第二十章 ちゃんとした理由
――五日後
僕と美味呼さんは肩で息をしながら見合っていた。
「もう修業は十分でござる」
「本当ですか!?」
「ステータスを見てみな」
美味呼さんは僕に水晶玉を渡してくれた。
Lv.18
HP 724
MP 315
攻撃力 192
防御力 174
素早さ 204
魔力 302
才能 炎系魔法(大)、風系魔法(中)
特技 わーぷ、ファイン、フォール、タックリー、エアコンプ
「かなりステータスが上がってる!?」
「いい結果が出たんじゃないか?」
「よかったじゃないか」
「比奈斗!?」
いつの間にか隣に比奈斗と入夏が立っていた。
「俺達の修行の成果も見せてやるよ」
「比奈斗達の修行してたの?」
「ああ、あまりにも鬼畜だったがな」
僕はステータス覗き見メガネを取り出して比奈斗達のステータスを見た。
Lv.23
HP 1304
MP 294
攻撃力 7
防御力 18
素早さ 234
魔力 1346
才能 土魔法(大)、雷魔法(中)
特技 わーぷ、ロック、ロッパー、スドーム、イナ、イナズス、エウォーグ
「更に細かく、巨大にロックができるようになったぜ。あと特技も結構増えたな。お前もだけど」
次に入夏のステータスを見た。
Lv.27
HP 1243
MP 294
攻撃力 1120
防御力 76
素早さ 48
魔力 256
才能 水系魔法(大)
特技 わーぷ、ウォーバー、ウォンシー
攻撃力高っか!?あとHPもだけど、どうなってんの?
「シャチ蔵から船が完成したって二日前に言われているからいつでも出発できるわよ」
「照馬」
美味呼さんが僕を呼び止めた。僕が振り返ると美味呼さんは持っていた袋から剣が入った鞘を僕に渡してきた。
「約束の品だ。生きて帰って来るでござる」
僕は鞘を受け取って剣を出すと赤く燃えるような刀身が見える。
「お前の煉獄の焔核を使った剣でござる。少しは役に立つでござる」
「ありがとう!」
「帰って来たら共に戦い合うでござる!」
僕達は荷物をまとめて港へ向かった。
港に行くと誰かが立っていた。それは蛙王 颯だった。
「蛙王 颯さんだっけ?どうしたの?」
「俺も連れて行ってくれ!」
「必ずしもまた帰れるわけじゃないのよ!」
「ああ分かっている。だがお前達の力には少しくらいなれるだろう」
「どうする?」
「俺が説得してやる」
「比奈斗にできるの?」
「まぁ任せとけ」
比奈斗は蛙王 颯に歩み寄る。そして説得を試みようとした。
「お前は何のために行くつもりだ?」
「娘の敵討ちだ!」
「娘……?」
「そうだ!私には家族がいた。妻は早死にし、娘はあの怪物にやられた!」
「「「!?」」」
「お前たちにこの気持ちがわからんだろ!?」
照馬は昔、養子としておじいちゃんに引き取られた。両親との思い出はないが血のつながった家族がいない気持ちは痛いほど分かった。
「本当に来るの?」
「なんだと?行っていいのか?」
「うん。僕が許可する」
「何勝手に決めてんだお前!?」
「蛙王さんが犠牲になってしまうかもしれないのよ!?」
「わかってるさ、その覚悟があるから今ここに彼はいるのだろう?」
「……それはそうだ」
「たとえ自分がどうなっても娘の敵を取りたい父親の気持ちにもなってやれよ!」
「…………わかった。蛙王 颯。あなたも一緒にあの館へ行きましょう」
「ありがとう少年。これからよろしくお願いします」
「まぁそんな堅苦しいこと言わずに!一緒に戦う仲間なんだから!」
「……そうだな!よろしくお前たち!」
こうして蛙王 颯が新しく仲間に加わった。僕達は船に乗った。船には既にシャチ蔵が乗っていた。
「今回船の運転を担当しまーす!シャチ蔵でーす!」
「よろしくなシャチ蔵。俺は蛙王 颯だ」
「お願いしまーす!では準備へ取り掛かりまーす!」
シャチ蔵は操舵室へ向かっていった。
「そろそろ出発するんで気をつけてくださーい!」
しばらく経つと船がゆっくり動き出した。
「すげー!海に浮かんでる!」
「船一つで何盛り上がってるんだよ……」
「海って何があるの?」
「海はなぁ魚がたくさんいるんだぜ」
「そうなんだ!」
「そういえば颯さんのステータスってどんな感じなんですか?」
「……見るか?」
「気になります!」
「なら見るといい。そのメガネでな……」
コイツ!?メガネのことを知っている!?僕はステータス覗き見メガネを取り出して颯さんのステータスを見た。
Lv.58
HP 1923
MP 3581
攻撃力 103
防御力 71
素早さ 1284
魔力 3761
才能 炎系魔法(小)、水系魔法(大)、雷系魔法(中)、土系魔法(小)、治癒系魔法(大)
特技 わーぷ、マインディー、ファイン、ウォーバー、ウォンシー、ウォプティ、イナ、イナズス、ロック、ヒミンク、ヒーリップ、ヒンション
!?これは見てはいけない気がする。僕はそっとメガネを外してその場を去った。あれは見てはいけない類のステータスな気がする。
「なんだこいつ!」
比奈斗の声が聞こえた。僕はすぐに駆け付けた。
「どうしたの!?」
比奈斗は魚型の魔物と睨み合っていた。
「こいつは?」
「魚系モンスター、フィップスだ。食用にもなるがかなり凶暴だ」
「僕に任せて!新しく覚えた魔法で食べれないくらいに消し炭にするよ!」
「やめろ!船が燃えるだろ!」
「……ウォンシー」
途端に颯さんの指から光線のような水が発射された。その水はフィップスの心臓を貫いた。フィップスはその場に倒れた。
「なんだあれ!?」
「これで調理できるな。こいつなら何回も倒して調理してる。安心しろ。調理室を借りていいか?」
「ええ……いいけど……」
入夏の許可を得ると颯さんはフィップスの死体を回収して調理室へ向かった。
「さすがプロの冒険家だ。いろんな技を極めてやがる」
比奈斗は颯さんの背中を見ながら呟いた。
「あのステータスは反則でしょ……」




