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Project Potechi  作者: teresi-
39/44

第三十八章 クリーニングをしたかのような光

――スカッ

「あれ?」

 俺は入夏いるかより先に怪王人かいおうじんへ殴りかかったが見事に直前でよけられてしまい拳は空を切った。そこに怪王人は背中から無数の触手を生やし俺を叩きつけた。僕は触手の攻撃によって遠くに飛ばされた。ついでに殺意MAXで走ってきた入夏もついでに飛ばされた。


「うわぁ!」

「何で私もなのよ!?まだ殴ってないわよ!?」

 入夏が解せんと言った顔で言う。もともと殴る気だったのかよ。なら叩かれて当然だろ……。なんで殴った奴だけやり返される認識になってるんだよ……


「くそ。ここからどう動く?」

「KAIZINは照馬に任せてるから終わるまでは連れてこられないわよね……」

「俺が遠くから援護する。だからお前が前線で怪王人と戦え」

「なんでよ!?あんただって一応近接でも戦えるでしょ?」

「非力な魔法使い一人じゃすぐにくたばるんじゃなかったのか?」

「くたばれ」

 俺が尋ねると入夏は気付いていたかのように言う。姫なのに口がとっても悪いなぁ。入夏は先ほどと同じで怪王人へ突っ込む。俺は魔法使いらしく遠方からの援護についた。それにしても後方からの支援なんて久しぶりな気がするな。


「ちゃんと援護してよね。少しでも間違えたら許さないから」

「わかってるさ」

 俺達は慣れた口調で話しながら、怪王人へと歩み寄った。


 ◆ 草野くさの 照馬しょうま ◆


「とぉぉ――――う!!」

 僕は美味呼みなこさんの剣技でKAIZINを一体を倒す。そこに最後の一体が僕に襲い掛かろうとしたが比奈斗が作った残りのゴーレムによってすぐに取り押さえられてしまった。僕は最後のKAIZINへ歩み寄って剣を構えて集中してみじん切りにする。


