第二十一章 中二病とブタ³º
出発してから十分くらいが経った。
「できたぞ。フィップスフライだ」
颯さんが薄切りにして揚げたフィップスを皿に載せて調理室から出てきた。比奈斗がフィップスフライを一枚つまんで口へ運んだ。
「フィップスフライか……アジフライみたいな感じで旨いぞ」
「僕も食べるー」
僕はフィップスフライを一枚取ると食べた。フィップスフライはパリパリしていてアジフライのような味が口の中に広がった。
「旨い!?」
僕は最後の一枚を物凄い速さで取った。
「私も一枚もらおうかしら?」
「え?もう全部食べたぜ?」
「…………」
僕が最後の一枚を今さっきとったのだが、それは言わずに比奈斗を残して僕はその場を去った。
比奈斗が入夏にフルボッコにされているのをフィップスフライを食べながら遠目で見ているとシャチ蔵がやって来た。
「シャチ蔵!運転は大丈夫なの?」
「はい!しばらくはまっすぐ行くだけなので!」
「そういえば颯さんって苗字が蛙に王って書いて蛙王だよね?」
「はい!確かそう書きますね!」
「蛙って苗字に書いてあるから魔王カエ~ルと何か関係があるんじゃないかなって思って」
「確かに……カエ~ルと蛙王……ほとんど同じような名前してますもんね。……それでそれは颯さんに聞いたりするんですか?」
「どうしようかなぁって思っているんだけど。聞いても何も言いなさそうだなぁって」
「……呼んだか?」
「颯サァン!?」
背後を見ると颯さんが仁王立ちしていた。僕とシャチ蔵はあたふたしながら答えた。
「マァナントイウカ。ソウサンノナマエッテカエルニオウッテカクンダーッテオモッタダケデシテ」
「要するに魔王カエ~ル関係があるんじゃないかってことか?」
「●▽#▲&〇%$#◇×■☆!?」
「知りたいか?」
「はい喜んで」
「かつて魔王カエ~ルは俺達一族の《《親戚だった》》」
「「《《親戚だった》》?」」
「そう。《《親戚だった》》のだ。あのカエ~ルは常にポテチしか食べなくて、ポテチ以外何も食べなかったんだ」
「ポテチ以外何も食べなかった?」
「ああ、そのことを親族は猛烈に反対したらしい。しかし……」
「しかし?」
「そのことにも抵抗していたから親戚一同に見捨てられたのだ」
「!?」
「奴はそのことに怒り、そんなことを言うような奴らにはポテチを食う価値がないと言い魔王カエ~ルとなったのだ」
「颯さんはカエ~ルを止めたの?」
「いや、俺はこのころ生まれていなかった。故に一度も会ったことがない」
「へーそうだったんだ。だから颯さんの親と親戚しか知らないのか……」
「一応俺の実家の住所を教えておこう」
「なんで?」
「魔王カエ~ルの情報を知っているかもしれない……だからお前に先に教えておく」
「普通に颯さんが案内すればいいんじゃないの?」
「いや仮に俺がいなくなっても書いてあるから大丈夫だ、それに俺の両親はかなりの技術者だ。何か役に立つかもしれん」
「……わかった!ありがとう颯!」
「ああ……」
「私はそろそろ船の操作に戻りますね!」
シャチ蔵はスタスタと操舵室へ戻って行った。
*
――数分後
空が曇り始めた。入夏が叫ぶ。
「みんな!早く船の中に入って!」
「どうしたんだ急に?」
「嵐が来るのよ!」
「嵐ィ!?それは大丈夫か!?」
ポツポツと雨が降り始める。
僕達は急いで船内に逃げた。
「何とか船内に逃げることができたな。これで大丈夫だろう」
「いや、まだわからないわ」
入夏は窓から外を伺う。すると波の中から見覚えのある魔物が出てきた。
「ブタンク!?」
そう。ブタンクが船に乗りこちらに攻めてきた。ブタンクはそれぞれ、メイスや剣、斧などを片手に鎧に身を包んでいる。
「なんでこんなところにブタンクが……」
「どうやら魔王軍からの客のようだな」
颯さんが隣でつぶやいた。
「アイツらの大将みたいな奴がなんか変な剣持っているけどあれは……」
「ストームソードよ」
「それって僕が振り回してスライジンを一掃したあれ!?」
「今も一応持っているがな」
比奈斗が持ち物からストームソードを取り出す。
「この剣のことは俺はよく知らねぇがどうやら嵐呼べる能力まで備わっているようだな」
その時、ブタンクの船から巨大な戦車が出てきた。そしてこちらを向くと容赦なく球を打ってきた!
