プロローグ
2xxx年10月25日――
空は灰色に染まり、風は止み、世界が息を潜めたような朝だった。
その日、戦争が始まった。
地球の心臓と呼ばれる「界核」を奪うため、魔族と人族が激突した。
それは突発的な侵攻ではなく、長く潜んでいた闇がついに牙を剥いた瞬間だった。
この戦いは、人族が敗北し、地球の心臓を奪われた記念日として、後世に語り継がれることになる。
戦争は、予兆もなく突然訪れた。
山奥にひっそりと建てられた施設――能力開発部署。
そこには、特別な力を持つ3人の子供が保護されていた。
彼らは、地球の心臓と呼ばれる「界核」を宿す者だった。
界核は全部で7つ存在すると言われている。
- 心の界核
- 絆の界核
- 大地の界核
- 生死の界核
- 万有の界核
- 邪の界核
- xxxの界核(未発見・謎)
これらは、地球が誕生した瞬間から存在しているとされ、地球と連動している。
そのため、1つでも消滅すれば、地球そのものに深刻な影響が及ぶと信じられている。
最後の界核――「xxxの界核」は、いまだ発見されておらず、存在するかどうかも定かではない。
だが、古より語り継がれてきたその存在は、謎に包まれたままである。
その日、施設に保護されていた子供のうち、2つの界核が生まれ、確認された。
その瞬間を狙うように、魔界に住まう魔王のひとりが、施設の空に突如ゲートを開いた。
空が裂け、黒い渦が現れた。
重力が歪み、空気が震え、世界が異質なものに触れた瞬間だった。
子供たちは声も出せず、ただその場に立ち尽くしていた。
そして――
2つのうちの1つ、「心の界核」を奪い、自らの身体に取り込んだ。
その代償として、ひとりの命が失われた。
人族は敗北した。
だが、魔王を退け、もうひとりの少女の命を守った男の子がいた。
その姿は小さく、剣も持たず、ただその手で少女を抱きしめていた。
この戦争を終わらせたのは、たったひとりの小さな男の子だったと語られている。
魔王が界核を奪い、取り込む――
それは、前代未聞の出来事だった。
これは――
その戦争を経験し、「守りたい」と心に誓った小さな男の子と、
生まれてからずっと逃げ続けている男の子の物語である。