 これで比奈斗達の援護に行ける。KAIZINを駆逐した僕は比奈斗達へ駆け寄った。

「大丈夫?」

「ああ、だが……」


 入夏が攻撃を止め、即座に僕たちの元へ帰ってくる。なぜなら怪王人からとてつもないほどのオーラが出ていたからだ。

「見ろ!怪王人の体が……!」

 怪王人の体が発光していく。そして色あせた色の怪王人が怪王人から出てきた。

「分身したぞ!?」

「俺様は二体に分身した。分身体のHPは低いが簡単に量産でき、さらにHP以外は俺様のステータスと全く同じになっているのだ!」

「なんだって!?」

「さぁ増殖し続ける俺様達の力によってこの場にひれ伏すがいい!いいか?この部屋がお前たちの墓場だ!!」

 口元を歪ませた怪王人が二体同時に僕達に走ってきた。


「来るな!来るんじゃねぇ!!」

 比奈斗は逃げ出した!僕は比奈斗を叫びながら追いかける。

「おいお前、逃げるんじゃねぇ!!お前は倒しても経験値多くないだろ!!」

「ちょぉ――っと待ちなさぁ―――い!!あんた達!サラッと戦闘放棄してんじゃないわよ!!」


 入夏が僕達を追いかける。さらに背後から怪王人が追いかける。

「なんだこの追いかけっこは!?」

 しかし、この部屋はあまり広くない。僕達の行き先はもう行き止まりだった。

「やばい!このままじゃダメだ!!」

 僕が無理だと思ったその時――



「イナズマート!!」



 聞き覚えのある老人の声が部屋中に響き渡る。途端に空襲のような数の雷が僕の目の前にいる怪王人に直撃した。怪王人はやがて動かなくなる。

「ひいぃぃ――――っ!!」

 僕は目の前に落ちた雷を見て腰を抜かす。その魔法を唱えたのはおじいちゃんだった。

「大丈夫か!照馬!?」

 おじいちゃんが僕に駆けつける。他にも僕がKAIZINとの戦闘を任せたみんなが駆けつけていた。


「シャチ蔵に鮫子ざめこ、それに沙羅子ざらしじゃない!?どうしてここに?」

「もちろん助けに来ただけですよ!」

 シャチ蔵が入夏の質問に答えている。他の方を見ると比奈斗と上吉さんが感動の再開を果たしていた。


「じいちゃんじゃないか?何でこんなところに!?」

「もちろん照馬君達と助けに来ただけじゃよ!」

「あ、あ、あれは……!!」

「沙羅子、まさか……!アイツが?」

「そ、そう……!」


 それを聞くと鮫子は倒れた怪王人へゴミを見るような視線を向ける。

「そういえば上吉うえきちさん!あのKAIZINは?」

「ああ、あれか?」

 上吉さんは扉の奥へ行くとカピカピに干からびた死体を持ってきた。

「わしの光魔法を当てたらこうなったんじゃ」

「「「!?」」」

「(誰も全くわかんないんだけどね?沙羅子はなぜか平然な顔だったんだよ)」

 鮫子さんが僕に耳打ちする。それならその事までわかっていたってことなのか?そういえば怪王人は……。

 僕が怪王人の方を見るとクレーターのようになった床に怪王人が倒れていない。《《倒れていない》》?なら一体どこに?


「ここだ」

 部屋の隅に怪王人がいた。僕達は透かさず武器を構える。

「イナズマートを喰らってまだ生きているとは……!」

「なかなかその爺もやるようだな……。それならさらに分身体を作らないとな……」

「みんな!怪王人が分身する前に攻撃を―――」



「もう遅い。分裂しろ!我が分身体よ!」



 怪王人の体から色あせた怪王人がたくさん出てくる。一,二,三,四,五……六。

「これじゃあ数が多すぎるわ!」

「どうする!?」

 比奈斗が僕に問いかける。僕はニカっと笑って見せると僕達の周りに足で大きな円をなぞった。そこから壁のような業火が出てくる。



「フォール!!」



 しかし怪王人が総攻撃すると僕のフォールは弱まっていく。

「みんな、ファインの時間だぞ~!!」

 ファインを使える僕とおじいちゃんはフォールに手をかざす。ファイン使える人少ないな……。



「「ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!」」



 ファインが当たるにつれてフォールは火力を増し、触れた分身体を焼き焦がした。かなりの数が減ったと思った僕はファインを止める。残りは二十体ほど、そこに上吉さんが前に出て天に手をかざす。


「何する気なんだ?じいちゃん?」

「上吉、まさかあの技を使う気か?」

「まぁそういう事になるかのう……」

 上吉さんの言葉を聞いたおじいちゃんは僕達に叫ぶ。

「みんな!伏せろ!」

 僕達は縦に顔を振るとその場にしゃがみ込んだ。



「聖なる光をあびて干からびるがいい……。クリーニングクリア!!」



 上吉さんの手に目のくらむほどのまばゆい光が球体を作る。そして地面に叩きつける。すると爆発のような光が部屋を包み込んだ。

「目が!目がぁ――――っ!!」

 比奈斗が目を押さえて喚いている。どうやら光を直視してしまったらしい。

「大丈夫か!?それより見てよ!」

 僕達が顔を開けると分身体はクリーニングをしたかのようにきれいさっぱり消えていた。あとは怪王人だけが残っている。

「これは、お、恐ろしい……!」

「あとはあいつだけね!」

 入夏が先陣を切って怪王人へ走る。その時、入夏達は僕の元へ戻ってきた。

「どうしたの?」

「アイツ……。生きてるわ!」

「え!?」

「なんじゃと!?」


 怪王人は光を直接浴びて倒れている。しかし急にむくっと起き上がった。

「フフフフフフフフフフフフフフフフフ…………」

「なんだ!?」

「なかなかやるではないか。ならば俺様はあの技を使わないとな」

「何をする気じゃ?」

「お前達と戦うにはここは狭すぎる。故に館ごと崩れてしまえ!」

 怪王人がブツブツと詠唱を始める。僕は比奈斗の所に行って肩を思いっきり揺すった。



「ど、ど、ど、ど、どうしよう!?とりあえず阻止しよう!ファインファインファインファインファインファインファインファインファインファインファインファインファインファインファイン!」



