてないか?」
「ゲーム内で休憩して、今日はオールっしょ! わくわくして全然眠くないよ~!」
「それもそうか、オールか……!」
友人とのオールか、初めての経験だ。
俺はMariaと共に様々な場所へと赴き、魔物との戦闘や採取を楽しんでいた。
すると、突如メッセージウインドウが開かれる。
「運営からのお知らせ……?」
【Christal Salvator Onlineをプレイしていただき。 誠にありがとうございます】
【皆様のおかげで、無事に正式サービスを迎えましたことを感謝いたします】
【サービス開始を記念して、近日イベントを開催したいと思います】
近いうちにイベントとして、魔物を討伐する大会が開かれるそうだ。
人々を脅かす魔物が大量発生し、それを迎え撃つためのイベント。
成績優秀者には目玉特典があるという。
【皆様のご活躍を心よりお待ちしています。 イベント開始まで仲間と共に技や腕を磨きましょう!】
「氣合入るねー!」
「あぁ、良い目標ができたみたいだ」
当面の目標はイベントに向けて、上級職を取る事か。
……懸念点は、プレイヤーギルドに入った方が連携も取れて効率が上がる。
運営からはイベントに際してギルドの加入や作成をおすすめされている。
俺たちは、どうするべきか。
ギルドか……。
ゴブリン討伐の動画、謎のシステムエラー、一番の懸念点はあの不気味な男。
大規模ギルドに入るには、俺という存在は少々手間だ。
「Iruka。 パーティーはどうする?」
「Maria。 俺は……」
「ここまで一緒にきたんだし、一蓮托生でしょ」
「あぁ、ありがとう」
……この子とは、どこかで会ったことあるか?
「あれ? 私たちどこかで会ったことあるっけ?」
「俺も、同じことを思ってた」
二人で小さく笑っていると、さきほどサルバトーレで再開したフレンドから連絡が来た。
<Higurashiからメッセージが届きました>




