第四十章 奪還
「申し遅れました。私は氷貝 鮫子。そしてこっちが沙羅子ね」
「お願いします……」
僕に追いついた皆は階段を降りながら軽く自己紹介をしていた。
「俺の名は蛙王 颯だ」
「俺はアクウル騎士団長の八剣 彦一だ」
「俺はドライス!魔界から来たドラゴンだ!」
「よろしくね。そしてアンタが……。話は入夏様から死ぬほど聞いてるわ」
後ろにいる比奈斗を見て鮫子さんが眉間にしわを寄せる。どうやら入夏から愚痴をほぼ永遠に聞かされているらしい。恐らくただのつんでれだと思う。露骨にいやそうな顔をするわけだ。
「鮫子か。入夏から少し話は聞いている。俺は畑堀 比奈斗だ」
比奈斗が手を差し伸べるが鮫子さんは手を取らなかった。
「あんたがどんな奴かは知らないけど一切信用してないからね!」
鮫子さんがそっぽを向く。比奈斗が眉をひそめる。
「あ?なんだお前初対面の人になんて態度してんだ」
「ちょっと鮫子!」
「なんですか?いつもいつもこの比奈斗って男に愚痴を言い続けるほど不満なんでしょうそれなら一度行ってみたらどうですか!?」
「ちょちょっと鮫子言い過ぎ!」
「一体どういうことだ入夏!?」
さらに入夏に飛び火する。これは段々めんどくさいことになってきたぞ。僕はどうにか話の話題を変えようとあたりを見回す。しかし辺りに壁と階段が広がるのみ。こうなったら……!僕はウォーバーティアを階段に投げた。ウォーバーティアは階段を下りやがて破裂した。その音にみんなが視線を向ける。
「なんか魔物がいるかも……!」
「なら今はこんなことしてる暇はないな」
僕が警戒する素振りを見せると比奈斗は無理やり話を終わらせて周囲に注意を向けた。ナイス比奈斗!そしてこの僕!見たか読者の諸君!道具屋でこの封印されしアイテム|ファイナルクリスタルウォーバー《最終封印水噴射》の力を!
「しかし魔物の気配は一切感じられんぞ照馬」
「「「「「「え?」」」」」」
おじいちゃぁぁ―――――ん!?
なんとおじいちゃんが本当のことを言ってしまった。そんなこと言わないでよおじいちゃん!!僕の努力の結晶がぁ――――!そんなことをされたら僕に一生来るとは思っていなかったレベリアス・エージ(照馬命名)が始まってしまうかもしれない。
「入夏様がこんなにも不満があるのにあなたは一切変えようとしないと!?」
「うるせぇそもそもなこいつが言ってることは大体少し妄想が入ってんだよ!」
「え?それなら『壁ドンなんかされたんだどーマジきもかったー』とか言ったもの入夏様のただの妄想だったのですか!?」
「お前ひとりで勝手に話し盛りすぎだろ!?」
「い、一体何のことかしらー」
比奈斗に問い詰められた入夏は焦りながらも白を切る。鮫子さんは「それ見たことか」と言いたげな顔をする。
「ほら!そんな痛々しい想像を人に言うほど馬鹿じゃないんですよ!入夏様は!」
「グッ」
鮫子さんの言葉で入夏がダメージを受けた。これはもう自業自得だな。
「見えてきたぞ!」
修羅場の中、声を上げたのは彦一だった。さっすがアクウル騎士団長さん!周りをまったく気にしてなーい!もっと気にしてほしいけど……。
彦一が指す方を見るとそこからは光が漏れている扉があった。
「本っ当にあそこなの?」
「ああ、この俺が保証する」
颯さんが自信ありげに言う。颯さんが言うくらいなら大丈夫なのだろう。僕は扉に手をかける。
「開けるぞ!」
僕は扉を押す。扉は「ギギギギ……」と音を立てながら開かれた。
「……これは……!!」
僕の前には謎の機械が置かれていた。その機械はガタガタと揺れると緑色のパッケージの袋が出てきた。袋はレーンの上を流れて行く。僕は咄嗟に袋を取った。
「おおおぉぉぉぉぉぉぉ――――!!!」
見間違えるはずがない。これは五番目に好きな味……海苔塩ポテトだ!ちなみに一番はもちろんうすしお味。あれがやっぱり王道なんだよなぁ。僕は袋を引き千切ると中から金色に輝く一枚の楕円形。僕はそれを口に運ぶ。ジャガイモをそのまま使った味に香ばしい海苔塩がかかりそれが口の中に広がっていく。これは正真正銘の海苔塩味のポテトチップスだ!こんなにもポテチで満足したのはいつぶりだろうか。
「うまい!!」
「怪王人がいなくなった今この機械を手にするものはなくなったな。この機械をお前はどうする?怪王人を討伐に活躍したお前が決めろ」
颯さんが問いかけるが僕の返事は一つしかない。
「この機械をアクウルに渡す!!」
「「「「「「「「「はああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――!?」」」」」」」」」
「何考えてんだお前!?この機械を手に入れたらお前は二四時間三百六十五日ポテチを食えるんだぞ!?」
「僕はただのちっぽけな消費者さ。そしてこの国に渡せばみんなもポテチという感動を取り戻すことができる!!」
「……こいつらしいな」
「そうだな」
「ということで海苔塩ポテトゲットだああああああぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――!!!!!!!」