第八章 100円高いただの薬草
武器屋から出ると目の前にちょうど防具屋と道具屋があった。僕達は先に防具屋に向かった。
*
防具屋にはたくさんの防具が並んでいた。まぁ防具屋だしね。
「そういえば防具屋に来るのは初めてだね」
「確かにそうだな」
「いらっしゃい」
「こっちのおすすめの商品はなに?」
「うちのおすすめは『強そうな鎧』だ!」
「強そうな鎧?」
「見た目の割には無駄に硬くて安い鎧だぜ!その値段はなんと一個2000円だ!」
今僕の所持金は6400円。ほかの鎧は大体500円だ。
「おじさん。ほかのよりどれくらい硬いの?」
「普通の鎧の二倍くらいだ!大体ブタンクの攻撃を100回くらい多く防ぐことができるぜ」
この鎧はさっきの剣よりは強そうだ。名前そのままのことを言うけど。
「ならこの強そうな鎧を一個買うよ」
「毎度あり」
店を出ようとするとふと気が付いた。さっきまでいた比奈斗がいないからだ。
「比奈斗一体何して……は……?」
振り向くと比奈斗が五個くらい鎧を持っていた。思わず本音が出てしまった。
「どうしたんだよ!比奈斗!」
「せっかくだから個々の鎧を全部買おうと思ってな……」
「いるかよそんなに!?」
「いるだろ?」
「何に使うんだよ!?」
「秘密な」
僕たちは道具屋を出て行った。次は道具屋に行った。しかし、見た限りほかの村や町とほとんど変わったものはなかった。
「ほとんど同じだね」
「そうだな」
「特徴ないね」
「そうだな」
「ふざけるな!うちの方がほかの町より安いぞ!」
黙って聞いていた店主が僕たちに向かって叫んだ。
「それに、うちにはどんな状態も直すことができる特別な草がある!」
店主が少し自信がある顔で僕たちに勧めてきた。
「どんな状態も直す草だって。マジで草」
「お前はそれを言いたいだけだろ!」
比奈斗が店主を馬鹿にしている。比奈斗はこの店主に過去に何かされたのだろうか……。
「ていうかこれ見た目からしてどう見ても100円高いただの薬草にしか見えねぇだろ!」
「そんなに疑うなら試してみるか?」
「上等じゃおらぁ!」
店主は比奈斗に薬草を渡した。
「こんな草食ってやる!」
比奈斗が薬草を食べた。すると、さっきまでの傷が回復していった。
「これがただの薬草だ。しかしこいつは少し違う」
店主は懐から一本の杖を出し、比奈斗に叩きつけた。
「何しやがる!このオッサン!?」
「『ポイズンステック』食らった相手は毒状態になる……」
店主はにやりと笑った。いやこの二人どっちとも性格クソだな!?
「さぁお客さん。この100円高いただの薬草を使わないと助かりませんよ」
この店主自分で100円高いただの薬草って認めやがった!でも今はこの100円高いただの薬草を信じるしかない!でもこんな100円高いただの薬草を信じれるはずが……。
「こんな草食ってやる!」
「フツーに食いやがったぁぁぁぁ――!!」
すると比奈斗の毒がどんどん治っていく。
「すげー!こいつ100円高いただの薬草じゃなかったのか!?」
「そうだよ!こいつは100円高いただの薬草じゃないんだぜ!」
100円高いただの薬草100円高いただの薬草ってこいつらうるさ……。いつの間にか店主と比奈斗は仲良くなっていた。
「この草、100円高いだけで命が助かるって……もはや命の値段が安すぎるだろ。まさかのワンコインって……」
「オッサン。ここの100円高いただの薬草。全部もらおう」
「ああ。お前ならいつでも半額にしてやる」
結局比奈斗は100円高いただの薬草を半額ですべて購入した。まぁ半額で買えたし結果オーライか。やっぱりポテチがない。店長曰く謎の人物がすべて買い占め、生産工場も抑えられているらしい。しばらくはポテチを食べられなそうだ。
道具屋を出ると宿屋に向かった。この町にもご親切にわーぷ君が置いてあったので。それで家に帰って今夜は寝ることにした。
*
次の日ラジングへ戻ると100円高いただの薬草達の詰め合わせなどを持った比奈斗が宿屋の前で待っていた。
「今日は情報収集をしよう!」
「そういえばカニスへの道を教えてもらわないといけないからね。」
「とりあえず道具屋に行って聞いていこう!」
「また行くのかよぉ―――!」
「オッサン!」
「おー!君か!今日は何のようだい?」
「カニスって町知ってるか?」
「知ってるぜ!うちの友人ちょうどカニス出身なんだ!」
「ありがとう店主さん!」
僕は店主にお礼を言った。店主さんは場所を知らないらしいので店主は友人を呼んできた。僕たちが店主の友人を見たときにびっくりした。なんとあの無能な剣を売っていたぼったくり武器屋の店主だった。
「やぁ普通の剣三つを買ったお客さん」
「一言多いわ!!」
「せっかくだから地図あげよう!」
「ありがな!店主!」
結局武器屋の店主から地図をもらったので。そろそろ行くことにした。
「《カニスに近くは最近スルナトが大量発生》しているから気をつけろよ!」
「はーい」
僕達はマキシイに乗って、ラジングを出て行った。あそこの店主のインパクトやばすぎたな。




