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異世界進化論!~チートスキルで全部系統樹的に解決したら、いつの間にか世界革命が始まっていました~  作者: 雨宮 徹


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7/12

餞別、そして旅立ち

「バルトロ様、話があります」


「どんな話でも聞くぞ」



 彼は鼻歌を歌って絶好調だ。今を逃せばタイミングがなくなる。



「俺は進化論の論文が書きたい。この世界に広めるために」


「そのような考えは後回しだ」


「ですが、進化論が認められれば、俺は隠すことなくスキルを使える。そうなれば、王国中が豊かになるはず。資料と資金集めのために、商業都市マルーンへ行きます」


「それはならん! 村を豊かにするのが優先だ」



 この領主をなんとか説き伏せる必要がある。



「俺のスキルは、未知のサンプルに触れることで進化します。この村の限られた作物や木材では、解析の限界がすぐにきます。マルーンのような大都市へ行けば、広大な市場で最新の素材を多く手に入れられます」


「だが、行商人があれば、村にいても、よその素材が手に入る!」


「もし、天才がこの技術を発見したらどうしますか? 先に主張した方に分がある。違いますか?」



 バルトロは言葉に詰まっている。ここで一気に畳み掛けるしかない。



「バルトロ様、あなたは短期的な考え方しかできていない。俺を村にとどめるのは、池の中で小さな魚を釣るのに等しい。ですが、知見が増えれば、国中の富をこの村にもたらすことができます」



 彼の頭の中では、そろばんが弾かれているに違いない。いや、電卓かもしれない。その計算が終わったのか、深いため息をつく。



「どうやら、君の主張は正しいらしい。分かった、マルーンへ行くことを許可する。あそこの商業ギルドへの紹介状を書く。旅立ちは早いほうがいい。支度が済んだら、すぐに出発したまえ」



 他人に先を越されたくないという意図が見え隠れする。



「承知しました。では、後日、受け取りに来ます」





 数日後。俺とサナは招待状を携えて森の泉に来ていた。ここは、俺たちの憩いの場だ。しばらく、来ることはできない。別れを告げていた時、思わぬ乱入者が現れた。それは司祭ウルリヒだった。木の影からタイミングを見計らっていたらしい。



「こんなところに、司祭がなんの用事だ?」


「そう身構えるな。教会に来ないことを咎めに来たわけではない。これを渡しにきた」



 彼の手には、蝋封がされた封筒があった。見れば分かる。この村で最上級の封筒だ。



「マルーンへ行くのだろう? 途中の村に寄るといい。そこには、シズクという名医がいる。その左目を治してもらうといい」


「なぜ、そこまでする?」


「サナは自分を助けた時に負傷した左目が治ることを祈っていた。ならば、司祭として手助けをするのは当然だ」



 俺も改めるべきかもしれない。ウルリヒへの態度を。



「ありがたくもらう」


「治ったなら、神へ感謝するんだな」


「考えておこう」



 俺は素早く「エヴォ・ロジック」を使う。錆びれかけたウルリヒの指輪に。



「その指輪、ジャノマ産のオイルにつければ、錆が落ちる。保証する」


「分かった、試させてもらおう」



 俺たちはマルーンへ歩を進める。進化論を認めてもらうために。

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