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第三十七章 ビリッ!

 比奈斗ひなとを口に含んだ怪王人かいおうじんは比奈斗を咀嚼する。

「なんて……ことを……!」

「心配するな。次はお前だ」

 怪王人が比奈斗を飲み込もうとしたその時だった。

「ん?なんだぁこれは?」

 怪王人が咳き込み始めた。そして比奈斗を口から吐き出す。その時私はこの比奈斗は人間ではないことに気づいた。何故なら…………!


――ビリッ!


 比奈斗の肌からなんと赤く染まっている綿が出てきた。そして私はこれが彼の戦略であることに気がついた。怪王人は動揺を隠しきれずに困惑する。

「人形だとぉぉぉぉ――――!?」

 なんとこの比奈斗は人形だったのだ。

 怪王人は激怒しながら比奈斗の人形を踏み潰す。

「誰だぁ?この俺様に細工したやつは!?」

 怪王人は怒鳴り散らかすが、その中で冷静な声が部屋中に響いた。

「ハハハハハハハハハハ!!!!」

 その男は姿を見せた。男は私の見覚えのある姿だった。薄紫の髪型で、白い服の上に黒いマントを着込んだ一人の男だった。隣には比奈斗もいる。


「すり替えておいたのさ!」

「貴様ぁぁぁ――――!!」

「KAIZIN退治の専門家、照馬しょうま!」

 比奈斗は後ろで「でーててーん、でれれ!」とBGMを口ずさむ。

「あんた達……!」


 比奈斗は怪王人へと向かって対峙したその時、私を縛っていた縄が切られていた。地面には石が刺さってる。


「言っただろ?ロックで助かるってな!」

 一応嘘は全くついてない。しかし比奈斗は押されている。そして比奈斗を吹き飛ばした怪王人は照馬に問う。


「何故だ!?何故お前はコイツらを助けれた!?」

「そんなもんただのカラクリさ。これだよ、これ」

 照馬がポケットから謎の機械を取り出す。


「こいつはDXわーぷ君だよ、比奈斗の発明品さ。ただ近くの人と何かを入れ替えれる品物さ、始めは共食いさせようと思ったけど……。あいにくいい身代わり人形をつくってくれたからね!」

「DXわーぷ君だと?馬鹿げた名前しやがって!」

 激怒している怪王人に比奈斗は煽る様に言う。


「このアイテムはなぁすこし入れ替わる時に光に包まれるだよ!」

「それって!?」

 まさかそのためにあの男は入れ替わるタイミング丁度にランタンを飛ばせと言ったということだ。……何か私だけ作戦からはぶられてる気がするんだけど?


 ◆ 草野くさの 照馬しょうま ◆


――数分前

「そろそろ見えてきたよ!」

 前方に木造の館を発見した僕は皆に知らせた。近づくにつれて段々と館が大きく見える。

「もう止まった方がいいんじゃないか?照馬」

「ブレーキが効かない!?」

「ここは曲がりましょう!」

 高度を下げながら僕は左にハンドルを切る。しかしスピードは落ちずにそのまま進んで行く。


「ぎゃぁぁぁ――っ!!!」

 そのまま館に直撃した。僕が外に出るとそこはリビングだった。

「無事についたねー!」

「呑気すぎやせん!?」

 鮫子ざめこさんが僕に叫ぶ。呑気とは失礼な!

 僕は比奈斗達がどこにいるか探索しようとしたその時だった。

『さぁどっちだ?先に食われるのは……?』

 どこからともなく怪王人の不気味な声が聞こえる。


「どこだ!?」

『あんたがいちいち先に食われる必要ないでしょ!』

 焦っている入夏いるかの声が響く。今の声の場所は……

「この穴だ!!」

「ちょっとまってくださいよー!」

 僕の後ろからみんなが付いてくる。僕達は穴の中へ進んで行った。しかし目の前にKAIZINが八体ほど現れた。

「お前たちに構ってる暇はねぇ!!」

 僕はKAIZINと対峙しようとしたその時――



「イナズス!!」



 魔法を唱えたのは何とおじいちゃんだった。天井を突き抜いて無数の落雷がKAIZINに直撃する。直撃したKAIZINは雷によって麻痺をしたのか動かなくなった。みんなが残りのKAIZINに対峙する。そこでおじいちゃんが叫ぶ。