 僕は怪王人ファインを放ったしかし怪王人の体にファインが当たった途端に明後日の方向に跳ね返って行った。

「やばいよ!?このままじゃ無理だ!」

「俺に任せろ!」


 比奈斗は「エウォーグ!」と叫ぶと比奈斗の体が宙に浮かんでイナズマートによって破壊された天井から外へ出る。そういえばスカルキングの時にもあんなことしてたな。

「そんなことして一体何するつもりなんだよ?」



「ロッパー!!」



 比奈斗が唱えると僕達の目の前に岩が生成され、やがて壁となった。

「すげぇ!!……それでなんで飛んだの?」

「こっちの方が狙いが定まりやすいからだよ!!」

 比奈斗が呪文を解除して僕達の元へ戻ってくる。絶対何も考えずにとりあえず飛んだだろコイツ……


「どんなに強力な壁を作ろうが無駄だ。この技にはなぁ!!」

「来るぞ!皆、気を付けろ!」

 比奈斗が皆に知らせる。僕はすぐに怪王人の放つ技に備えて構えた。



「館よつぶれて奴らを倒すがいい!!ファイナァン!!」



 怪王人が指を鳴らすと普通の爆発が可愛く思えるほどの大爆発が起きた。

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 爆発によって柱が破壊され館が崩れていく。僕は落ちてくる瓦礫をうまくよけようとしたが二階の瓦礫をよけることができずにそのまま僕は館の瓦礫に埋もれてしまった。



――数分後

 僕を覆っていた瓦礫が急に振り払われる。瓦礫に外にはなんと僕以外皆いた。どうやら僕以外皆は無事だったらしい。

「やっと見つけたわ」

「怪王人は?」

「さぁ?私たちは見つけてないけど……」

「もしかして自爆したのかな?」

「そんなんだったら楽なんだけどな……」

「見て。あそこ!」

 鮫子さんが急に僕達に知らせる。僕達はそっちを向くと無傷の怪王人が立っていた。

「お前生きたのか!?」

「勿体ないが使うしかないな」

「なんだそれ!?」

 怪王人が懐から蓋をした一つのフラスコを取り出す。中には黄緑色でドロドロの液体が入っている。なんだか気持ちが悪い。

「なんだその気味の悪い薬は!?」

 比奈斗が思っていたことをすべて言ってくれた。怪王人は口元を歪ますと笑いながら語り始めた。

「少し前、カエ~ル様に少し容姿が似たゴツイ化け物が急に俺様の前に現れた。俺様は侵入者だと思い警戒したが、その男は魔王カエ~ルに頼まれて持ってきたと言った。その時に俺様が渡されたのがこれだ。こいつはどうやら使用者の潜在能力を上げ、化け物へと変化させる力を持っているらしい。まぁこの薬に名前を付けるなら。…………進化薬だな」


「進化薬……だと……!?」

「俺様がこいつを使うと確実にお前達に勝てる!」

「切り札を隠していたとは……!!」

「それじゃ使わせてもらうわ」

 怪王人はドロドロの黄緑色の液体を飲むとフラスコをポイ捨てした。

「おいお前!ポイ捨てするな!誰がこの後に掃除すると思ってんだ!」

「そこかよ、お前!?」

 その時、怪王人の体に変化があった。背中からは触手ではなく長い腕が新たに六本生え、筋肉が急激に増し、顔面凶器の様な鋭く大きな口になっていた。その姿は化け蜘蛛そのものだ。


「化け物だぁ!?」

「フハハハハハハ!!これが俺様の進化した完全体だ!!怪王人、……いやそんな名前はもうおしまいだ!この我が名は、怪王走人かいおうそうじん、この世で最強の怪物なのだ!!」

 蜘蛛のように変化した怪物が笑いながら言う。僕は急な変化と名乗りに頭が追い付かなかった。

「どうしましょう!?」

 シャチ蔵が僕に聞いてくる。どうしよう!これはもう逃げる!?でも足は見るからにムキムキですぐに追いつかれちゃう……。ならば!これしか策はない!

 僕は剣を抜くと怪王走人に構える。僕の急な判断に気が付いた皆は、目を丸くして僕達を見た。


「照馬!お前そんなすぐになんで決めれるんだ!?逃げるって手もあるだろ!?」

「駄目に決まってるだろ、逃げたらすぐに追いつかれて終わりだ、こんなところで逃げようとするバカなんていないよ」

「お、おう。そうか!ならどうするんだ?」


 比奈斗の問いかけに僕は自信満々の顔で答える。

「僕一人でこの怪物を討伐する」

「何言ってんだお前アホか!」

「痛っ!?」

 比奈斗の拳が僕の頬に突き刺さった。

「何するんだよ!」

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