旅立ち
人界・スカイタートル
空間遮断と記録封鎖が施された極秘会議室。
東西南北の支部長が集まり、魔神王が倒した事で均衡が崩れてしまい、それに関わる議題が交わされていた。
中央円卓の魂三導鍵のイスは空席
その空席が、今まさに世界の均衡を揺るがそうとしていた。
出席者は以下の通り:
• 北方代表:神孫子悠留
• 東方代表:朧シオン(おぼろしおん)
• 西方代表:天宮城芽
• 南方代表:八田剛
• 本部長:比嘉雅夫
• 阿修羅:杉山庇紫
• カシエル:露詰舞葉
・ 魂三導鍵候補:滝尾一
比嘉雅夫・本部長が口火を切る。
「まずだ。魔神王の討伐と、その世界的影響について」
議場が静まり返る。
誰もがその名を口にすることを恐れていた。
“魔神王”――魔界の頂点に君臨し、千年にわたり人界との均衡を保っていた存在。
「討伐者は望月聖夜。年齢、七歳。今年8か?
戦闘記録は未解析部分が多いが、魔神王の魔核崩壊と魂断裂が確認されている。
討伐は事実であり、信じがたいことが起こっている。」
朧シオン(東方代表)が資料を開く。
「魔神王の死により、魔界の統率が崩壊。
現在、魔族同士の戦争が勃発している。
領土争いが目的らしいけど。魔神王リベルを失い、魔王2人に魔人が1人失ってしまっており戦力がかなり落ち、各方面から占拠されていってますね。」
神孫子悠留(北方代表)が
「それは人界にどういう影響がある?」
朧シオン(東方代表)
「今のところは何も影響ないが闘争が起きている以上、
今後影響があると考えていい」
神孫子
「急に魔族が動き出すということは、倒した事は真実なんだろうな」
朧
「可能性の話なので絶対とは限られません。がその説が濃厚かと。」
露詰舞葉(天導)は静かに言う。
「魔神王の死は、この歴史上一度もないことだから今後何が起こっても
驚きはしないわね。」
杉山庇紫(阿修羅)は目を伏せる。
「彼はまだ七歳だ。
魔神王を斬ったことは事実だが、だれが倒したかまでも
魔界では広まっているのか?」
南方代表:八田剛
「広まっています。少し調査をしたのですが向こうの世界では(魔界)笑って無差別に殺しまくって鬼のようだと。噂ではその少年は鬼神なのではないかと言われていました。」
皆沈黙が続いた。
神孫子
「もう決まりだな。」
杉山
「何を言おうとしている。やめとけよ。それ以上口にするな。」
神孫子
「仕方ないのでは?杉山様。これはもう決定だと、皆賛同してますよ。」
露詰
「私は反対よ。」
比嘉
「.....まぁまて。皆が言おうとしていることは分かる。星夜に魂三導鍵のイスに座らせるかの話だな。あの子はここにいる誰よりも力をつけてしまった。今後魔族が人界に攻めてこないって保証もない。あの子には悪いが上に立ち活躍してもらわねばな。」
静まり返っていた会議室に大きな音が鳴り響く。
机をたたき立ち上がる。すごい剣幕で今にも殴りそうな勢いで口を開く。
杉山
「比嘉。....貴様。それでいいと思っているのか!あの子はまだ7歳なんだぞ!生まれてすぐ大切な子が目の前で殺され、そのあと魔界で囚われ、泣きながら.....」
話の途中を割り込む形で比嘉が口を出す。
「だが力をつけて自ら帰ってきたではないか。ここにいる者たちはそれができるのか?」
皆黙り込み、杉山も頭に血が上ったが少し冷静にさせられ、イスに座る。
比嘉
「杉山。貴様の言っていることも分かるが、今回は規模が違いすぎる。あの子は魔界の王を殺したのだぞ。それを理解しろ。」
杉山
「........なら条件をだす。あの子はまだ小さい。イスに座ってもらうのはいいが外部地方に出て学園生活を送ってもらう。これが条件だ。成人するまで残り8年。それまでは戦場には出させん。いいな。」
比嘉
「本国じゃない理由はあるのか?」