「ほれ!早く行かんか!!」

「わかった!ありがとう!」

 僕はKAIZINを無視して先へと進んだ。僕は近くに穴が開いてる牢屋らしき扉を見つけた。そこから声が聞こえる。僕はバレない様にそっと中に入った。

「ああ、俺が先だ!」

「ああそうか。なら永遠にさようなら!!」

 怪王人が比奈斗の頭を掴む。そこだ!僕は袋から織百(おと)さん製の比奈斗人形を取り出した。そしてポケットから比奈斗からもらったDXわーぷ君を取り出して比奈斗にかざす。そして僕が使う寸前に入夏が近くのランタンを蹴り上げて。怪王人の視界を遮る。ここだ!僕はDXわーぷ君を使用する。そして比奈斗人形と比奈斗(本物)との交換に成功した。



「――ということさ!」

 僕は今までの経緯を入夏に教えた。僕の話を聞いた入夏がおずおずと尋ねる。

「ってことはさ……」

 入夏は少し迷ってから僕へと小声で尋ねる。

「(比奈斗も見ていたってこと……?)」

「そうだけど。……どうかしたの?」

「あああああ……!!」

 僕の言葉に入夏は紅潮する。僕は気が付いてしまった。これってまさか!比奈斗と入夏って……!?僕は二人をからかう方法を思いついてしまった。


「フフフフフフフフフフフ……」

「気持ち悪い!……ていうかいつまで比奈斗を一人で戦わせてるのよ!!」

「そんなら加勢にいきますか」

 僕は思いっきり地面蹴る。そして怪王人の目の前へと行く。

「は、早い!?」

「前回とは別人じゃない!?」

 どうだ?思い知ったか……!?これが僕の反復横跳びの特訓成果だ!はーっはっはっはっはっはっは!!

 僕は剣を抜いて振るう。剣は怪王人の腹を切った。


「ぐあぁぁぁぁ!?」

 怪王人の腹からドス黒い血が出る。怪王人は片手で腹を抑える。怪王人は後ろに下がる。しかしそれを予測した僕は逃がさない。



「ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!ファイン!」



 ファインが怪王人に直撃する。途中から触手によって防がれたが……。気にしない気にしない!


「僕達は、ポテチのためにここまで来たんじゃない。仲間のために、ここで終わらせるんだ!」

「こざかしい小僧だ。しかしそれもここで終わらせる」

「照馬!こいつはポテチ、海苔塩味を収めてる!奴を倒せば海苔塩味は奪還できるぞ!」

「なんだって!?許さないぞ!」

「許してもらわなくて結構。KAIZINどもかかれ!!」

「KAIZIN達は僕に任せて!比奈斗と入夏は仲良く恨みをぶつけてね♡」

「言葉から殺意を感じるのは私だけか……?」

「いや、俺からも嫌な予感がする……。とりあえずヤバ男(照馬)にKAIZIN達は任せようぜ!」

「誰がヤバ男じゃあ!?」

「ひっ!?怪王人覚悟しやがれ!!」

 比奈斗達は急いで怪王人に攻撃を与える。

 ヤバ男とは失礼な!僕はただの純粋な少年だぞ!?

 ヤバ男はともかく今はこのKAIZIN達を処理しないといけない。奴らが美味呼みなこさんの言う通りキメラ(異質同体)ならこの攻撃は効く!=勝ちだ!


「食らえ!」

 僕は高速でKAIZINの体を切り刻んだ。しばらく攻撃を与えているとKAIZINは肉片になってた。僕は剣を肩に乗せていう。

「やっぱりキメラ(異質同体)だったのか。さぁ次は誰かなぁ?」

 KAIZINがビビって止まる。そこに僕は高速で切り刻んでまた一体肉片と化した。

「このままでやればすぐに終わる!」

「な、なにぃぃぃ!?」

 怪王人は驚愕している。ふっふっふ!思い知ったか?この僕の力を!?

