第四十一章 ドライス!?腕がぁ――っ!?
「ドライス!腕大丈夫!?」
「今更過ぎるだろ!どれだけ俺に興味ねぇんだよ!?」
「ホントだスゲー」
「確かに誰も心配してないな」
「火傷の方がインパクト強かったもんね」
「だからってなんで腕は見てねぇんだよ!?」
僕達は地下から上がるとドライスの腕の事を話していた。
「まぁ大丈夫でしょ。魔界のドラゴンなんだから」
「ふざけんな!」
「そんなどうでもいい事よりここからどうやって帰るんだ?」
「どうでもいいだと!?」
「隕石は見た限りもう使え無さそうだしねー」
鮫子さんの言葉に皆が頷く。
「どうしましょうかしら……」
入夏が呟くと颯さんが何かに気がついた。
「この船まだ使えそうだぞ」
僕達の視線は近くに放置されている船に集まる。朽ち果てた船の中にまだ使えそうな船がいくつか残っていたのだ。
「これなら使えそうですよ!」
「本当か!?」
シャチ蔵が近くにあった比較的綺麗な船に乗り込む。僕達も続いて船に入る。
「全員乗りましたか?行きますよー!!」
シャチ蔵の掛け声と共に船が動き始めた。
*
「一旦これで大丈夫じゃろう」
「ありがとうな。繁蔵さんよ」
ドライスはおじいちゃんによって応急処置を施されていた。ドライスはやっと自分の腕を心配してくれる人がいてホッとしていた。因みに船にたどり着いてからおじいちゃんと上吉さんに「ドライスといったか。腕どうしたんじゃ!?」と言われたらしい。
「なんだかいろいろと大変だったな」
「そうだね」
ドライスの言葉に僕は相打ちを打つ。
「それじゃあわしはここで」
おじいちゃんはそのままどこかへ行った。ドライスは椅子から立ち上がる。
「腕も少しは良くなってきた」
「アーソウナンダ」
「冷たいな!?」
「そんなことよりもあれ見てよ」
「なんだなんだ?」
ドライスと僕が向けた先には比奈斗と入夏が仲良く二人で並んでいた。
「おぉっ。これは興味深いな」
「ドライスの腕の百倍くらいね」
「俺の腕の扱いどうなってんだよ……」
「なぁ入夏」
「な、何?」
「怪王人と戦った時『そんな!?比奈斗の作戦に失敗は聞いたことないのに!?』って言ってたけどよ。どれだけ俺のこと信用してんだ?」
「聞いてたの!?」
「それはそうだろ」
「それで、何?『俺の作戦をそれだけ信用してるなんて優しい人なんだ』とか思った訳?」
「それは違うな。第一にお前は優しくない。それに『なんて暴力的な人なんだ』の方があってると思うけどな。……それかなんだ?俺に優しいと思われることがそんなに嬉しいのk―――――」
「誰が暴力的じゃあぁ―――っ!?」
「言ったそばからそれかよ!?」
入夏が比奈斗に殴りかかろうとする。それを彦一とシャチ蔵が必死に止めている。おてんば女王様のツンデレはかなり大変そうだな……。僕とドライスはニヤニヤしながら遠くから眺める。
「それにしても腹が減ったなぁ……」
ドライスの腹が「グウー」と音を鳴らす。比奈斗の話によると檻の中は一日昼に一食のみだったらしい。それは腹が鳴るわけだ。
「戦いはすぐに終わらせるつもりだから食料は持ってきてないなぁ。そうだポテチでも食べる?」
「いやいい」
僕があらかじめ海苔塩工場から回収した袋を差し出すがドライスは拒否する。好き嫌いが激しい奴だなぁ。僕はポテチの袋を開け、食べ始める。まぁここには料理の天才(本人曰く)のおじいちゃんがいるから大丈夫だけどね。
「海になんか食えそうな魚とかねぇかなぁ」
「その事なら颯さんに頼んだらどう?」
「ん?あー。そういえばあいつ冒険家とかって言ってたな」
「だからドライスの腕の行方以外は何でもわかると思うよ」
「人の腕をどれだけネタにすれば気が済むんだよ!」
*
「……ということで食料調達を頼める?」
「いいぞ。伊達に冒険者やってるわけじゃないからな」
「ありがとうな!」
「問題は一つだけ……」
「一体何なんだ?」
「それはドライスの腕の行方だ。あれはいったい何処へ……?」
「お前らいい加減にしろぉ―――!!」
「いいじゃないかいいじゃないか。ほらポテチでも食べて……ね?」
「お前っ!?人の口に勝手にポテチを押し込むんじゃねぇ!!」
「どうしたのー?何の騒ぎ?」
「鮫子さん!」
少し騒ぎすぎただろうか。鮫子さんが混ぜて欲しそうにやって来た。しかし鮫子さんはドライスの腕を見た途端に何か違和感を覚えながら言った。
「腕なかったら体をバランス悪くなーい?」
「何かと思ったらそんなことかよ!?どんだけ人の腕でもてあそべば気が済むんだよ!?」
「そりゃあ館で気が付かなかった分に決まってるでしょ?まぁ大体この話くらいかな」
「やっぱもう一本の腕も切り落とした方がいいんじゃないの?」
「誰が自分から『はいわかりました』って自分の腕を切り落とすんだよ!?」
「さっきからずっとうるさい奴じゃのう」
次は上吉さんに追い打ちをかけられるドライス。
「もう気にしたら駄目だ。……コレ」