第三十一章 燦輝石
「元気じゃが……。どうしたんじゃ照馬?」
僕の問いにおじいちゃんは首をかしげながら聞く。
「KAIZINに……みんなが……!」
「……急にわしに話し出したと思ったらそういうことか……。わしらに任せろ!」
おじいちゃんは即座に状況を理解し、承諾してくれた。
「わーぷ!!」
おじいちゃんがわーぷを唱える。おじいちゃんは光に包まれ光は空に消えていった。
「どこにいったんだろう……?」
僕は誰も居なくなった家の前で呟いた。
◆ 畑堀 比奈斗 ◆
「……う、うう…………」
俺は唸りながら目を覚ました。どうやら寝ていたらしい。俺は体を起こしてから異変に気が付いた。
「ここは……?」
「やっと目が覚めたのね……」
隣には入夏が座っていた。俺達は壁と檻に閉じ込められていた。
「牢獄……か……?」
「おそらくな」
声のした方向を見ると鎧をはぎ取られた彦一が立っていた。他にもドライスやダファキン、颯……。探索メンバーは照馬以外全員居た。
「俺が目を覚めた時は此処に居た。どうやらあの後、ここに連れてこられたようだな……」
「そうか……」
「だが!俺達にはあのパン少年がいる!」
ドライスの言葉にハッとする。照馬……アイツは……どうなるだろうな……。
「やっと目が覚めたか」
檻の外から不気味な声が聞こえた途端、俺達はその方向を向いた。
「怪王人……!」
「どうした?そんな顔して?俺が何をするのか不安なのかぁ?」
「……お前!!――アッツ!?」
ドライスが鉄格子に触れた瞬間ドライスの手から煙が出る。ドライスが急いで手を引っ込めると手の平には火傷ができていた。
「俺のドラゴンの鱗で……火傷だと……!?」
ドラゴンの鱗は普通の金属よりも耐熱性に優れている。その鱗を纏ったドライスが火傷をしたのだ。
「お前ドラゴンで幸運だったなぁ。この鉄格子は人間が触ると皮膚が溶けちまうんだがなぁ……」
「何だと!?」
ドライスは顔色を変え、鉄格子から後ずさりをした。
「貴様!どんな物質を使ったんだ!?」
俺は笑い叫ぶ怪物に叫ぶ。
「そんなに知りたいか?それなら教えてやるよ!俺達は魔王軍と手を組み、記念に魔王様から特別に頂いた特別な物質を施した鉄格子がこれだ……。そう……これは太陽石……燦輝石だ!!」
「太陽石、燦輝石……!?」
現在の技術では太陽着陸……いや太陽に接近することでさえ不可能なのにそれを魔王カエ~ルは可能にしたということか!?ということは魔王カエ~ルは一体どんな力を持っているのか……!?
注:この世界では太陽はどうやら惑星らしい
「さらにこの世界最強の硬さを誇る物質だ。どんなに攻撃力が高くても簡単には壊すことができん。まぁ俺様の様に完全に耐性があるやつは別だがな……」
「ウォプティ!!」
颯の手から水が発射され鉄格子に当たる。しかし鉄格子に当たった水はすぐに蒸発してしまった。
「アホめ……冷やすのは氷魔法がとても効果がある……。だがよかったな!水魔法だったらほんのちょ―――――とだけ効果があるぞ!」
氷魔法は生まれながらの才能に恵まれたものしか扱えない。なぜなら水の発射に、温度の変化まで操作しなければならないからだ。
「そんなの出ることができないじゃないの!?」
「そうだよ!あと一つ面白いことを教えてやるよ!」
「……なんだ?」
「それはなぁ……」
怪王人の口元がニヤリと歪んだ。そして笑いながら言う。
「お前達はなぁ!数日後に俺達の腹の中に収まらなきゃいけねぇんだよ!!」
「ふざけるんじゃねぇ!」
「ここは弱肉強食の世界だ……そしてあのガキにも逃げっぱなしじゃ困るんだぁ」
「……お前……!?まさか!?」
「そうだよ!人質だよ!あのガキをおびき寄せるためのなぁ!!フハハハハハ……!!」
怪王人は笑いながら扉の奥へ消えていった。俺は鉄格子の反対にある壁に付いた窓から海を眺める。
「あのちーへいせーん。かーがーやくのはー」
「バ〇スしてやろうか?」
「すまない!すまない!これからどうする?」
俺が振り返ると彦一とドライスは絶望したように両膝と手を地面につけていた。
「なに言ってんだよ……!俺達は何もできねぇだろ……!持ち物も何もかも奴らに奪われたんだぞ!」
「何を言っている?」
「何をって――」
颯は彦一の胸ぐらを掴み持ち上げる。そして語り掛ける。
「俺達はアイツと探検した仲間だろ?仲間が仲間を信用しなくてどうする?俺達にはアイツの為にやっておくことがあるだろ?」
「やることってなにをやるんだい?颯さんよ?」
颯は彦一を放すと俺達全員の顔を順番に見て言った。
「魚の様に……ピチピチと足掻くのが獲物の使命だろ……!」
「……よくわかんねぇけど……。そうだな!」
「チッ。全くそうだぜ……!」
「了解しました!」
「まずどうしましょう?」
「まぁこの鉄格子しかねぇよなぁ……。アイツが親切に水は聞くことを教えてくれたけどよぉ……ずっとやってたら食われちまうぜ?」
「……俺がやる」
「「「「は!?」」」」
俺達は声の方向を見る。そこにいたのは緑色の鱗に体を包み込んだドラゴン、ドライスだった。
「俺があの鉄格子をこじ開ける」