第二十六章 誰だお前は!?
「なんでだよ?全然大丈夫じゃないか」
「どこがだよ!?」
「よくそれで生きていたな!?」
僕達は彦一達を説得し、一階を彦一達とも一緒に探索することにした。
*
僕達は彦一達に進捗状況を伝えた。
「わかった。それでこれがその廊下なんだな……」
壁の奥に広がる廊下を見て彦一が言う。
「ここは強力な魔物が多いから注意してね」
僕は先に警告をしておく。彦一は頷くと先頭を進んでいった。途中でマグマスライムが出てくるが僕達の容赦ない集団リンチで難なく倒すことができた。
*
――数分後
部屋の見えない廊下を進んでいくと扉が一つ見えた。中から声が聞こえる。KAIZINとはまた違った声のようだ。
「怪王人様!新たに侵入者が現れました!」
「またか……折角魔王カエ~ルのために協力してやったのになぁ?やっぱり協力しなければよかったぞ……」
「まぁ食料や奴隷がやって来るんですからいいじゃないですか」
「やっぱり食料や奴隷に使われてたのか……」
「出来ればおいしく料理されてから頼みたいぜ」
「そんなこと言っている場合か!?」
「「誰だお前は!?」」
今の声でばれてしまったようだ。僕たちは必死に逃げた。
「野郎ども!侵入者を捕まえろ!」
先ほど話していた部下らしき者が命令を出す。するとあらゆる所からKAIZINが現れた。
彦一がドライスに言う。
「ドライス!全員持って飛べるか?」
「無理だ!もうちょっと高く飛べないと……」
「それなら颯さんが!」
「任せろ!」
「みんな集まって!」
「その間の時間稼ぎはします!」
僕がみんなを呼ぶ。その間にダファキンがKAIZINと戦っている。
「行けるぞ!来い!ダファキン!」
ダファキンが颯さんの元へ戻る。颯さんはみんなを掴んだドライスを背後から掴み、大ジャンプをする。その勢いでドライスが翼を使ってKAIZINから逃げ切ることができた。
「これならすぐに逃げれるな!」
「このまま秘密基地に戻りましょ!」
そのまま僕達は秘密基地に無事に戻ることができた。
*
「かなり大変なことになってるぞ!」
「元と言えばお前だろ!」
「待ってください!今そんなことをしても意味がないでしょう?」
比奈斗と僕が言い争いになる前にダファキンが止めに入った。
「あの道はかなり危険でしょ?それなら二階にでも行く?」
「二階ですか……?」
「先ほどとは人数が違うでしょ?行けるわよ!」
彦一が反論しようとしたが入夏に速攻で決められてしまった。
「……ということで二階に行くのか?」
「そこしかないだろ」
「二階か……空いているかどうか……」
「二階に何かあるの?」
「俺が前回行ったときは階段に小型のKAIZINが居たんだ。今回はボスに報告されてしまった。故に階段が防御されている可能性がある。最悪の場合二階に閉じ込められるかもしれん」
「それなら俺に任せろよ!」
比奈斗が言った。全員の視線が比奈斗に集まる。
「スドーム!!」
比奈斗の前に自分たちより小さいゴーレムが生成される。次に比奈斗は秘密基地から出て物置から鏡を持って帰る。鏡に比奈斗が手をかざすとゴーレムから見た映像が鏡に映し出された。
「すげー!!」
僕が歓喜していると比奈斗は操作を始めた。ゴーレムも一緒に動き出す。
「これで少しは探索できるんじゃないか?」
「そうだな!」
「KAIZIN達の情報もさらに得られるかもしれませんね」
ゴーレムが梯子を下りていく。そして廊下まで出てきた。
「今のところ特に変化は無いな」
「でもあれ!」
僕が指をさしていた方向にはKAIZINがたくさん居た。しかも階段に。ドライスは小さく舌打ちをした。
「一階にしか行けなさそうだな……」
ゴーレムは次に穴があるリビングへ行った。
「この穴くらいしかないのか?」
「でも見てよ彦一!ほらあそこに!」
入夏が見つけたのは部屋にある大きな崖だ。側面に人だけが入れそうな穴が開いてある。
「俺だけは行けねぇけど、どうする?」
「ドライスが行けないのはかなり大変だね」
「最悪比奈斗のゴーレムを盾にすればいいじゃない」
「酷っ!?」
「そのゴーレムで入れるのか?」
「入れるぞ」
ゴーレムはズカズカと穴に入って行く。すると急に鏡に映っている映像が消え、僕達の顔だけが映し出された。
「やられた」
「何?」
「ゴーレムが何者かに破壊された。確実にKAIZINではないだろう」
「ということは……!?」
「他に生存者がいるということだ」
「それなら……」
僕はダファキンを見つめる。ダファキンは頷いた。
「多香子様達だと思われます」
「まぁあんなゴーレム出てきたら誰でも倒すでしょ?」
「……………そうだな」
僕の言葉で比奈斗のMPに100のダメージが入った。
「それならゴーレムなしの生身で行くしかないのか……」
僕達は再び準備を始めるのであった。