第二十三章 少年少女のお友達、魔王
僕達が船に戻ると、比奈斗の言う通り船は完全に治っていた。僕が甲板に戻ると
「な?治っていただろ?」
「私たちが協力して直したんですよー!」
「助かったわ!シャチ蔵」
「修復などは私に任せてくださーい!それでは予定通りKAIZINの館へ出発しまーす!」
シャチ蔵はそのまま操舵室へ戻って行くと、船が動き出した。僕は船の中に入った。
船の中には比奈斗が机に向かって何かをしていた。
「比奈斗、そろそろ昼ご飯だけど、なにをしてるの?」
「これか?少し前に言っていた特技の開発だ」
「ついでに僕に教えてくれない?」
「ああ、いいぞ」
僕はご飯を食べた後、比奈斗に特技の作成方法について教えてもらった。
「……って感じだ。どうだ?わかったか?」
「わかった!……と思う……」
*
――数分後
僕は実際に比奈斗に協力してもらってどうにか特技を作ることができた。
「試してみる!」
「どうなったか見せてみろ」
「わーぴー!」
僕は新しくできた技を唱えた。僕の体全体が光に包まれる。気が付くと僕は僕の家の前にいた。
「どうしたんじゃ?照馬?」
ちょうど通りかかったおじいちゃんが僕に問い掛ける。
「できたぞー!!」
「何が!?」
「わーぴー!!」
僕は再び呪文を唱える。すると次は船の中にいた。
「成功だ!」
「よかったじゃないか!」
僕が作った特技はわーぷの派生技、わーぴーだ。一度行ったことがあるところにわーぷ君がなくてもいつでも行けるというやつだ。
「これで移動が便利になる!」
「親子そろって似たようなもの作ってんだなぁ……」
「なんか言った?」
「いや!なんでもないぜ!」
「着きましたよー!」
シャチ蔵が船の中に入って来て僕達を呼んだ。
「……ついにか」
「行こう!」
僕達は船の甲板へ行った。船は謎の館についたが、近くには何百の朽ち果てた船が散らばっていた。
「…………」
「私はここで待っていますので!いつでも呼んでください!」
「わかった!行ってくるよ!」
「待て!」
比奈斗が僕たちを引き留めた。
「どうした?」
「誰かが来る!」
僕達は船に隠れた。少し経つと、館に最新型のモーターボードに乗った子供たちがやって来た。全体的10歳くらいの年齢だ。
「どんな奴がいる?」
「少年二人と少女一人、あと……」
「あと?」
「魔王のような禍々しいオーラを出した大人が一人いる……」
「あれがまさか魔王カエ~ル?」
「いや違う」
「颯さん!違うの?」
「ああ、魔王カエ~ルは身長三メートルほどの巨大な怪物だ、また違う魔王だろう……」
「とにかく急がないと!」
「待て!」
「次は何?」
「これを付けておけ」
「なによ?この見た事ありそうな気味の悪いバッチは?」
「アクウルに売っていたバッチを少し改造した奴だ。仲間の所にわーぷできなくなったが、持ち物の共有や通信ができるようになった」
「こいつなら、散らばって探索もできるな」
「そういうことだ、ついでにシャチ蔵も付けておけ」
「わかりました!いつでもこちらで呼んでくださいね!」
「なら行くぞ……俺についてこい……」
僕達は比奈斗を先頭に館へ向かった。比奈斗はそっと館の扉を開いた。館の中は思ったよりきれいに管理されていた。
「中は思ったよりきれいにできてるな」
「なんだか寒くない?」
「……ねぇもう帰ろうよ」
「なんだよ照馬。ビビってんのか?」
「……これじゃあ誰か三人が紫色の化け物に食われるような台詞言ってんじゃねぇよ!!ちょっと違ったけど!」
「急にどうした?」
「知らねぇのかよ!」
「そんなことより後ろ!」
入夏が叫ぶ。後ろを向くと颯さんが言っていた特徴とそっくりな怪物が立っていた。怪物が喋る。
「どうもこんにちは!KAIZINです!」
「「「喋ったぁぁぁ――――――!?」」」
僕達はすぐに逃げ出した。後ろからKAIZINが走ってくる。
「さぁ!逝きましょう!!」
「ぎゃぁぁぁ!!!殺される――――――!!!」
「見ろあれ!」
比奈斗が指した先には大きなクローゼットがあった。
「よかった!タケボだ!」
「なんだそれ!?」
「とにかく早く入ろう!」
僕達はクローゼットに飛び込む。KAIZINは僕達を見失ったようでどこかへ去って行った。
「間一髪だった―――」
「それにしても、このクローゼット狭いわね……」
「そろそろ出てもいいだろう」
KAIZINの足音が聞こえなくなってから僕達はクローゼットを出た。
「こんな近くに扉があるじゃねぇか!」
クローゼットを出てすぐにベットが並んでいた。その奥に扉が置いてあったのだ。
「待って!」
僕が叫ぶ!僕は扉をノックした。するとノックが返ってきた。
「ノックが返ってきたら人でしょ?」
「なんでそうなるんだ?」
「だってあの体格で人と同じノックはできないでしょ?」
「……確かにそうだな」
「でしょ?」
僕達は扉の奥へと入っていくのであった。