表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/16

魔界

サウススノースの空に、魔族の船が静かに浮かんでいた。

ジェイデル・ビー・マロンの宣告から5時間の猶予が始まり、スカイ・タートルでは緊急会議が終わった。

覇導・杉山庇紫は出陣の準備を進め、露詰舞葉は咲の保護を引き受けることになった。

その頃――19:00頃。

望月星夜と愛宮咲は、図書室にいた。

「ねぇ、またべんきょ〜?」

咲は望月の背中にずっとおんぶしていた。

望月は何もないかのように本を読んでいた。

「きょ〜ね、おねえちゃんとちから?のつかいかたとぉ〜むかしのはなししたの!」

咲が乗り出して今日の修行を話し出すと、望月は本を読む手を止め、咲に顔を向けた。

「咲。僕は君を絶対に守るから。だからその日のことは忘れろ。」

真剣な顔で、低いトーンで訴えかける。

だが咲は首を振り、涙目で言った。

「いやだよぉ。わすれちゃうと、なんかぜんぶなくなるきがするの。」

望月は咲の頭を撫でながら、静かに言った。

「大丈夫。僕は咲から離れないし、そのために勉強してるから。強くなってみせるよ。」

その時、静かに扉が開いた。

比嘉雅夫が望月の前に現れる。

「星夜、ここで何してる?もう夜も遅い。明日も修行じゃないのか?」

望月は睨みつける。

「修行?明日からここには誰もいなくなるんじゃねーのか。」

咲はポカーンとしていた。

比嘉が望月の顔を見て、目を細める。

「また見たのか。これは極秘会議だ。いつも覗くなと言っておるだろうが。」

望月の左目には、六芒星のマークが浮かび上がっていた。

これが望月の能力――【六芒星ヘキサグラム】。

失われた鍵のひとつとされている。

かつて存在した五つの鍵の能力――

- 【六芒星ヘキサグラム】

- 【創造ホログラム】

- 【戦鬼オニ】

- 【虚無ゼロ】

- 【竜人リュウ】

これらは、今では見かけることのない“神話の残骸”だった。

だが望月は、その力を継承していた。

「咲が来る前に、知らん奴が呼びに来たから怪しいと思って見てたんだよ。で、【賢者の石】だけどよ。」

望月は本を指差しながら、ゆっくりと比嘉に説明する。

「この本に書いてるのが本当で、人族側がこれしてるってことなら、これは魔族よりたち悪いぞ。」

比嘉が静かに言う。

「全部読んだのか。ならわかるな。【賢者の石】はうちにはない。これから何が起こるかはわからん。この件が終わるまで露詰と一緒にいて――」

望月がかぶせるように言う。

「あの会議では【賢者の石】がなにか皆わかってなかったのに、お前は知ってたんだな。」

2秒ほど、音が消えた。

空気が凍りつくような静寂の中、比嘉が話し出す。

「星夜。君は頭がいいし、勘もいい。が、それ以上探ろうとするな。……私は本部長だ。今この状況で、わからないことはない。いつまでも私を疑おうとするな。」

望月は小さな声で呟いた。

「……うらぎりものがぁ。」

6歳の子にしては、あまりにしっかりしすぎていた。

咲は空気のピリつきだけを感じていたが、2人の会話の意味はまだわかっていなかった。

話が終わった後、3人は図書室を出て露詰の部屋へ向かう。

咲は比嘉と手を繋ぎ、望月は左脇にさっきの本を抱えて後ろを歩いていた。

廊下は静かだった。

誰もいない。音もない。

ただ、空気だけが冷たく震えていた。

目的の部屋に着き、ドアをノックする。

……コンコンコン……

露詰が出てきて、咲を抱っこする。

「よく来たね!今日から2人は私と生活するからね!」

「おねえちゃんとぉ!わぁーい!」

咲ははしゃいでいた。

「あれ?せいちゃんは?」

「おい。星夜も早く部屋に入れ。」

後ろを向くと、そこには望月はいなかった。

――5分前。

3人が歩いていた廊下の後ろに、突如ゲートが開いた。

武装した魔族が望月の口を塞ぎ、ゲートへと引きずり込んだ。

何もなかったようにゲートは閉じた。

誰も気づかず――望月は誘拐された。

初めて体験する感覚だった。

ゲートの中は寒く、暗く、落ちていく感覚があった。

下には光があり、そこに向けて落ちていた。

後ろを振り向くと、魔族が誰かと話していた。

「父上。任務完了。」

――やばい。

何かわからないが、危機を感じた。

手を振りほどき、暴れて離れることができたが、光とはまた違う場所に落ちていった。

丸い、暗い穴。

魔族も焦って後を追い、穴に入っていく。

望月は見た。

空は赤い雲。赤い空気。熱い風。

木は枯れ、地面は湿っていた。腐臭が漂う。

魔力が濃すぎて、吐きそうになる。

見てすぐわかった。

――【魔界】だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