第十九章 ブラックでもホワイトでもない修行
朝、アクウルの宿屋の前で待っていると比奈斗がやって来た。
「入夏は?」
「まだ来てないよ」
――数分後、入夏が小走りでやって来た。
「ごめん遅れた」
「なんかあったの?」
「許可取ってきた」
「何の?」
「あなた達の修行相手が決まったのよ!」
「修行!?」
「美味呼さんが修行相手になってくれるらしいよ」
「へー」
「今から早速行きましょう!」
僕達はアクウルを行くため通った山に行った。山は草が少なく岩が露出している。頂上まで登ると一匹の剣を持ったスライムがいた。
「……来たか」
美味呼さんが振り向いた。美味呼さんは僕に鋼の剣を渡してきた。
「お手並み拝見と行こうか。全力で来い」
僕は美味呼さんに剣を振った。しかし振った場所には誰もいない。途端に背中に激痛が走った。美味呼さんが背中にカウンターを入れてきたようだ。とりあえず僕は周囲に火を放った。
「火で攻撃を遮る気か……無駄だ!ウォーバー」
僕の放った火は美味呼さんのウォーバーによって消化されてしまった。
「アクウルの住民は大体ウォーバーは使えるわよ」
「なんだと……!?」
それならアクウルの住民に対して不利すぎじゃね?
「タックリー!」
僕は美味呼さんに突っ込んだ。向こうはタックリーに気が付いたようで構えた。しかし僕は途中でタックリーを解除し、ジャンプをして空中でファインを放った。美味呼さんがファインをよけているうちに再びタックリーを発動。美味呼さんは攻撃が当たりよろけた。
「……フォール」
美味呼さんは炎系魔法?を放った。ファインじゃない?美味呼さんが放った魔法は壁になり、だんだんと迫ってくる。そして熱風が顔面に当たった。
「アッツ!」
「私の魔法力は200だから少し君より熱くできるんだ。あとそれ以上先は崖になっているよ」
「崖ぇ!?」
背後を見ると崖が僕の後ろに広がっていた。
「さぁどうする?」
「エアコンプ!!」
フォールの周辺の空気を選択して圧縮!僕が拳を握り締める。するとフォールは段々と小さくなっていき消滅した。
「フォールを破壊するとはやるじゃないか。さぁ続けようじゃないか」
何か切り札がないと負けてしまう!美味呼さんが僕に突っ込んでくる。僕はバックステップをして手にファインを溜めた。ファインと剣……!!
僕は思い出した。そして剣に『ファイン』をつけてみた。すると剣は燃えずに炎を纏って炎上している!
「それが君の切り札か……」
「どうだろうな!」
僕は美味呼さんに突撃。剣で薙ぎ払いをした。炎は横に広がった。美味呼さんの道がふさがった所でファインを放った。美味呼さんはウォーバーで消化したが僕は背後に回って不意打ちをした。ついに美味呼さんに攻撃を当てることができた。
「っ!……やるな」
「どうですか?」
美味呼さんが片膝(膝どこ?)をついたので僕は少しずつ歩み寄った。
「戦略性が高いが戦闘能力が低い」
「!?」
「だから私の下で少し鍛えていかないか?少しは強くなれると思うぞ」
修行か。もちろん僕の返答は一つ、
「お願いします!」
僕は美味呼さんに土下座をした。こんな相手が修行してくくれるなら断る以外ない。僕は結局美味呼さんから修行を受けることになった。
「それじゃあ俺たちは修行が終わるまでほかの所行っとくぞ~」
そうして僕と美味呼さんの 修行が始まるのだった……
◆ 畑堀 比奈斗 ◆
「暇だしどっか行こうぜ」
「あんたそれでいいの?」
「? どういうことだ?」
「照馬は美味呼さんとの修行でレベルアップするのよ!?」
「それがどうした?」
「ただでさえ多い照馬の特技が増えるのよ!」
「……!!」
そうだ、このままでは照馬以下の特技の数になってしまう。どうにかしないと……
「どこかないのか?修行できる場所は?」
「あるのよ。そんなことを言い出すと思って」
俺にも何かの修行が始まろうとしていた。
「どういう状況なんだぁ―――――!?」
俺は今魔物達に囲まれている。ワンスがいち、にい、さん……7体いるぞこれ。遠くの木に座っている入夏が叫ぶ。
「魔法力を鍛えるなら実戦でしょ?だから魔物と戦わせて、強化させるってことよ」
「一人でできるかぁ――――――!!」
とりあえず一体にイナを放つ。しかしまだ生きていて襲い掛かってくる。
「スドーム!!」
俺はゴーレムを生成した。ゴーレムは2,3体を一気に相手にしてくれる。残るはこの四体か……ちょうど固まっているから……
「ロック!」
大きく、大きく……これくらいでいいか?俺の前に広がるのはワンスの集団
とその上空に浮かぶ3mほどの岩だ。
「投下!」
岩がワンス達に降り注ぐ。ワンスは全員ロックによって下敷きになった。そのころちょうどに残りのワンスをゴーレムが倒したようだ。魔物を全員倒すことができた。そこへ入夏が歩いてくる。
「なかなかやるじゃない?」
「まあな」
「レベルはどんな感じ?」
「そこまで上がった気はしねぇな」
「そう……」
入夏が少し悲しそうになる。しかし何かを思いついたのか急に笑顔になった。怪しいな。
「いいことおもいついちゃった」
今回の修行は成功する予感がしない気がする。これは予言ではないだろう……