★第9話 努力あるのみ
全部修正(2025.03.02)
次回から体育祭編です
◆
僕たちはあの日から努力を始めた。ちょうど体育祭もあるし、これからの目標にも合う。とにかく、ジョギングや能力の練習。筋トレを早朝と放課後に始めた。
朝5時に起きて着替えて筋トレとジョギング。朝ごはんを食べて学校に行き、帰ってきたらまた走って筋トレして能力の底力を上げる練習。それを毎日。
最近始まった特殊実技も、まだ軽い運動レベルだし、先に追い込んで強くなっておこう!と尚更燃え上がっていた。
「どう?強くなってきた?」
釣瓶「ああ。前は狼煙レベルだったのが焚き木くらいには!」
「うーん…スゴい!」
釣瓶「だろ!?」
そんなに元の火力無かったんだ。侮ってた。目標の業火までに3年間で辿り着くのかな??心配にはなるけど、でも成長はしている。火力だけじゃなくて、もっと火の有効活用ができるかもしれない。それこそ焚き木のライター代わりとか、火で渦を作ったりとか色々。
「伸びしろがある…」
釣瓶「マジで?」
「僕は歴史以外も好きだからね。能力の知識も豊富だよ」
釣瓶「もうそれ先生じゃん」
「教師レベルは無理だよ。教える能力壊滅的だし…」
釣瓶「そうだ!先生に見てもらおうぜ」
「先生に?」
燈爾君は先生に僕たちの力がどれ程なのか見てもらおうと提案してきた。確かに、プロの第三者目線での評価は大事だ。でも、忙しそうな先生が僕たちのこと見てもらうなんて。
水島「いいぞ」
「(いいんだ…!?)」
水島「いつやる」
「えっと、」
釣瓶「今日の放課後、グラウンドで良いですか?」
水島「その即決力良いな。じゃあそうしよう」
ものの数秒で決まってしまった。まさか先生がこんなにフットワークが軽いとは思わなかった。いや、授業とかの節々からノリの良さは感じていたけども。
水島「お前らもやっと俺に頼むようになったか」
「え、他の人も頼んだりしてたんですか?」
水島「まあちょくちょく。女子からも見てくださいとは来てるな」
「遅い方ですか?」
水島「いいや?頼むか頼まないかはソイツ次第だ」
僕たち以外にも既に何人かが先生に自分の実力を見てもらったようだ。
釣瓶「意外と俺ら強くなってるかもな?」
「そんなまさか」
水島「ちなみに、見てきた全員禍福課生としては落第レベルだ」
「……」
水島「お前らはどれくらいだろうなあ?」
先生はニヤリと悪い笑みを浮かべる。強者の余裕、そんな雰囲気を先生の心から感じる。
◆
先生と約束をしていた通り、僕と燈爾君は放課後にグラウンドへ体操着で集合する。少しだけストレッチをして能力が直ぐに出せるように温めておく。燈爾君は炎を出し、僕はルナをポッケに入れつつ、すぐに出せるように意識しておく。あと、頭に巻いたハチマキをしっかり直す。
僕と燈爾君はまだ戦いはしていない。能力の相性が悪いから。炎を出すのと、武器で戦うのは訳が違う。だからこうして実践的なことをするのは初めてだ。
水島「用意できたのか」
釣瓶「先生、その服で良いんですか。いつもと同じ…」
水島「ああ。これは禍福課生の制服だ。改造済みだけどな」
「わあ…」
水島「お前らには…まあ、期末試験くらいにはもらえるだろ」
「じゃあ、」
釣瓶「始めるかあー」
僕と燈爾君は戦闘態勢に入る。自分の実力を見てもらうには、こうやって戦って見てもらう方が早い。戦えなければ禍福課としては足りない。
水島「俺はお前らのハチマキを取れば勝ち。お前らは俺のを取れば勝ち」
「よろしくお願いします…!」
釣瓶「んしゃー…頑張る…ぞ!」
開戦の合図は、先に動いた者が鳴らすもの。