杉山
「ここに居れば絶対に巻き込まれるのは分かっている。少しは友達と遊んだり、この世界にもいろいろあることを知ってほしい。それだけだ。」
比嘉
「分かった。一応投票をする。望月星夜。この者を3つの席の魂三導鍵に君臨し、人界に現れる魔族の任務をしながら、外部地方で学園生活を送り、成人するまで戦場にはでない。これに賛成の方は挙手を。」
しぶしぶだが杉山は挙手をし、露詰、天宮、八田の4名が手を挙げる。
比嘉
「反対なものは?」
神孫子、朧、比嘉、滝尾の4名が挙手をする。
皆が目を合わせ、票が同数になったことでどうするか口を出そうとしたとき、
扉が開く音がした。
皆はその光景に驚愕した。
一人の少年が会議室に入室してきたのだ。
星夜
「僕も賛成票で。」
八田が一番驚いた顔をしていた。
"この子はどうやってここに?呼んでないのにどして。”
比嘉
「というわけだ。賛成が5票、反対が4票ということで、今日からこの者を帝王として君臨してもらう。」
神孫子
「おい。ガキをここに入れてそれがまかり通るわけないだろ。」
比嘉
「なら滝尾の票も同じだと思うが?候補者が票を入れれるなら彼も投票権をもっているはずだ。違うか?」
神孫子
「これはガキが帝王になるかならないかだ。どっちかがって話じゃねぇーだろ」
「そもそもここにガキが入ってくるのがおかしいだろ。この席は何十年も空いてる。こんな簡単に決めて言い訳ねぇだろ。そもそも次選ぶのはここの席に座っているものの中からだろうが。魔神王を倒したからってガキが候補に入っているのが俺は気に食わねぇな。」
星夜
「君がならイスに座るかい?僕が北の支部の上に立ってもいいけど、でも君その席から外れると今してることができなくなるんじゃない?」
杉山
「なんのはなしだ?」
皆が急に沈黙し星夜のほう見る。
今彼は何を言い出そうとしているのか。
神孫子
「は?ガキが。てめぇ俺が何をしてるって言いてぇんだ?」
星夜
「あまり喧嘩を売ってこないで。僕は向こうでいろいろ調べれた。言ってもいいけど君の立場悪くなると思うけど。
.......君の北の支部の地下調べてもらおうか?」
神孫子
「.......貴様。なぜそれを。この俺を脅すつもりか。」
比嘉
「二人ともやめろ。話がそれてる。」
2人の言い合いを止めるように比嘉が割って話を変える。
比嘉
「話をまとめるぞ。魔界の捜索。奴隷救出。ゲート管理は南に任せようと思ったが変更をする。今回は飛ばして東に任せようと思うがいいか?」
朧
「急に何の話だ?ま。いいけど」
比嘉
「この先何が起こるかが分からない。今魔界に詳しい人に任せたい。それから魂三導鍵のイスには星夜、きみが座ることをここに承諾する。それに伴い、南の支部に移りそこで学園生活を送ってもらう。ボディガードとして滝尾。お前も同行しろ。南支部で働いている者たちは魔界の干渉もしなくていい。変わりに全力で守るように。咲も一緒に連れていけ。あの子は君と離れたくないだろうからね。」
星夜
「分かった。」
比嘉
「今回の会議はこれで終わる。また問題がでたら報告するように。解散。」
皆は散り散りに出ていき、杉山と露詰は星夜のそばによる。
露詰
「それでいいの?今回は何も口を出さなかったんだけど」
星夜
「......いいよ。咲も近くにいるほうが守れる。」
杉山
「すまないな。帰って来て早々、星夜に辛い思いさせてしまって。私は。」
「気にしなくていいよ。もう覚悟を決めた。僕は死ぬまで戦わないといけない運命ってわかったから。」
と笑顔で杉山に話しかける。
「じゃ僕は咲のところに戻って南支部に行く支度をするよ。じゃ」
と二人を後にし、露詰の部屋に戻った。
露詰
「私は"ツボ”に行くけど、もう大丈夫?」
杉山
「あぁ。気を付けろよ。」




