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更に強く、だが弱き門

魔神王の王室。

テーブルを挟み、魔神王リベルと望月星夜が向かい合って座っていた。


「すまないね。手荒い真似をして。星夜君、君に来てもらったのは一つだけ。私の願いを叶えてほしいからだ」


星夜は警戒を解かず、黙って話を聞いていた。


「私は最古の魔王として戦争を繰り返し、初めて“魔神王”と呼ばれた。だがその時、空から3人の魔神王が降りてきた。若かった私は殺す勢いで挑んだが、勝てなかった。彼らはこう言った――“道に外れし者、お前はこの世界に住んではならぬ”」


「最初は意味が分からなかった。だが戦いの後、何百年も調べ、考えた。そして仮説に辿り着いた。この世界は“誰か”に操作されている。魔族も人族も、その“道”に沿って生きている。だが私は、その道から外れている」


星夜は話の意味を理解した。だが、なぜ自分なのかは分からなかった。


「私はあるものを研究し、作った。それが君の刀だ。永遠の命、無限の力、自己再生――それを目指して生まれたのが…」


「【賢者の石】っていう赤い石だな」


リベルは微笑む。


「やはり君は賢い。そうだ。【賢者の石】だ。その石は、君のところに預けてある」


預けてある?誰に?人族が管理している?

星夜は石のことを考えながら、リベルの言葉を聞いていた。


「私はこの世界を“本当の姿”に戻したい。だから、道に導かれていない君に手伝ってほしい」


星夜は怒りを込めて言い返す。


「なんで僕が。4年前に襲ってきたくせに。しかも、僕が道から外れてるって、なんでわかるんだ?空からの迎えなんて来てないぞ」


リベルは静かに語る。


「君は自分の力を理解していない。その歳で魔王と渡り合える人族などいない。君は2歳で抵抗し、6歳で私の息子を殺した。怒ってはいない。だが、君は間違いなく“道なき者”だ。私と同じだ」


星夜の怒りが爆発する。


「ふざけるな!そんなことで女の子1人を殺したのか!」


立ち上がり、叫ぶ。


「あれは私じゃない。命令していない」


「お前がこの世界を統治してるんだろ!なら止めろよ!そんなことで僕がお前を許すわけない!」


リベルは悲しげに答える。


「私は“名前だけ”の存在だ。空から降りてきた者たちとの戦い以来、力がうまく使えない」


星夜はその悲しみの意味が分からなかった。


「君の言いたいこともわかる。だが、それも“道”だ。君がその道を塞いだはずだ」


“道”――何度も繰り返されるその言葉に、星夜は苛立ちを覚える。


「君が納得するために、1つ用意していることがある」


リベルは星夜の耳のピアスを指差す。


「それも私の子だ。君に力を貸すよう、生まれた時から言い聞かせていた。呼ぼうか」


手を広げると、ピアスが離れ、少女の姿に変わる。


「この子が君に力を貸してくれる。ルージュ、わかってるね?」


「父上、わかっています」


少女は星夜に近づき、手を差し出す。


「これからよろしくね」


星夜は怒りを抑えきれず、手を振りほどき、リベルに殴りかかる。


「ふざけんなあああああああ!」


だが、簡単に流され、地面に叩きつけられる。


「星夜君。君は何のために生きている?私を殺すためか?それなら、その力では勝てんぞ」


現実を突きつけられ、星夜は泣き崩れる。


リベルは「今は話せない」と判断し、部屋を出る。


ルージュは星夜を抱え、広い部屋へ運ぶ。


星夜が目を覚ますと、広い部屋で横になっていた。


「気が付いた?たくさんのことがあって気を失ってたみたいだね。時間がないから、これから力の使い方を教えるね」


ルージュは準備体操を始める。


星夜は混乱していた。


「なんで君は手助けしてくれるんだ?さっきの話が本当なら、僕は君のお兄さんを…」


「私は大丈夫!知ってたから!お父様が言ってたの。ノエル兄さまと私は、あなたのために作られたって!だから、お父様のために死んでくれって!私はそれを誇りに思ってるの!」


笑顔で語るルージュを見て、星夜は「なんて悲しい子なんだ」と思った。





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