第六章 出発
カニスの場所を知っていると思って、上吉さんに聞いてみた。
「上吉さ――ん」
「どうしたんじゃ?」
「カニスって街知ってる?」
「知っとるぞ」
「場所わかる?」
「……知らん」
「……え?」
「町の名前は聞いたことがあるが場所は知らん。……じゃがお前達が向かった方向の村に聞けばわかると思うぞい」
「ありがとう!上吉さん!」
上吉さんから情報を聞いた後、比奈斗に伝えるため二階に上がった。
「比奈斗ー」
「どうした?」
「僕たちが行った方向にカニスがあるらしいよー」
「わかった。今日は寝て明日出発するか!」
「了解!……なら帰るね」
「……は?」
「僕は一旦帰って明日また来るね!」
「ああわかった」
そう伝えて、僕は家に帰った。
*
翌日。比奈斗の家に行くと、見知らぬ中年女性と上吉さんが優雅に話していた。とりあえず、比奈斗に聞いてみようと思い二階に上がった。
「比奈斗ー。一階にいる人って誰?」
「あー。照馬に話してなかったか」
「?」
「今日は俺の母さんが帰ってくる日だったんだ」
「へー。なんでそんなに帰ってこないの?」
「仕事先が遠いから休みが取れた日しか帰ってこれないんだ」
「そっかー。……もしかして!ポテチを持っていたり――」
「しないな。そもそも今手に入らないだろ」
「それもそっか……。それで大好きなママと仲良く過ごさなくていいの?」
「何言ってんだこいつ。全人類マザコンだったら反抗期なんて単語存在しねぇだろ。ほら行こうぜ」
「…………そうだね」
僕達は準備をして一階へ行った。一応僕は上吉さんと比奈斗の母親に挨拶をして出発した。
*
「とりあえずここから一番近い『ラジング』って街へ行くぞ!」
「雷が沢山落ちてきそうな名前だね」
「その通り。その街は常に雷雨が多いそうだ。それに周辺にはそこだけに生息するモンスターがいるらしい。雷系の攻撃に注意だな」
どうやら比奈斗は先に調べていたらしい。
「今回はどうやっていくの?」
前回の自転車は壊れてしまった。故に超高速での移動ができない。すると比奈斗は庭から何かを連れて来た。
「こいつで行こう!」
比奈斗は馬らしき生物を連れてきた。
「これは……馬……なのか?」
「馬の亜種だな!『マキシイ』だ!ここら辺に生息する生き物だな」
どうやらこれに乗って出発するようだ。僕達は一匹のマキシイに乗って出発した。
*
比奈斗の家を出て二分ぐらい分ぐらい立つと地面が隆起して骸骨が這い出てきた。骸骨は僕達を見た途端丸腰のままこちらへ走ってきた。骸骨の魔物、スルナトだ。
「出てきたよ比奈斗!」
「そうだな」
比奈斗は魔法を繰り出した。
「ロック!」
比奈斗が唱えると。スルナトがいる地面から急に大きな岩ができた。その衝撃でスルナトが吹き飛んでいった。
「これで一旦は大丈夫だ」
土魔法は想像より強いことに少しビックリした。
「土魔法って結構強力なんだね」
「そうだな。基本的には岩とかを作るのに特化しているが、その衝撃を利用して攻撃することもできる」
「それならほかの使い道も多いの?」
「もっと上達したら壁を作れたり、岩を敵に刺す技とかできるらしいぞ」
「岩を……刺す……⁉」
僕は土魔法は強いけど物騒な技が多い属性ということを知った。
*
そのまま進んで行くとだんだんと周りが暗くなってきた。
「夜になった!?」
「少し違う」
比奈斗が言うと、雷が周りに降ってきた。そこから電気を纏ったスライムが出てきた。
「これが、ラジング周辺によく沸くモンスター『スライジン』だ」