表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/45

第一章 ブタと厨二病

 隣町へ向かってから少し経った。向こうから素手の二足歩行の豚が歩いてきた。あれはオーク系の魔物、ブタンクだ。

 ブタンクの動きは鈍重だ。大きく振りかぶった拳が風を切る前に、距離を詰めて首筋を一撃。

――そんな戦い方をおじいちゃんに習った。

「とりあえず距離をとってから考えよう」

 僕はおじいちゃんから授かった伝説の剣(木刀)を取り出した。

 ブタンクが「グォー」と唸りながら突進してくる。まさに魔物定番のあの声だ。

「背後に回り込んで攻撃を与えよう」

 僕はブタンクの背後に回り込んで首に木刀をぶつけた。

 何発か殴りかかっただけで、ブタンクはガクンと膝を折す。そのまま連打して――あっさり倒した。 遅いし打たれ弱いって……ぶっちゃけ、何のために存在してんだろ。



 隣町は人間の他にスライムやドラゴンがいた。住民の話によるとなんとこの町では魔物と人が共存しているらしい。

 僕はちょうど近くにいたドラゴンに話しかけた。

「すみません。ちょっと教えて欲しいことがあって……」

「その前に自己紹介をしようぜ!オレ様はドライス! 『魔界』からきたドラゴンだ!」

『魔界』?なんだそれ。ちょっとこのドラゴン頭おかしいのかな?それとも病気?

「ねぇドライス、パンってどこに売ってるの?」

「は? パン?」

「うん。パン」

「パン屋に売ってるぜ」

「パン屋ってどこ?」

「ここから、北東に十五秒ほど歩けばあるはずだ!」

「そっか。ありがと。パン屋いってくる」

「え? もう会話終わり?」

「そうだけど?」

「お、おぉ……」

 逆に何を話せばいいのか分からなかったので、僕は厨二病ドラゴンの置いてパンを買いに行った。



 ドライスが言っていた方角へ行ってみるといろんな店が並んでいた。……武器屋、道具屋、たこ焼き屋、射的……いやこれ、途中から祭りじゃない?

 とりあえず僕はパン屋へ入っていった。


 パン屋へ入ると小太りの店員が出て来た。

「いらっしゃい!何をお買い求めで?」

「今何が売っていますか?」

「今残ってるのは、食パンに長いパン、あとは丸いパンがあるぜ」

 店主の言う通り食パンと長いパンと丸いパンが商品棚に並んでいた。名前が雑だな……。

 おじいちゃんが一番好きなパンはジャムパン。しかし、ジャムパンは店長曰くとても人気で開店してすぐになくなってしまうらしい。

 僕はふと店に並んでいるジャムのビンが置いてあることに気が付いた。

「これは何ですか?」

「こいつは最近発売したジャムビンだ。丸いパンを買って塗ればいつでもジャムパンが食べられるっていうこの店限定の商品さ」

「食いたいなら、自分で作れってことだね……!」

 店長は親切に教えてくれた。だから僕はジャムビンを一つと丸いパンを10個買った。家から隣町は少し距離があるので多めに買っておいた。(まぁまたお使いに行かされるのが嫌なだけだけどね)

「パン屋以外に何があるんだろう?」

 僕は町に何があるのか気になって探索を始めた。

「この街何が売っているんだろうなぁ……。もしかして限定の商品とかないかな!」

 そんなことを考えていると目の前からやって来た人にぶつかってしまった。

「あっ!?すみません!」

 その人は体長3m、緑の肌をした二足歩行の生き物。カエルのような奇妙な“眼”が二つ煌めいていた。僕の声に気がつくと男は僕をじっと見降ろす。

「ん?あぁこちらこそすまないなぁ」

 それだけ言うと男は「やっとすべて買い占めることができた」などとブツブツ言いながら去ってしまった。

「何だったんだろう……」

 僕は少し考えたがやがてめんどくさくなって考えることをやめた。そしてポテチを求めて近くにある店に入った。


「ポッテチポテチ~♪」

 僕はウキウキでお菓子エリアに足を運ぶ。


 しかし棚は空っぽだった。ポテチが、ない。しばらく僕は、何も考えられなかった。

 ただ、心の中で何かがパラパラと崩れていく音がした。

「……ポテチって、こんなに簡単に消えるのか?」




そんなことをしていると夕方になったのでそろそろ帰ることにした。



 家に帰っている途中、後ろから聞き覚えのある鳴き声が聞こえた。背後を見ると拳を振り上げたブタンクがいた。さっき遭遇したブタンクだろうか。いや、見るからに顔の傷がない……って豚に顔覚えてどうすんだよ。

 僕は即座に横に避けた。ブタンクは思いっ切り空振ったからバランスを崩して倒れた。僕はブタンクに馬乗りになった。そして伝説の剣(木刀)を取り出し、ひたすらに叩きまくった。するとブタンクはブタンクは血しぶきを上げ、呻き声を最後に動きを止めた。どうやら倒したようだ。


 背後には一輪のスイレンが咲いていた。

――僕はそのまま家に向かった。これから起こる悲劇を知らずに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