第十三章 中二病と頭コレクション
「アイツ馬鹿だね」
「そのようだな」
僕たちはさっきまでスカルキングがいた所を見つめていた。
「…………」
「…………? どうした?」
「俺の才能奪われたままなんだが!?」
「まぁそういうときのあるさ」
比奈斗が言うが僕は許さなかった。僕の恵まれた才能を奪ったあの屍が。
「死体のくせにとるんじゃねーよ!この骨ジ〇ャアン!!治癒が使えなくなったじゃないか!!」
しばらく叫んでいたらアレに気が付いた。
それは比奈斗が爆破させた街だった。
「あそこから金目の物とっていこうぜ比奈斗」
「コイツ……」
比奈斗はドン引きしていたが僕は気にせずに街へ走っていく。比奈斗は「念の為だ」といって僕の後ろについてきた。結局来るんかい!!
街の中に入ると骨がいろんな所に転がっていた。
「スカルキングが死んだことによってスルナトがすべて動かなくなったようだ。」
「スカルキングの住処って何処かな?」
「あの骨が勢い良く飛んできたとこじゃね?」
スカルキングはたしか街の中央から出てきたはず……
――数分後
全く違った。どうやら街の一番奥にあったらしい。僕達はスカルキングに住処に入る。
「ここは直撃を食らった場所か……」
比奈斗が冷静に分析していたけど面白くなさそうだったので、スカルキングの遺品を見せた。
「頭が飾ってあるよ!!」
「頭ァ!?」
スカルキングの頭が飾ってあった。下にはそれぞれプレートがつけてあった。
「なになに……日常用、訪問用、誘拐用、拷問用、暴走用、だってさ。」
日常用は笑顔の頭だった。なんでボスが笑顔なのかはわからんけど。訪問用は普通の顔、誘拐用は人に近い不気味な顔、拷問用はザ・ドクロだった。しかし暴走用だけが置いてなかった。
「日常用が置いてあるってことは、戦った時の顔は暴走用だったのか……」
「あんなセンスのない顔で来られてもな……」
今思えばスカルキングの顔は歯を食いしばって、赤く怒りマーク(よくあるやつ)がたくさんついたやつだった。
「他にも日記があるよ!」
「日記だと!?」
僕は日記を手に取り、ページをめくる。そこにはぎこちない字でスカルキングの出来事が書かれていた。
五月十四日
今日から日記をつけることにした。今回は何日続くのか。
「思ったより普通の日記だけど」
「まぁもっと確かめてみようぜ!魔王の目的も知れると思うしな!」
「それもそうだね」
僕は更にページをめくった。
五月十五日
いつも通り変装をしてから街に行った。みんなと仲良く遊んだ。楽しかった。
「思ったより普通じゃない?」
「なぜ住民を襲うなんてしたんだろうな……」
五月十六日
子供に変装を暴かれた。みんな逃げて行った。一人でとても寂しい。
「なんか雲行きが怪しくない?」
「なんか……そうだな……」
五月十七日
街に行っても追い出されるようになった。あの子供絶対に許さない。許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
「うわぁ!?」
そこには恨みの念が力を入れて書かれていた。
「おい!これ見ろよ!」
比奈斗が指を刺したとこにはシミがついていた。
「まさかスカルキングが人を襲うようになったのは……!」
僕は恐る恐るページをめくった。
五月十八日
あのガキを殺した。とても楽しかった。そうだ、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
途中から血によって見えなくなっていた。
「…………」
僕は無言で次のページへ行く。
五月十九日
魔王と名乗る者から魔王軍へ招待された。活躍したものにはその活躍に応じて報酬がもらえるらしい。更に自分のような居場所の無い者が集まっている場所らしい。
我は魔王軍へ入った。
「スカルキングは自分の居場所、そして復讐のために魔王軍へ入ったってことか……」
「そんな……」
五月二十日
魔王軍へ入ったことによって自分の居場所を手に入れた。人を殺せば自分の仲間を手に入れれる。やはり、人間は全員殺すべきだ。
「っ……」
ここから日記はしばらく白紙だったが、最後のページに何か書いてあった。
人■■■
なぜだろう、何か違う気がする。それは本当に良いことなのだろうか。一度は仲良くしてもらった人達。ひとまず生かしておこう。
「ということはまさか生き残りが!?」
「行ってみよう!」
僕達は街中をくまなく探した。
「照馬!こっちだ!」
比奈斗に呼ばれて僕は比奈斗が呼んだ方へ向かう。そこには『独房』と書かれたプレートがついた建物だった。
「ここに生存者がいるかも!」
「そうだな!」
僕達は建物の扉を開ける。しかし、中には牢獄が一つだけ置かれてあった。しかし、牢獄に何かがある。
「何?……あれ……!?」
僕は声を漏らす。中には人の死体があった。ただの死体ではない。頭部がつぶれ、内臓をえぐり取られ、右腕を引き千切られた死体だった。
「生かしておくんじゃ……なかったの……?」
「照馬、あれを見ろ」
比奈斗が壁に指を指す。そこには壁が削られた後があった。