一番先に動いたのは燈爾君だった。手のひらから炎を生み出し、先生目掛けて投げる。それは簡単に躱される。それを見越して動きまた手のひらの炎を生み出しては当てつけていく。先生も軽い身のこなしで全ての炎を最小限に避けていく。
僕もルナをこっそりと取り出し、先生に勝つその思いでルナを変形させる。その形は、今までのと違い薙刀の姿。え、と内心驚いたけどそんな悠長にしてられない。今は燈爾君が注意を引いている。僕は裏に回って奇襲を仕掛ける。これは別に事前に作った作戦ではない。取り敢えずで動いた故のフォーメーション。
ルナが見たことない姿になっているのには驚きだけど、切り替えて行こう。
水島「火のレパートリーが足りねえなあ。もう少し増やしとけ」
釣瓶「あい!」
水島「それと悟川、視界の端でも見えてるぞ。動きが粗い」
「…はい!」
完全に後ろ取れてると思ってたけど、やっぱり先生にはお見通しだ。燈爾君の相手で僕のことなんか見ていないはずなのに、しっかり視界の端で確認をしてる。
水島「(武器持ちか…覚にしては随分特殊だな)」
釣瓶「喰らえ必殺!【焔火】!!」
水島「ダメだな」
ジュッ!と火が消える音がした。燈爾君が出した炎の中で一番強いやつが物の見事に消された。先生が燈爾君や小神さんと同じように掌から水を繰り出して消火していたのだ。僕はその攻撃を初めてみた。
釣瓶「先生水属性なん!!?」
水島「一応な」
「初めて見た…」
水島「それで、いつ悟川は俺を殺しに来る」
「……!?」
僕のつぶやきが、空間に消える。その僅かな瞬間で、先生は燈爾君といた場所から既に移動しており、僕の目の前に現れた。あまりの素早さと早い出来事に僕は思わず固まってしまった。
水島「奇襲は怯みが命取りだぞ」
「わ」
先生に僕は吹き飛ばされる。水を腹に押し当てられ、光線のように吹き飛ばされた。実力試しの時みたいに壁にまで吹き飛ばされるけど、ぶつかる直前に先生の出した水がクッションになり、優しく降ろされた。
釣瓶「心冶!」
水島「心配してる場合か?」
「燈爾君!!!」
水島「今日は暗いからここまでにしようか」
「!」
釣瓶「!?」
先生は燈爾君に爆速で近づきハチマキをするりと回収し、また僕のクッションになっていた水は僕にまとわりつき、先生の方へ引き寄せられる。そして先生の手でするりと取られてしまった。
水島「総評」
「はい…」
釣瓶「普通に負けた…」
水島「まず釣瓶。お前は技の威力が全て弱い。そして能力の多様性が足りない。もっと鍛錬と努力をし、多彩な炎を扱えるようになるべきだ。火力の強弱に、火の種類も」
釣瓶「はい…」
水島「ただ機転を利かせること、そして初動が上手い」
釣瓶「あ、ありがとうございます!」
水島「そして悟川。行動が粗い。常に考えながら動いてるせいで動きも遅い。迷いは大敵だぞ」
「…おっしゃる通りです」
水島「お前がどんな能力か詳しく把握はできてないが、武器を生み出せる能力は希少だ。十二分に活躍はできる。それと武器持っている最中は身体能力も強い。前線ではれる強さではあるな」
「ありがとうございます…」
こうして僕たちは先生に自分達の実力を評価してもらい、実践は終わった。
◆
[・・・]
羽海「俺は必ず証明しないといけない。自分の努力が間違いではないことを…」
1人。独り。抱え込み、腹を破るのは誰?
彼の目は黄緑色に、猫のように細めた瞳孔で全てを妬むのだ。
此処だけの話。
※実は心冶君はかなり絵が上手い(美術は小学生からずっと評価5)
※小神さんは広島出身だけど野球はそこまで興味ない
※燈爾君は実はトランペットが吹ける
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