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誰があの子を殺したのか  作者: ロゼ


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横山真希1

 それは雪がちらつく日のことだった。


 授業中にふと見た外の風景に違和感を覚えた。


 教室の窓から見える景色は校庭と、校庭の左端に建つ部活棟に、その向かい側の端にあるプール。


 校庭の奥には学校に伸びる真っ直ぐな道と、その道に沿うように立ち並ぶ住宅。


 ぼんやりと外を眺めている私の視界の右端になぜか違和感を覚えた。


 注意深くその違和感の正体を探る。


 視界の右端にあったのはプール。


 夏場は澄んだ水が溜まっていたけど、今は緑色に澱んだ水が落ち葉を乗せながら静かに存在している。


 いつもと変わらないはずの景色だった。


──あれは、何?


 プールの中央にポツリと浮かんだ黒い球体。


 いや、黒と白のボールが半分沈んたような形でポツンとあった。


──何だろう?


 目を凝らしてみても、この教室からプールまでは距離があるためはっきりと確認することができない。


 だけど妙に気になる。


「おい、横山! そんなに俺の授業がつまらないか?!」


 現代社会の担当である町田先生が余所見している私に気づいた。


「何を熱心に見てるんだ?」


 町田先生は好奇心の強い先生で、私が見ていた物が気になったようだ。


「あれ、何ですかね?」


 プールを指さしそう尋ねてみる。


「どれだ?」


「あの、プールに浮いてる丸い物です」


 私達の会話に、窓側の席の生徒達もプールの方を見始めた。


「ボール?」


 誰かが言った。


「にしては変じゃない?」


 その言葉に誰かが答えた。


「ねぇ、あれって、人なんじゃ?」


 誰かが言った言葉に教室が一気にざわめき始めた。


「そんなわけないだろう」


 否定する町田先生だったが、凝視するように窓からプールを見つめている。


「マネキン?」


「誰かのイタズラ?」


「ボールだろ」


「だってボールにしては何か……頭みたいじゃない?」


「怖いからやめようよ」


 窓に張り付くようにクラスメイトが集まって、皆がプールに目をやっている。


 はっきりと確認できない分、憶測が飛び交い、女子の一部は怯え始めている。


「先生、見てきてよ!」


「お願い!」


 怯えた女子が町田先生にそう訴え始めた。


「わ、分かった、確認してくるから、お前ら、騒がずに静かにしてろよ!」


 そう言うと町田先生はプールへと向かっていった。


 しばらくして町田先生ともう一人、グレーのスーツを着た男性教諭の姿がプールの入口に確認できた。


 あのスーツは教頭だと思う。


 いつもグレーのスーツを着ているのだ、うちの教頭は。


 教頭がプール入口の鍵を開け、先立ってプールサイドに入っていった。


 その後を追うように町田先生が続いていく。


 プールサイドであの謎の球体を確認した教頭らしき男性がその場にしゃがみ込んだのが見えた。


 町田先生もその場に棒立ちになっていて動かない。


「え? 何? 何が起きてるの?!」


「あれって、腰抜かしてるんじゃないか?」


「やっぱり人ってこと?!」


 教室内は更に騒がしくなり、半泣きになる女子まで現れ始めた。


 そのうち、教頭らしき人物が這うように動き始め、その男性を支えて立ち上がらせた町田先生と共に校舎の中へと消えていった。


 相変わらずプールには不気味にあの球体が浮かんでいる。


「な、何あれ? どういうこと?!」


 その問いに正確に答えられるものはいない。


 そうこうしている間に校内放送がなり、全クラスが自習となり、教師達全員が職員室に集められた。


『生徒達は教室から出ないように』 


 その言葉でうちのクラスの全員が、あれが人だったのだと悟った。


「む、無理!」


 窓から離れ、外を見ないようにする生徒が現れる中、こんな異様な事態を楽しむ生徒も見受けられる。


「ヤベェ! 警察とか来んのか?!」


「来るだろ! もしかしたらマスコミも来るんじゃねぇか?!」


「インタビューとかされたらどうしよう」


 人が一人死んでいるという現実を前になぜそんなに浮かれることができるのか理解ができない。


 私が見つけてしまったことがいけなかったのかとも思ったが、私が見つけなくてもそのうち誰かが気づいただろう。


 今の私にできることといえば、未だに頭の半分だけを水面から覗かせて、体のほとんどを冷たい水の中に沈めている誰かが、私の知る誰かではなければいいと願いながらも、早くあそこから助け出されますようにと祈ることだけだ。


 

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