「必死になって逃げようとする人間を見つけ、生かしておく意味がないと感じたのだろう」
「それにしても酷すぎる……」
「日記でも見ただろ、ガキを殺して快感を得たって。きっと楽しみながら嬲り殺したんだろうな」
「…………」
僕達は住処へ戻ってスカルキングの頭コレクションを持つ。
「この頭売れば金になるんじゃね?」
「確かに!」
「早速道具屋に直行だ!!」
僕達は秒でカニスに戻った。
*
早速道具屋に入る。……しかし誰もいなかった。
「そういえば、みんな隠れてるんだっけ?」
「あ。」
僕たちが後ろを向くと道具屋の扉は強引に開けられ、壊れていた。その騒ぎを聞きつけた定員がやってきた。店主は中年で小太りのおっさんだった。
「なぁんの騒ぎだぁ?」
「おじさん!」
「おじさんじゃねぇ!まだ50歳だ!《《お兄さん》》だろ!」
「おじさんだな……」
比奈斗が言っていたが本題に入る。
「買い取って欲しい物があるんだけど……」
「こっちは忙しんだぁまた今度にしてくれぇ。」
「せっかくの首なのに……」
「首ィ!?お客さん!あんたは何を売る気だい!?」
せっかくの首は流石に表現が悪かった。しかし店主が話を聞いてくれたので僕はそのまま話を続ける。
「これだよ!」
僕がスカルキングの誘拐用の顔を取り出す。すると店主は顔色を変えた。
「お客さん。それってまさか……」
「ただのスカルキングの頭だけど?」
「お前がスカルキングだったとかじゃねぇよな?」
「うん」
「本当だよな?」
「うん」
「噓じゃねぇよな?」
「うん」
「本当にお前達が倒したのか?」
「うん」
「…………」
――店主はスカルキングの頭を僕から取って外に出たそして
「骨どもが滅んだぞぉぉぉぉ―――!!!!!!」
店主の声に反応して街の人々が巣を守る蜂のように出てきた。
「何ィィ!!!!」
「うお―――!」
「自由だ――――――!!!!!!」
どうやら比奈斗の考察通りスルナトの大軍に備えて隠れていたらしい。街の人達は店主の一言で騒いでいた。この街……噓一つで滅ぶんじゃねぇの?
「誘拐用の頭を選んで良かったな。」
比奈斗が隣で言う。僕達は特にやることもなく突っ立っていたら、店主が察したらしく僕達の所にやってきて言った。
「こいつらが倒したぞぉぉぉぉ――――――!!!!!!」
どんだけ叫ぶんだよ。その声のおかげで民衆は僕達に群がってきた。
「ありがとう!」
「ありがとう!」
「ありがとう!」
「ありがとう!」
こいつらありがとうしか言えねぇのかよ。ありがとうコールの中から長老がやってきてお礼を言い始めた。
「どうお礼をすればいいのか……」
「橋直して。」
「……へ?」
「都市に繋がる橋を直してくれませんか?」
「そ、そうですか。」
「俺たちは次の街に行けたらそれでいいんだぜ。」
比奈斗が横で言う。すると長老は民衆に叫んだ。
「橋を治すぞ!!」
老人の一言で街の人たちは橋の方向へと走って行った。風のように去っていく街の人達を見ていると店主が後ろから言った。
「昔からスルナトに被害にあっていてねぇ。人をさらわれ、街に襲撃され、って大変だったんだぁ。だから倒してくれたお礼として早く橋を直したい。という思いが一致したんだぁ。」
「おじさんはいかないの?」
「まぁ俺もやっていきますかぁ。」
店主も道具を持って橋の方向に走り去った。街に残ったのは僕達だけだ。僕はスカルキングの頭を拾う。
「骨屋店主の頭、まさかここまで役に立つとはね……。神具、認定だね」
「あぁそうだな」
「そういえばあの骨を倒したことによってレベルアップしたんじゃね?」
「そういえばそうだな!一回見てみようぜ!」
道具袋から水晶玉を取り出す。僕はステータスを図ってみた。
Lv.10
HP 504
MP 163
攻撃力 53
防御力 43
素早さ 56
魔力 176
才能 炎系魔法(大)、風系魔法(中)
特技 わーぷ、ファイン、タックリー、エアコンプ
「風魔法を新たに覚えてる!」
「俺も図るとするか……」
Lv.15
HP 160
MP 752
攻撃力 20
防御力 10
素早さ 130
魔力 813
才能 土魔法(大)、雷魔法(中)
特技 ロック、イナ、スドーム、エウォーグ
「思ったより技増えてないんだね。」
「まぁロック一つで大体何とかなるからな。」
「このスドームって何?」
「ゴーレムとかを作成できるぜ。まだやったことはないが……」
「やってみてよ!」
「いや新技の披露はここじゃない方がいいぜ。都市でとっておきの練習マシンが売ってあるからな。」
「何それ気になる!」
「だけど今度な。もう夜だ。早く帰ろう。」
比奈斗が見た方には沈む夕日が見えた。僕はわーぷ君を設定して。家に帰った。
――翌日
朝起きるとリビングにおじいちゃんがいた。
「照馬よ!」
おじいちゃんが僕を呼んだ。僕は都市で見てみたいものがある。
「都市に《《新たな円盤》》が降ってきたようじゃ。」
そう僕はこの《《定期的に異世界からやってくる機械》》を見るために都市に行こうとしているのだ。




