魔神王
数分前。
魔界の中心部にある魔力瞬間移動装置――通称「魔界転送門」の前に、魔神王とその子らが静かに待機していた。
この世の頂点に何千年も君臨する王。
【魔神王】リベル・ディー・オリラルド。
その周囲には、魔神王の血を継ぐ者たちが並んでいた。
魔界でも人界でも恐れられる、オリラルドの直系。
• 【魔人】長女:ミミ
• 【魔王】長男:ガリル
• 【悪魔】次男:ダニアルド
• 【悪魔】四男:イグス
• 【悪魔】五男:ジルグンド
• 【悪魔】次女:セルオ
• 【悪魔】六男:バースデー
• 【悪魔】三女:ネルメル
• 【悪魔】七男:ベス
「通信が入って10分は経ってるが、遅くないか?」
ジルグンドが口にする。
彼は少しおしゃべりで、思ったことをすぐ口に出す性格だ。
「黙って待て。」
ガリルが低く言う。
彼は常に魔力が漏れ出しており、兄妹たちをまとめる役でもある。
「しっかし、あいつ1人で大丈夫なのかよ。大隊長とはいえ、天導が相手じゃちときついんじゃねーか。」
ジルグンドは心配しているようで、どこか他人事のような口ぶりだった。
「さっき無線で“任務完了”って入ったけど、ゲートってそんなに長く開いてるもんじゃないよね?」
ベスが疑問を口にする。
その時、リベルが一言だけ呟いた。
「……消えた。」
空気が凍る。
兄妹たちは顔を見合わせた。
え?消えた?ゲートの中で?
ゲートは場所を繋ぐもので、道から外れることはない。
数秒で目的地に着く。
ましてやゲートの中で“存在が消える”など、ありえない。
「閉じとけ。皆、部屋に戻っていいぞ。」
リベルは振り返り、静かに自室へと歩いていく。
誰も逆らえなかった。
ミミは黙ってゲートを閉じる。
「おい!ノエルがまだ中にいるかもしれねーのに、なんで閉じんだよ!」
ジルグンドがミミに詰め寄り、胸ぐらを掴む。
「父上が閉じろと。ノエルは無事よ。手を放して。」
ミミは冷静に言い、手をほどいて歩き出す。
兄妹たちは何が起きているのか理解できず、転送室を出て大広間に集まっていた。
「ネルメル!なにか感じねーか!」
ジルグンドが詰め寄る。
「無事って言っても、魔界か人界かどっちにいるかもわかんねーし!どうなってんだよ!」
「わたしもわかんないよぉ……でもね、この都市の外の森の中で魔力が暴発してる気がする。そこだったりして……」
兄妹たちは急いでベランダへ出て、外を覗いた。
その瞬間――
森の中で、凄まじい爆発が起きた。
城が揺れた。
かなりの距離があるのに、爆風がここまで届いていた。
「何が起きてんだ……」
ジルグンド、ベス、ネルメルは爆発の場所へ急行した。
着いた頃には、地面に砕けた魔石が落ちていた。
その隣には、右手に刀を持った男の子が倒れていた。
ネルメルは魔石を拾い、すぐにそれがノエルの“心臓石”だと気づいた。
ベスが男の子に近づくと、刀が消えるのを確認した。
「……おい。こいつは……誰だ?」
その問いに、誰も答えられなかった。