――ドカーン!
僕が覗いていた窓から二メートル離れた所が破壊されていた。
「とにかくこのままじゃ船がボコボコになっちゃうね……」
「とりあえず船の甲板まで出ようぜ」
僕達は船の甲板まで出た。ブタンクの船とは数メートル離れている。
「この距離なら使える!ロッパー!」
比奈斗がロッパーを唱えると立派な橋が出来上がった。
「行くぞ!」
「「「おー!」」」
僕達はブタンクの船に乗り込んだ。ブタンクは待っていたかのように叫び声をあげて攻撃を仕掛けてきた。僕達も容赦なく攻撃を与えていく。
「はぁ!」
入夏の拳がブタンクの鎧を貫通してブタンクの腹部に当たった。
「スドーム!」
比奈斗が5体のゴーレムを生成する。ゴーレムはブタンクに群がり、少しずつ数を減らしていった。
「ウォプティ!」
颯さんがウォプティを唱える。ブタンクは腹部を貫通して倒れた。
「颯さん!後ろ!」
颯さんの後ろにメイスを振りかぶったブタンクがいる。颯さんは透かさずエルボーをかました。
「フォール!」
僕はフォールを唱え、ブタンクを数体一気に一掃した。その途端に背後から強い
風が吹いて海に投げ出された。風の方向を見ると、ストームソードを持ったブタンクが素振りをしている。
「みんな泳げる!?」
入夏が即座に聞く。
「うん!」
「無理!」
「いけるぞ」
比奈斗だけ泳げなくて浮かぶことしかできないそう。僕はなぜか泳げた。
「アンタは船に戻ってて!」
入夏が比奈斗を掴み、船の甲板までぶん投げた。
「シャチ蔵と船でも直してなさい!」
「しょうがねぇなぁ!」
船の修理は比奈斗とシャチ蔵に任せることができた。
「ついてきなさい!」
入夏が先に泳いでいく、僕と颯さんは入夏に続いて僕たちの船まで泳いだ。
「颯。いける?」
「ああ」
颯さんは僕と入夏を掴むと思いっ切り船を蹴った。颯さんのジャンプ力を水中に生かしたようだ。かなりいい考えである。
僕達はすぐにブタンクの船にまでたどり着くことができた。
「照馬!ファインを!」
「わかった!ファインファインファインファインファインファイン!」
僕はブタンクの船に向かってファインをひたすらに唱えた。しかし、燃える気配は一向にない。
「……こうなったら!」
入夏はブタンクの船の思いっ切りぶん殴った。するとブタンクの船に大きな穴が開いた。僕達は船に乗り込む。船には誰もいなかったが甲板にいたブタンクが数体僕に気付き、走ってきた。
「僕についてきて!タックリー!」
僕はタックリーがを使う。ブタンクを跳ね除けながら無事に甲板までたどり着くことができた。残るはブタンク五体と戦車バージョンだ。
「エアコンプ!」
僕は二体のブタンクの頭部を握りつぶす。入夏と颯さんが協力して残りの三体は倒していた。残りはあと一人。
『ぶひひひひひひ!お前達!なかなかやるようだな!』
戦車の中から声が聞こえる。
「喋れる個体もいたのか……」
『ぶひひひひひひ!オラはブムペジ様だ!魔王様により様々な能力を手に入れたこの世に一体しかいない最強の豚だ!!』
元がブタンクだからよくわからないがなんか強そうな気がした。