 僕は自分の力を過大評価しまくるのであった。



 ◆ 畑堀はたぼり 比奈斗ひなと ◆


「あいつ……!やべぇ!!」

「うん……。そうね」

 俺と入夏はドン引きしている。そうあの男、ヤバ男、もとい照馬に。

「あいつに任せるんじゃなかったぁ」

「それはそうね」

「おい!!」

 俺の目の前に触手が振り落とされる。なんと怪王人が激怒していた。


「どうした?」

「どうした?じゃねぇーよ!!この俺様を無視して呑気に観戦してんじゃねぇ!!」

「そういえばお前にやられた仕返しをしてやらねぇとなぁ」

「覚悟しなさいよ?」

 入夏は怪王人へと駆け出して腹部に向けて拳を振り下ろした。しかし、怪王人は余裕の表情で避けた。そのまま入夏のラッシュが続くがすべて怪王人は避けた。

「お前の攻撃が俺様に当たるわけn――グハッ!?」



 怪王人がうめき声をあげる。なんと怪王人の背後から拳を振り下ろした照馬がいた。


「お前なにしてんだ!?」

「見ての通り不意打ちだけど?」

「話ぐらい聞いてあげろよ!」

「フフフフフ……」

 俺達が話していると怪王人がむくっと起き上がった。

「フハハハハハ!!」

「なんだコイツ!?急に笑い出したぞ!?」

「こんなに面白い相手は初めてだ!俺様も少し本気でかからないとな!」

 途端に照馬の眼前に行く。そのスピードは物凄く早く目で視認できないほどだった。


「速い!?」

 怪王人が照馬に向かって拳を顔面に突き刺す。顔面に当たった照馬は五メートルほど飛ばされた。



「スドーム!スドーム!スドーム!スドーム!スドーム!」



 地面が隆起しゴーレムが五体現れた。俺はゴーレムに命令をする。

「全員怪王人へかかれ!」

 ゴーレムは俺の命令を聞き終わると怪王人へと向かい攻撃を与え続ける。しかし、怪王人はゴーレムを手刀で一掃すると何もなかった様に俺達に歩み始めた。


「やばい来るぞ!来るなぁ――!!」

「そういえば!こいつを使いなさい!」

 入夏が俺にあるものを渡した。それは俺達が散乱した倉庫で見つけた物だ。俺は声を裏声にして怪王人にぶん投げた。

「クソアーマー!!」

 クソアーマーが怪王人に当たると作動し、怪王人は藍色のオーラに包み込まれた。この道具は入夏曰く裏声でアイテム名を言わなければいけないらしい。本当にクソだな、この道具。


「奴の防御がかなり下がった!叩けぇー!!」

 飛ばされた照馬を起こすと俺達は怪王人を一気にタコ殴りにした。しばらく殴ると怪王人は俺達を振り払ってKAIZINを十体ほど一気に呼び出した。


「また援軍かよ!これじゃあ数が多すぎる!」

 俺はKAIZINにロックをぶつけながら言う。照馬が見た限りKAIZINを倒せる技を持ってるようだが、使うのにはどうやら時間がかかるようだ。だから俺は足止めに専念する。それにしてもかなりの人数不利だ。俺はKAIZINにイナを当てると後ろへ下がり地面に手を当て再びゴーレムを生成した。



「スドーム!スドーム!スドーム!スドーム!スドーム!スドーム!スドーム!スドーム!スドーム!スドーム!」



 俺は先ほどより二倍の数のゴーレムを生成した。戦闘力ではゴーレムが劣るが人数では勝っている。ゴーレムは一体ずつKAIZINに対峙する。しかし照馬の前に居たKAIZINは丸焦げのサイコロステーキのような黒い肉片になっていた。

「そっちは一体終わったのか!?」

「このまま続けるよ!」

 照馬はゴーレムが相手をしている間に呼吸を整えて技を放っていた。

「――っ!」


 向こうばっかり見てはいけない。そう教えてくれたのは俺の後ろから攻撃を仕掛けてきた一体のKAIZINだった。俺は直ぐに振り返り魔法をぶつける。



「ロック!!」



 先がとがった氷柱のような岩はKAIZINに刺さった。怯んだところに照馬が現れとどめを刺していく。

「これならもうすぐ終わりそうだな!」

「そうだね!……って入夏ぁー!?」

 照馬が唖然とする。なぜなら入夏が一人で怪王人へ突っ込んでいたからだ。俺はすぐに駆け付け入夏に言う。


「何してんだお前ぇ!?」

「なにって、クソアーマーの効果があるうちに怪王人に少しでもダメージを与えないとね」

「まぁ……。そうだな」

 ゴーレムはKAIZINと交戦中、照馬はKAIZINのとどめを刺し、上手く協力している。俺達の出る幕はないだろう。だから俺と入夏は怪王人へ向かった。

「俺達の恨み……。存分に受け取りやがれ!!」

「覚悟しなさい!!」

「ちょっと僕セリフ全く考えてないんだけど!?」

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