第四十四章 心のこもっているであろうお礼
町は人々の熱気で溢れかえっていた。僕達が町の中心にある噴水へ向かうとたくさんのガーデンテーブルと料理を堪能する町の人たちがいた。僕達に気が付くと町の人たちから細マッチョの男がやって来た。
「お前さんが怪王人を倒したって噂の男だな?」
「は、はいそうですけど……」
強気の質問に困惑しながら答えると男は急にその場で土下座をした。
「ありがとうございます!!これでまた仕事に励むことができます!」
急な土下座に驚愕していると入夏が僕に耳打ちをした。
「(この人は子供のころから漁の仕事に励んでいる人なのよ。だから仕事に励みすぎて国の経済の三割はこの人が支えているの)」
こりゃあすごい人に感謝されたぞ。僕は漁師の男に笑顔を見せる。
「これからも仕事をがんばってくだい!」
「はい!わかりました!!」
男はそのままどこかへ去っていった。
*
「これも食っていきな!」
「そんなものよりこっちよ!」
「はいどうぞ!」
「遠慮せずにどんどんどんどん!」
僕は今、手元に大量の食事が載せられている。比奈斗は僕に呆れた顔を見せる。
「ったく『ここにある食事ここからここまで全部ください!』なんて言ったらそうなるにきまってるだろうよ」
本当にその通りだ。僕は噴水から少し離れた所のガーデンテーブルに座る。そして横に比奈斗、正面に入夏が座った。僕はとりあえずもらった食事を全てテーブルに置く。
「ここまで祝福されるとはな」
「何人も行方不明者が出て特産品にも支障が出たらそうなるわよ」
僕達がそんな他愛もない話をしていると僕達の所へやってくる者がいた。
「いましたよこの人です」
声のする方向には子供の集団と禍々しいオーラを放った大人がいた。その姿には見覚えがある。魔族の特徴的な藍色の肌、禍々しい赤いツノ、そして漆黒の鎧とマントを見に纏った男だ。周りにいるのは少年二人と少女一人。これは、まさか……!
「ダファキン!?」
「はい。照馬様や比奈斗様のおかげで無事任務を終えることができました」
「俺達が力になれたならよかったぜ!……それで、後ろにいる人たちは?」
比奈斗が問うと後ろにいた先頭の少年は堂々と前に出てきた。
「俺は伊予島 竜弥!それでこの頼りなさそうなのが俺の弟、伊予島 志埜、そして、見るからに金持ちそうなこいつは功刃 多香子だ」
「ということはダファキンを雇ったのが彼女なの?」
入夏が問うと功刃 多香子と名乗った者は顔をしかめながらダファキンに言った。
「もしかして、また他人に言ったの?」
「……はい」
「なんでそんなすぐに情報を漏らしちゃうの!魔王!私が不審者に狙われたのが何回だと思ってるの!?いままでで百三回よ!簡単に情報を漏らしたらすぐに情報が拡散されて、私を狙う者が現れるかもしれないのよ!」
「すみませんでした多香子様。しかし今回は他の人と協力するために自己紹介を
する必要がありまして……」
多香子といった少女金持ちなことで少し慎重な性格っぽい。ダファキンの話を聞くと少女が僕達へ頭を下げた。
「皆様、うちの魔王が何か迷惑かけていませんか?もしあるなら今ここで謝りたいんですが……」
どうやらちゃんと礼儀はある人っぽい。だけど言ってることは保護者みたいだけど。僕は少女へ笑顔を見せる。
「いやいやそんなことありませんよ!むしろ活躍しすぎて感謝したいくらいですよ!」
「やっぱりお前んちのボディガードは強すぎると思うんだよ」
「それくらいの戦力がないと安心できないのよ!」
「だからって、僕はそこまで強力な人じゃなくてもいいと思うんだけど……」
「そんなことより!KAIZIN達を討伐してくれた皆さんに俺達がお礼をしたいんですけど」
竜弥と名乗った少年が提案してきた。比奈斗は直ぐにその言葉に食らいつく。
「いいのか!?」
「はい、狭いですがうちで少しパーティーを開きませんか?」
「僕は別に構わないんですけど……」
僕はガーデンテーブルに置いてある大量の料理を一瞥する。料理の存在に気付いたのか少年は少し考えてから僕達に提案をしてきた。
「それなら!あなたに俺が冒険に役立ちそうなものをあげます!」
「まじかよ!?」
比奈斗が興奮して見せると少年は眉間にしわを寄せて比奈斗を見る。
「いや、あなたじゃないんで、今この目の前にいるお兄さんにいってるんです」
「扱い酷ぇな!」
「とりあえず俺んちに来てください!」
「わかりました!」
僕達は少年の向かう方向に進んで行った。




