道を歩かぬ者
サウススノース大陸
南支部の支部長室で八田と杉山は沈黙で顔を合わせ座っていた。
「魔族の目的は絆の玉核とは。ですがどうして分体の方なのでしょうか?そもそも【賢者の石】ってなんですか?ここ数年でゲートが3つ開くなんて。何が起きてるんでしょうか?今では大陸は混乱が起きていてここの場所がバレるのも時間の問題なのですが、今後どうしていけばいいのでしょうか?」と八田は沈黙の末杉山に話す。
「そういっぺんに聞くんじゃない。わしもわかっておらんのじゃ。」と頭を抱える。
浮遊船の船底の装置を壊した後、本部長から一本無線が入っていた。「杉山。そのまま南支部で待機しておけ。今後何が起こるか分からん。指示があるまでそこ動くな。わかったな」と無線が切れる。
「あ、おい!」
と無線を入れなおすが切れていたため声が届いてない。渋々だったが南支部に向かうことになり、今に至る。
・・・・コンコンコン・・・・・
ドアのノックしてきたのは本部で緊急会議に呼びに来た大男だった。
「失礼いたします。大事なお話の途中で申し訳ないのですが少しよろしいでしょうか?」深々と頭を下げ入ってきた。
彼の名は【滝尾一】今人界の中でもっとも王の名に近い男。今は杉山の右腕として動いている。
「どした?何か進展あったのか」と2人とも話を聞く姿勢になっていた。
「いえ。今のところ進展はないのですが望月様が攫った者がわかりました。」
杉山は勢いよく立ち上がり誰だと言わんばかりに言葉が詰まる。
「攫った本人は魔神王リベルです。今魔神王とやりあっても勝ち目がないため、上の見解は今まさに人数不足とのことで連れ去られたのも分体とのことでしたので手を引くとのことです。」2人とも言葉が出ず、立ち尽くす。
「杉山様。本部へ戻りましょう。」と声をかけるが2人とも戦意喪失したかのように黙り込む。
「この状況はどうするんだ?人々が混乱し力も見られてしまったんだぞ。」
「上からはこの中心の塔から電波を流し記憶を消すとのことでした。ですから2人とも一度は本部に戻りましょう」と2人を説得させ南支部を離れることになった。
上空に浮遊している本部。
通称【能力開発部署】そこで待機していた露詰が咲から離れず、同じ部屋に居た。咲はもう夜が遅いため眠っていた。露詰は何をすればいいのか分からず、一睡もできなかった。
そして朝早く会議がまた開かれた。
同じメンバーが揃っていたが南支部長と杉山は離席していた。露詰の膝の上には愛宮が座っていた。
秘書が一言。
「この度は南大陸の損害は20%程で死人も少ないとのことです。ですが失ったものが大きく今回絆の玉核の分体、望月様を失いました。本体が無事だっただけマシといえるでしょう。今後警備を増やし、万全を尽くしていきたいのですが何か案はありますでしょうか?」
と周りが静まって言葉を失っているとき、愛宮が露詰の顔をみて望月は死んでないと伝える。
「せーやがいまかなしんでる。せーやはいまどこいるのー?」
泣きそうになるが我慢し助けに行こうと露詰が説得するが、皆賛同はしなかった。
そこに3人会議室に入ってきた。
杉山。八田。滝尾は南大陸から【記憶消去電波】を起動したのち本部にヘリで向かい今到着し、会議に参加した。
席に座った時、
比嘉「お前らはここから動くな。いいな」杉山は凄い怖い顔をしていた。
「ふざけるな。あの子は2度も辛い思いをしてるんだぞ。」と立ち上がり比嘉に怒りをぶつけた。
「先ほどは諦めると言ったが今君たちを失うと人族は本当に終わる。少し情報収集し、状況を見て動き出す。それでいいな。それまでお前たちは動くな。」
「今日の会議は一旦ここまでですのでまた連絡次第皆さん招集をお願いいたします。」と本部秘書が皆に伝え、皆会議室から退室する。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
望月が目を覚ますとそこは大きな部屋のベッドで横になっていた。
見知らぬ天井に見知らぬ部屋、そこに誰かが立っている影が見えた。
「だれ?」
と問いかけるとそこに立っていたのは魔神王リベルだった。
「おはよう。少年よ。突然だが君の名前を教えてくれ」と近づいてくる。
「僕は望月星夜。6才」
と何も疑問をもたず話す。
「そうか。もちづき。せいや。良い名前だ。君はなぜここに呼ばれたか理解しているか?」望月は寝ぼけていたがすべて思い出した。
誘拐されたことに。ベッドから飛び上がり拳を構える。
「お前が俺を殺そうとしたのか」
アハハハハハハハハ
「殺す?誰を?何言っている?私の目に狂いはなかった。その歳で魔王と渡り合い、その刀にも認められ、耳のピアスとも共鳴した。星夜君。君が生まれてくるのを長い時間待った。殺すなんてありえん。」と長々と話し出した。
刀?ピアス?耳を触れるとピアスが付いていた。刀と考えると腰から刀が現れた。自分でも何が起こったのか分からなかった。
「君は私と同じだ。光の道を歩かぬ者。この世で2人目だ。」と言い手を伸ばしてきた。