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第三十三章 無理やり技にする!

「ほれ、連れて来たよ」

 王様は二人の女性を連れてくると僕達へ言った。一人は空色の髪をしたボブの女性だ。身長は入夏より少し高いくらいで年齢は僕より少し高いと思う。女性は僕達を見るなり自己紹介を始めた。


「私の名前は氷貝ぎがい 鮫子ざめこよ。そしてこっちが沙羅子ざらし

 鮫子が紹介すると僕より小さい小柄な少女が出てきた。少年なのか少女なのか知らないけど。髪は白色、どうやら彼女(?)が沙羅子らしい。


「よ、よろしくお願い……します……」

 それだけ言うと鮫子の後ろに隠れていった。

「普段からこんな感じだから気にしないでね~。……それで何か用事があるから呼んだのでしょ?」

「う、うん。そのことなんだけど……」

 僕は軽く自己紹介をすると現状を説明した。



「なんですって!?入夏様が!?」

「はい。そうなんですよ……」

「それで今わしらで攻め込もうとしているんじゃが……。ついてきてくれんか?」

 おじいちゃんが説得する。鮫子さんは少し考えてから言った。


「私達でいいならいいけど……。本当にいいの?」

「うん!一人でも人数が多い方がいいからね!」

「なら早速出発じゃ!」

 上吉さんが言った途端――

「ま、待って!」

 鮫子さんの後ろから声が聞こえる。そこから顔をのぞかせたのは沙羅子だった。


「せめて……準備をさせて……」

「急にどうしたのかと思ったらな―んだ!いつも通りのことか!」

「「「⁇」」」

 僕達は全く理解できない。鮫子さんは僕達に気が付くと言った。

「この子ちょっと心配症でね……準備に二日ぐらいかかっちゃうんだ!」

「準備に……二日……?」

「……まぁそれくらいがいいんじゃないかのぉ」

 僕達が困惑している中、おじいちゃんが隣でつぶやいた。


「本当に!?」

「ああ、少し修行とかしとけばいいじゃないか」

「……まぁそうだね」

「なら三日後にここにまた来てね!それじゃあ!ほら沙羅子も行くよ!」

 沙羅子さんの手を引っ張りながら鮫子さん達は奥の部屋へ消えていった。

「どうする?」

「わしら爺はちいと魔法を慣らして行くけぇ照馬くんは他でなんかしとけ」


「……雑だなぁ」

 おじいちゃん達が去って行ってから僕は呟いた。



「……戻って来たでありますか」

 僕は美味呼みなこさんの元へ戻って修行をすることにした。結局は同じか……

「ほかの奴らはどうした?」

「それが……。まぁいろいろあって……」

「そうか……。そのためにここに来たのでござるか?」

「うん!」

「お前のステータスでダメなのでござるか……。そういえばあの剣はどうでござるか?」

「めちゃくちゃ使いやすかったよ!ありがとう美味呼さん!」

「お安い御用でござる」

 僕は美味呼さんにKAIZINの特徴や動きなどを教えた。




「そいつらはおそらくキメラ(異質同体)でござる」

「キメラ……!」

「キメラは闇系魔法を扱える者のみ生成できる魔物でござる。そして体力が無限だから殴られても痛くも痒くもない。しかし生成にはかなりのMPを消費するって物でござる……」

「それをあんな数って絶対に勝てるわけないじゃないか!」

「しかし魔力の発生源。……つまり術者を倒せば魔力が途絶えてその魔物は死ぬのでござる」

「ということは……。奴らを作ったのは……!」

「そう。お前が言う怪王人って奴でござる。奴を倒せばあの館の魔物はすべて死ぬ」

「ならいっそのこと館ごと破壊しちゃえばいいんだね!」

「馬鹿者か、そなたは!もしや生存者がいた場合、全員命を落とすことになるでござろう!」

「そうだったそうだった」

 チッ。館ごと破壊はさすがに無理か……


「でもキメラを盾にして襲い掛かってきたらどうするの?絶対に勝てないよ!」

「そのために作られた技がある……。覚えていでござる?」

「もちろんさぁ!」

 僕と美味呼さんは準備をすると二人とも剣を構えた。


「この技はキメラにしか通じないでござる。故に今回はコイツを使う」

 美味呼さんが連れてきたのはライオンのような怪物だった。尻尾はドラゴンのようで胴体には羊の毛のようなものが生えている。……これは……強いの……か?

「どうやら魔王の失敗作のようでそこら辺を歩いていたから我が保護しているでござる。今回はコイツを殺すことでござる」

「へー。それでどうやるの?」

「キメラはものすごい再生能力と体力で無敵とされているのでござる。それを超えるスピードと攻撃で叩くだけでござる」

「超えるスピードと攻撃で叩く……?」

「二匹いるから手本を見せるでござる」


 美味呼さんが剣を構えると急に姿が消え、剣の残像が高速で刻まれた。キメラは血を吹き出しその場に倒れた。

「……すげぇ!」

 僕は高速な技を見てできることは唖然としているだけだった。

「どうだ?コツをつかめばすぐでござる」

「できるなら教えてください!」

 僕は土下座をして教えを求めた。美味呼さんは困った顔をして返事をした。


「よいが、土下座はやめてほしいでござる」

「えー!いいじゃないですか!なんかよくないですか?」

「まだ申しておるのか……。まずは高速で動けるようにする特訓をするのでござる!」

「なにするの?物凄く難しい修行とか?」

「……ただの反復横跳びでござる」

「え……?」

 僕は口をあんぐりと開いて固まる。それに全く気が付いてない美味呼さんは線を地面に剣で描いて僕をそっと線の上に移動させていく。


「なんでただの反復横跳びなんかするんだよぉ――――――――――――――――――!!!」

 僕は美味呼さんに反復横跳びをさせられながら叫び続けるのであった。

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